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悪循環を断ち切ろう
 スタートトゥデイがポイント10%付与を常態化してアマゾンも対抗し、アパレルネット通販では事実上の10%オフが常態化してしまった。ルミネのカード顧客10%オフ優待もネット通販に対抗して一段の多頻度化が避けられず、他のファッションビルも追従せざるを得ないだろう。既に百貨店ではカード顧客(一定買上額以上)優待の10%オフが定着しており、定価で買うのは騙されたような気分になってしまう。実質プロパー価格は「正価」の10%オフというのが今日の常識となったのではないか。
 「バーゲン正常化」を目指したバーゲン時期後倒しはアパレルを在庫処理恐怖症に陥らせて期中セールを頻発させ、かえって「バーゲン日常化」状態を招いて消費者の「正価」不信感をさらに高めてしまった。プロパー消化率の低下はアウトレット依存を高め、今やほとんどのブランドがアウトレットで買える状態だから、「正価」への信頼感はもはや地に堕ちた感がある。
 プロパー販売の実質10%オフ定着と期中セールの氾濫、アウトレット依存の加速はアパレル事業者の歩率家賃負担とマークダウンロスを肥大させ、この10年間で業界の平均的な調達原価率は10ポイント近くも切り下げられてしまった。今や百貨店アパレルの調達原価率は20%前後、ODM調達のカジュアルSPAでも30%弱が常識となり、この間の価格低下を考えれば品質は恐ろしく劣化した事になる。それを受け入れて来た以上、消費者の目利き(感性)も退化したと指摘されてもやむを得ない。
 ロスの肥大と歩留まりの悪化が続けば際限なく調達原価は切り下げられ、酷い商品を押し付けられた消費者はますます「正価」で買わなくなり、さらにロスの肥大と原価率の切り下げを招く悪循環が続いてしまう。そんな悪循環を断ち切るには「正価」販売比率を高めてマークダウンロスを極小化し、原価率を高めてバリュー感と価格信頼感を取り戻す事が望まれる。
 それはバーゲン時期を遅らせるとかの小手先ではなく、歩率家賃負担と運営経費、マークダウンロスを抑えて原価率を高め、お値打ち感ある商品を提供する事に尽きる。それには商品展開計画と在庫運用の精度を高めるのが大前提だ。売れ筋深追いの単品継ぎ接ぎMDと場当たりの陳列運用を続けては悪循環は断ち切れない。抜本的なMDとVMDの技術革新が不可欠なのだ。
 急速に拡大して来たユニクロがこの10年間、商品展開計画と在庫運用の精度を高めてロスを抑制し、原価率をほぼ38%という高水準に保ってお値打ち感を突出させた事は高く評価されるべきであろう。『調達原価率が高いほどロス率が低い』(図参照)という事実をアパレル事業者は改めて直視し、悪循環を断ち切る事を決意して欲しい。
 2012/11/27 10:25  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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