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退化の隘路を断ち切る!
 店頭販売員の労働実態を分単位に調査して接客時間や物流関連労働時間を掴み、時間帯別の買い上げ率や客単価との関連を検証すると、業界で取り組まれている啓蒙活動とは懸け離れた答えが出て来る。一部の高価格店を除き、効率を左右しているのは時間帯別の人員配置数や陳列手法、什器/FR/レジの配置関係であって、販売員の‘熟練度’は二次的要因に留まるからだ。
 覆面調査などで好感度を左右するのも新人研修レヴェルの‘常識’とマニュアルに記載されている‘基本手順’であって‘熟練度’ではない。新人研修やOJT、マニュアルで数ヶ月もかければ一定(許せる)レヴェルには達するが、それ以上の‘熟練’には現場経験と専門的研修の繰り返しが不可欠で、分野によっては年単位の積み上げを要する。
 残念ながら多くの場合、店頭販売員の在職期間は‘熟練’を期待するには短く、私が教えている店頭在庫の再編集陳列技法など、マスターしかけた頃には過半が新人に入れ替わって最初から教え直す事もある。現状では‘熟練’を要する技術の継承は極めて困難で、パート/バイトの回転の速い店では‘常識’や‘基本手順’も崩れがちだ。
 企業側も‘熟練’は非現実的だと悟って‘常識’と‘基本手順’の維持に割り切っているのか、未熟練者の関心を惹くゲーム的研修をイベント感覚で繰り返しているが、定着率や販売実績を見るかぎり効果は限定的なようだ。店頭販売員に専門的な知識や熟練した技術を求めるのはもはや困難で、‘素人’で運営出来る体制が現実的なのだろうが、それでは店長など管理職の負担が重くなってしまう。
 店頭販売員に‘熟練’を期待しなくなった契機は2000年6月の大店法廃止による営業時間の自由化であり、イオングループが率先した営業時間延長で店頭保守要員?の慢性不足が全国化・常態化し、本来の適格者や熟練者とは異なる素人を大量採用せざるを得ず、販売員の質の低下(=店頭販売の質の低下)が常態化してEコマース拡大の一因ともなった。『ここまでやるか!』と懇切丁寧ビジュアル双方向に畳み掛ける韓流アパレルECの「DHOLIC」などを見ると、今更ながら店頭での下手なVMDや‘素人’の接客など不要に思えて来る。
 店頭販売の質の低下とECへの売上流出という悪循環を断ち切るには2000年6月の分岐点に戻ってやり直すしかないが、私はショールーム型ストアこそ突破口になると確信している。店頭販売員を物流労働から解放して専門的接客に集中させれば素人まで動員しなくても店舗運営が可能になり、販売効率も客単価も格段に上昇して販売員の給与水準も大幅に改善出来る。オムニチャネル時代の到来は00年6月来の退化の隘路を断ち切る絶好のチャンスなのだ。
 2014/01/27 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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