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阪急うめだ新本店は最新の正統派
 クリスマス商戦に彩られた阪急うめだ新本店を足早に一周させて頂いた。11月21日に全面開業して早や一ヶ月が過ぎ、ようやく落ち着いて来た新本店は600億円を投じて七年もかけて建て替えただけあって、中値半端な改装では望めない最新のデパートメントストアに仕上がっていた。ゾーニングやブランドミックスの詳細については別の機会に譲るとして、今回は建て替えならではの建築的な構成と照明について見所を紹介しておこう。
 まず、感銘を受けたのは全フロア、どこにも排煙垂れ壁がなくすっきりと目線が通る、彫り込み照明が施された美しい天井だ。これは01年から可能になった「加圧防排煙システム」によるもので、建て替えでなくては実現不能な革新であった。もうひとつがフロアの外側を一周する巾2mの物流&避難回廊で、物流台車が売場通路を走る危険を回避し、緊急時の避難誘導をスムースに行う画期的なものだ。米国の新築デパートメントストアでは常識となっているが、日本の百貨店ではおそらく始めての快挙ではないか。
 照明についてはLEDの導入をチェックしたが、ファッションフロアの基本照明は「お肌がキレイに見える照明」を重視して敢えて旧来型の照明器具で構成しているが、8Fスポーツファッション「イングス」や11F「キッズインターナショナルブティック」、3F「D.ファイル」などでは最新のLED照明が駆使されており、意欲的に取り入れているブランドブティックも少なからず目についた。
 1F、2Fは碁盤目通路だがメイン通路からの対称性と視界の広がりが配慮されており、各ゾーンとも同一意匠什器が左右対称あるいは回転配置されて極めて視認性と誘導性が高く、建築的にも美しい(服飾雑貨や化粧品は衣料品に較べて商品が小さく、視覚空間を構成し易い)。3F、4Fではエスカレーター正面から左右対称に売場が展開され、中央部分の陳列高規制で(あるいは服飾雑貨や化粧品を衣料売場の中央に配して)視野が広がるよう配慮されており、一部に視線誘導に優れた曲線通路も活用されるなど、極めて視認性と誘導性が高い。それに対して5Fはブティック売場が碁盤目に配置されるだけで視認性も誘導性も弱く、ファッションビル的空間に留まっていた(靴&バッグとフロアを分離してラグジュアリーブランドの衣料品ばかり並べると、こんな空間になってしまう。同一フロア内で島面と壁面に分離すべきだ)。6Fも碁盤目配置でランダバウト・サークルや曲線通路などの工夫が無く、編集売場とブランドショップの空間配置(雑貨編集→単品編集→インショップ→ブティックと島から壁に配するのが定石)も欠き、従来の百貨店を大きく出るものではなかった。一番店なのだから、やりたいように出来たはずで、ちょっと残念だった。
 見学に行った業界人が異口同音に感激する9〜11F吹き抜けの祝祭広場は、ただっ広い空間に各フロアから雑多な意匠が無神経に交錯するイコン性の希薄さ、とりわけUFO風の天井シャンデリアと安っぽいミラーボール、旧店舗から移設されたロココ調の大時計とのブレードランナー的ミスマッチには失笑するしかなかった。「阪急エレガンス」を貫徹するにはモダンデコで統一したオペラハウス的祝祭空間とすべきではなかったか(宝塚大劇場こそ阪急のイコンだと思う)。目玉中の大目玉だけに「画龍点晴を欠く」では済まされまい。巨費を投じ建て直してまで百貨店の王道を目指したのだから早急な改善が望まれる。







 2012/12/26 14:01  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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