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マフィアと悪代官が手を取り合って
 このところ毎朝、楽しみに愛読している日経朝刊コラム「私の履歴書」の馬場彰氏の回顧録も佳境に入り、ついに「マフィアと悪代官」論争が登場した。これは委託取引と派遣販売員を武器に売場の主導権を奪ってシェアを拡大する大手アパレルを「ミスター百貨店」と賞賛された故山中竡≠ェ『マフィアみたいなもの』と揶揄したのに対し、馬場彰氏が『それなら百貨店はあくせく働くアパレルを搾取する悪代官だ』と言い返したという業界の「伝説」だが、ご本人が『84年に大磯で開いた流通セミナーで』と開示しているのだから実話だったのだろう。
 この逸話は当時の大手アパレルと百貨店の関係をリアルに想起させるが、外資ブランドや駅ビルブランドが百貨店に跋扈するようになった今日でも両者の関係は大きくは変わっていない。変わったのは経営環境と経営者の器なのだろう。
 80年代の大手アパレルと百貨店は過剰消費の勢いに乗って同床異夢な繁栄を謳歌していたが、「マフィアと悪代官」論争のように本音をストレートにぶつけ合えるだけの度量が経営者にあった。それが90年代に入ってバブルが崩壊すると百貨店は自らの利益を確保すべく大手アパレルに納入掛け率の切り下げを迫り、以降は限られた利益を凌ぎ合うギクシャクとした関係に移行して行った感がある。百貨店が流通の王座を謳歌していた80年代と郊外SCや駅ビル、SPAやECに追われて斜陽の坂を下る今日とでは両者の経営のゆとりも格段に違うから同列に較べるのは酷だと思うが、「マフィアと悪代官」が手に手を取ってマーケットに応えていた当時のパートナーシップが損なわれた事が今日の百貨店業界の苦境を招いたとも見える。
 百貨店流通をこれ以上、衰退させない為には大手アパレルと百貨店が「マフィアと悪代官」論争のように正面から本音をぶつけ合って論争し、あるべき方向を見極めて行く必要がある。一部に根強い上下意識を捨てて対等のパートナーと認め合い、度量を持って異論を聞く関係を築くべきだ。納入掛け率問題にせよ、バーゲン時期問題にせよ、改装過程の売場移動問題にせよ、上下の意識無くパートナーを思いやる度量があってこその共存共栄ではなかろうか。
 2013/02/18 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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