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大人災の責任を問う
 10月29日に開催する月例のSPAC研究会「来春夏MD展開総点検」の準備に直近年間売上(11年9月〜12年8月)の月指数分布を調べたら、驚くべき数字が出て来た。前年の震災の反動で伸びた3月はともかく、夏バーゲンが分散して勢いが削がれた6〜7月の月指数が異常低下していたのだ(月指数とは年間売上を100とした時の月別シェアで、単純に12等分すれば8.333・・・・となる)。
 震災の反動で伸びた3月の月指数が百貨店総額で+1.0、百貨店婦人服で+1.6、百貨店紳士服で+1.3だったのに対し、6〜7月計月指数の落ち込みは百貨店総額で−0.6、百貨店婦人服で−0.8、百貨店紳士服では−1.3にも及んでいる。バーゲン時期分散の混乱は婦人服では大震災の反動の半分、紳士服ではほぼ同量の影響を及ぼした訳で、まさしく「大人災」であった。
 6〜7月の落ち込みをタイプ別に見ると、婦人服ではヤングカジュアルの−1.5、セクシーガールの−1.2、ランジェリーの−1.9、紳士服ではアダルトカジュアルの−1.5、シャツシングルライナーの−3.1が大きく、ユニクロが−0.7に留まったのに対してGAPは−1.9と影響が大きかった(すべて当社集計100商業施設の単純平均値)。
 夏バーゲン分散の混乱は夏物在庫処理をずれ込ませて秋物立ち上げを遅らせ、秋商戦まで低迷させるという後遺症をもたらしたが、それだけでは終わらなかった。アパレル各社は在庫コントロールに四苦八苦した挙げ句、4〜9月期でワールドは営業赤字に転落、上手く処理したように見えるユナイテッドアローズでもアウトレットに回す在庫が急増してしまった。店舗数の少ない中小アパレルや百貨店依存度の高いアパレルでは在庫処理の損失は経営を脅かすほどに至ったのではないか。
 後遺症は今に至るも終わっていない。在庫の流れが将棋倒しになって冬商戦最盛期の今も過剰在庫に窮するアパレルが少なくないし、夏物在庫の処理に余程苦しんだのか『羹に懲りて膾を吹く』の例えを地で行くように、不振在庫を煩雑に期中で値引き処理するストアが以前にも増して増えている。冬バーゲンも混乱が続いて在庫処理に窮するのでは、という不安を拭い切れないのであろう。「バーゲン正常化」どころか、逆に「バーゲン日常化」をもたらしてしまった。こんな状況では例年のように大量のバーゲン弾を用意するブランドは限られ、弾不足から冬バーゲン売上が低迷するという結末が危ぶまれる。ましてや春物立ち上げが直後に迫る中、冬バーゲンを後倒す百貨店や駅ビルのためにバーゲン弾を積むアパレルは極めて限られるのではないか。
 何度も指摘したように在庫運用は連続したものだから、何処かでずれ込めば後々まで将棋倒しになって在庫処理に四苦八苦する事になる。消化仕入れの殿様商売で在庫を抱えるリスクを知らない百貨店や大家感覚が抜けない駅ビルデベの一方的な思い込みに振り回され、延々と在庫処理に苦慮するアパレル業界の実情をはっきり数字で見せつけられるに及んでは、もはや「人災」の責任を追求せざるを得ない。『業界のため』という建前が本当なら、三越伊勢丹とルミネの経営陣は一刻も早くバーゲン後倒しの放棄を公言すベきであろう。
 2012/11/26 09:29  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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