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アパレル流通は効率化したか?
 流通の効率を示す指標にW/R比率(Wholesale売上に対するRetail売上の比率)というものがある。日米貿易摩擦が過熱した90年前後、米国はこの指標を取り上げて日本の流通の非効率性を指摘し、流通規制の撤廃を迫ったものだ。
 我らアパレル業界のW/R比率はSPA化の急進で02年の1.93倍から12年の0.86倍へと急ピッチで改善されたが、アパレル流通は必ずしも効率化したとは言えない。何故なら付加価値がSPA事業者に集中した分、流通のロスとコストもSPA事業者に集中し、「正価」に対する調達原価率が年々切り下げられてバリュー感は逆に損なわれ、様々なセールが乱発される状況を招いたからだ。
 上場アパレル企業平均の粗利益率は02年の47.4%から12年は52.2%と4.8ポイント利幅を拡げたが、営業経費率も40.8%から47.1%に肥大し、営業利益率は6.6%から5.1%に低下した。SPACメンバーアンケートに拠れば、ロス率も07年の18.6%から12年には23.1%と4.5ポイントも悪化している。02年のロス率を07年と同一水準と見ても、アパレル企業の調達原価率は02年〜12年間に平均9.3ポイントも切り下げられた計算になる。ファーストリテイリング社を除き、大手カジュアルSPAの調達原価率はこの間に10ポイント近く切り下げられているから、9.3ポイントという平均値が業界の趨勢を反映しているのは間違いない。
 調達原価率を切り下げて値入れを嵩上げた分、バリュー感が低下して「正価」が通らずロス率が肥大し、マーケティングコスト(営業経費率)も肥大して収益率は却って低下するという『笊抜け体質』に陥っていたのだ。
 SPA事業者に付加価値が集中しても、値下げロスを抑制しない限り付加価値は実現せず、肥大するロスとマーケティングコストがさらに調達原価率を切り下げてバリューが低下するという悪循環に陥り、アパレル流通は必ずしも効率化されなかった。その最大の要因は、SPA事業者の多くが調達原価率の切り下げによる値入れの嵩上げとその実現へのプロモーションに注力する一方、計画MDに基づいて素材開発や生産工程へ踏み込むという抜本的なバリュー創造、陳列フェイスを起点とした効率的な配分・補給〜再編集運用・店間移動によるロスの極小化というリテイリング技術革新を軽視した事に他ならない。
 プロモーションを否定する訳ではないが、抜本的なバリュー創造とリテイリング技術革新を欠いては『笊抜け体質』から脱却出来ない。アジア諸国の生産コストが急騰し円安が定着する中、もはや調達原価率の切り下げは困難で、顧客がお値打ちと感じる「正価」を実現する本質的な革新が問われている。明日29日に開催する「SPACビッグコンベンション」ではアパレル/SPA企業の経営指標変化をグローバルに検証して抜本的な革新を迫りたい。
 2013/08/28 11:19  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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