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自滅的ショールーミング
 『店頭で選んだ商品のバーコードをスマホでスキャンして価格の安いネットショップで買うから店舗がショールーム化してしまう』というのがショールーミングだが、自ら売場をショールーム化して販売を阻害するのは如何なものかと思う。「自滅的ショールーミング」とも言うべき愚行が流行りそうなので、リテイルテクノロジーの専門家として警鐘を鳴らしたい。
 問題だと思うのは過度に陳列量を圧縮する店舗デザインと「定数定量」思想だ。業界の注目を集める伊勢丹本店婦人服のリモデルが全容を現しつつあるが、モダンなミニマルデザインは世界の最新傾向に即したものと評価出来る一方、柱巻き陳列を排除してゆったりと什器が並ぶ様には危惧せざるを得ない。販売効率が突出して高く狭い売場をさらに削って極限まで陳列量を抑えた売場空間はモダンに見えるが、これでは品揃えの一部しか見せられず、接客の度にサイズなどの在庫を探しに後方ストックに走らざるを得ない。
 恐らく靴売場の手法を衣料品に持ち込んだのだと思うが、売場の後ろにピッタリとストックを配置しない限りお客様を長時間お待たせし、ストックへ行って不在中は接客不能になってしまう。そこまで配慮して改装したのか、是非とも後方ストックのレイアウトを拝見したいものだ(見せてくれるかな?)。業界のトレンドセッターたる伊勢丹本店のモダンな売場を見て表面的に真似する百貨店が広がれば、売場がショールーム化して販売が阻害され、売場スタッフもお客様も迷惑する事になるから、敢えて注意を喚起しておきたい。
 もうひとつ、誤解を招きそうなのが「定数定量」思想だ。陳列量を一定に保つと確かに見易く美しく出来るが、売場スペースが十分でないと在庫を出し切れず、接客の度に色やサイズを後方ストックまで探しに行かなければならないし、繁忙時など接客出来ずにご自分で探されるお客様は商品を見つけられずお帰りになるかもしれない。週や曜日で販売効率は何倍も開くから、「定数定量」では補給も追いつかない(販売ピーク前には「定数定量」を超えて在庫を積むのが定石)。十分かつ近接したストックスペースがあり、在庫探しに売場を離れても替わりに接客出来る販売スタッフを置ける体制なら成り立つと思うが、現実の百貨店には望む方が無理というものだろう。
 柱巻き陳列を排除したモダンな売場も「定数定量」を保った整然とした売場も、それ自体は必ずしも否定しないが、実際の販売プロセスを阻害せずに実現する事はかなり難しい。百貨店の経営陣が販売実務やお客様の購買行動を熟知して、このような売場を提唱するならともかく、現場の実務から乖離した発想で提唱しているとしたら考えさせられる。
 久方ぶりの景気回復で百貨店に追い風が吹かんとする今、在庫の積み増しが不可欠で、陳列量を削るのが流行るとせっかくのチャンスに水を差しかねない。百貨店やアパレルの経営陣は現場実務と顧客の購買行動に真摯に向き合うべきではないか。
 2013/02/19 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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