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デザインはアーカイブを超えられるか
 20代から乗り継いで来た某独逸車は現車で多分、10台目だと思うが、当たり前だが最新型が最良と言わざるを得ない。70年代〜90年代設計のモデルは正直、‘中古’でしかないのだ。何故そんな事を言うのかというと、性能や安全性、経済性はともかく、意匠的官能的には60年代の‘縦目’以上のモデルが出て来ないからだ。
 ‘縦目’と言えば吉田茂宰相が愛用したW111の300SEロングが著名だが、貴族趣味から言えばSEクーペに優るものはあるまい。今でもレストアして優雅に乗っておられる方を時折、見かけるが、つい勝手に尊敬してしまう。私も20代には一時220SEクーペに乗っていたが、高い着座位置から大径の白ハンドルを握ると貴族になったかと錯覚したものだ。独身時代最後を飾ってくれたのはW114の250CEクーペだったが、グラマラスに過ぎる最新のCLSシューティングブレイクなんかより遥かに貴族的でスタイリッシュだった。
 それに較べれば今の車は個性や官能に乏しく、最新の独逸車も似たり寄ったりで面白くない。‘デザイン革新’を謳った新型クラウンなど、アウディ紛いに大口なだけでプロポーションは悲しくなるほど凡庸だ。せめてジャガーXFくらいエッジの効いた官能的なプロポーションを見せて欲しかった。車も家電も建築もデザインは技術革新を背景に官能とミニマリズムの表現主義的収斂に向かっているのに、トヨタのデザイン感覚はあまりにも時代ずれしている。
 車も建築も73年までに意匠が出尽くし、以降はアールデコからインターナショナルモダン(ミニマリズム)までのボックス圏を行ったり来たりしてアーカイブを再編集しているに過ぎない。未来的な表現主義建築も原点は1930年代にあり、ボックス圏を出たクリエイションとは言い切れない。それに較べればモードは80年代のアバンギャルドと90年代初期のミニマリズムというクリエイションがあっただけましだが、以降は同様なボックス圏のアーカイブ再編集に留まっている。
 デジタルな技術革新がボックス圏を超える進化を見せているのは音楽やITツールの分野であろう。ボーカロイドが可能にした超音域発声や高速ビートリズムがリアルのアーチストにまで波及し、LSIや蓄電池の高密度コンパクト化はエッジーなミニマルデザインを加速させている(もはやiPhoneやiPadのデザインは厚くて重くて無骨に過ぎる!)。それに較べればファッションデザイン分野は相も変わらずアーカイブの再編集コピーゲームばかりで、著しく革新性を欠く。はっきり言ってコレクションシーンは退屈で、時間を割く気にはなれない。‘クリエイション’とは技術革新に花咲く新たな意匠創造であり、アーカイブの再編集コピーゲームではない、と思うのだが・・・・
 2013/01/25 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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