伊勢丹本店の自殺行為
 今朝の日経に2月1日付けで三越伊勢丹HD社長に就任する大西洋氏へのインタビューコラムが載っていたが、主題となった来春の伊勢丹新宿本店全面改装の方針を聞いて『コリャ駄目だ』とガックリ来た。
 『斬新な内装に刷新するので売場面積が12%減るが、集客力を高めて売上は毎年5%伸ばす』という方針は、限られた売場面積に無理に突っ込まれたブランドの品揃えが偏って取引先との軋轢が絶えず、顧客もあまりの混雑に買い物の労苦を厭ってしまうという現状をさらに悪化させる『ブランドと顧客に冷淡な効率主義』であり、これ以上混むなら他店へ乗り換えようという顧客、これ以上品揃えを削がれるなら他店へ乗り換えようというブランドを増やす事になるのではないか。
 かっこつけて売場面積を圧縮する以前に、伊勢丹新宿本店がやるべき改革は山ほどある。まずやるべきは古典的な集中レジシステムとそれが占める面積と導線の無駄、派遣店員と重複する大量のレジ要員の削減であろう。実際の販売はブランドの派遣店員がしているのに支払いと包装は遠くの集中レジへ行って正社員にやってもらわねばならず、時間とスペースの無駄、二重雇用の無駄が指摘される。正社員のいるレジへ行って先払いし、レシートを売場に持って行って商品を受け取るチャイナ方式を笑えないのでは・・・・。最近のデパ地下食品ではレジシステムのオンライン化が進み、派遣店員だけで精算と包装が済んでしまう合理的な方式が急速に普及しつつあるが、まさか伊勢丹さんはご存じないとも思えない。
 もうひとつ、売場の通路に仁王立ちになって周囲を威圧している黒服のおじさんやお兄さんをなんとかして欲しい。販売するでもなし何かを聞いても案内出来る訳でもなし、時として腕まで組んでいる姿を見ると、こいつら派遣店員と顧客を監視しているつもりなんだとムカついて来る。それも主通路の一等地端に立って通路巾を確実に狭めているのだから、混雑に疲れた顧客とすれば『退いた退いた!』と押しのけたくなる。この販売実務を負担しない黒服たち(所謂エリート総合職)の人件費が百貨店の法外な歩率要求をもたらしている一因である以上、三越並みに削減すべきは当然だ。
 こんな必然の改革に目を瞑ったまま、かっこつけた売場圧縮に走ってさらなる販売効率を取引先と顧客に強いるという新経営陣のミーハー感覚とリアリティの欠落を恥ずべき同窓(大西氏とプロフェッサーは同じ大学同じ学部)の体質と疑うのは、名門私大に大学から入った地方出身者の僻かも知れませんネ。
 2012/01/27 10:45  この記事のURL  /  コメント(0)


コレクションに背を向けて
 毎シーズン、コレクションが始まる頃になると当社スタッフはそれに背を向け、各ブランドの店頭を何周もして「ブランドツリー」の作成に入る。ブランドミックスにせよテナントミックスにせよ、テイストのみならず開発手法や物作りのスタンス、MD手法や編集手法まで反映した「ブランドツリー」をきちんと詰めておかないと実務に耐えないからだ。
 80年代にはコレクションと店頭MDにほぼ等量の時間を割いていたように思うが、今では1対10以上に開いてしまったのではないか。それだけコレクションブランドの存在がマイナーになり、世の主流がMDブランドになってしまったと言う事なのだろう。あるいは業界が忙しく世知辛くなり、時間を取られる割りに(自己満足以外の)メリットの薄いコレクション見物が疎まれるようになったのかも知れない。
 コレクションを見ればブランドのカルチャーやテイストは位置づけられるが、展示会や店頭を見ないとMDの組み方やシーズン展開は解らない(MDを組まない事がコレクションブランドの特質と言われた時代もかつてはあったが・・・)。評論家にとってはカルチャーやクリエイションが判ればよいのかも知れないが、MDのプロはそうは行かない。変にクリエイション信仰にのめり込むバイヤーもいるが、第一線のバイヤーこそブランドのMDを見極めて欲しいものだ。
 2012/01/26 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)


FCの色々
 数日前の日経にワールドが地方スーパー向けに「シューラルー」のFC展開を広げるという記事が載っていた。元々「シューラルー」は小商圏の小型SCに適した自社ブランド編集低価格ママ子カジュアル業態で、単価や販売効率と運営費のバランスから見れば直営店の拡大には限界があった。
 そんなワールドと低価格ママ子カジュアル商材の入手に苦労する地方スーパーの利害が一致して、FC展開を拡大するという機運になったと思われる。
 FC展開(以下、FC契約と言う)はジー側が店舗投資してザー側が商品や運営ノウハウを提供するもので、ザー側が店舗投資してジー側に運営を委託する販売代行とは区別されて来たが、曖昧な言い方をする企業もままある。FC契約は資金力はあるがノウハウを欠くローカル企業が選択するもの、販売代行契約は運営ノウハウ/人材はあるが資金力を欠く企業が選択するものと考えられる。
 FCの一種にバーチャルSPAという概念があるが、これは直営店と同じ商品補給管理下で(当然、同じVMD運用下で)直営店と同じサービスを提供せんとするもので、本社の在庫補給管理下で同一水準の運営が行われる限り、FCか販売代行かは問われない。ただし、買い取り型FCはこの概念を満たさない。
 ワールドは70年代のオンリーショップ当時から買い取り型のFCで卸し事業を拡大したが、DCブランドブーム以降は直営店展開にシフト。90年代に入ってはバーチャルFCを初め様々なFCモデルを模索して来たが、直営店主導体制が崩れる事がなかった。今回のFC拡大もローカル小商圏業態に限っての部分的な取り組みになるのだろう。
 2012/01/25 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)


カニバリよりO2O効果
 業界紙やHPに公開される毎月のブランド別既存店売上伸び率を見ていると、ウェブ販売比率の高いブランドほど実店舗の伸び率も高いという傾向が見られる。ウェブ販売比率が二桁に乗って来ると実店舗売上を食うのではないかと心配したくなるが、現実はカニバリゼーション(共食い)よりO2O効果の方が大きい。スタートトゥデイの急激な売上増加で有力セレクトショップの実店舗売上が食われるのではないかという指摘が一時あったが、現実はO2O効果の方が大きく、ウェブ売上が伸びると実店舗売上も伸びるという結果となった。
 O2O(Online to Offline)、すなわちウェブでの情報発信・交信が実店舗への来客に繋がるという概念だが、既に飲食店業界では「食べログ」などの消費者評価投稿はもちろん、地図検索やナビゲーションと連動したクーポン送信が定着している。アパレル業界でも会員登録アプリでスマホに店頭クーポンをダウンさせるのは当たり前で、ブログやSNSを使ったステマO2Oも着々と巧妙化しており、知らないやらないブランドは置いて行かれた感さえある。
 もはやO2Oやステマは是非を問う段階ではなく、如何に効率的に販売戦略に組み込んで行くかが問われている。カニバリよりO2O効果が大きい事が明白になった以上、アパレルのウェブ販売とO2O仕掛けは加速度的に拡大して行くのではないか。
 2012/01/24 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)


秋入学か春入学か
 グローバル化が教育制度まで及び、留学生の多い有力大学では従来の春入学からグローバル基準の秋入学へ転換する事が検討されています。満開の桜の下で入学式という伝統を捨てるのは寂しい感じもしますが、日本がグローバリゼーションから取り残されない為には、いずれ断行せざるを得ない事なのでしょう。
 実はファッションの世界でも欧米と日本は春秋の起点や季節暦が異なり、国内ブランドと欧米ブランドではシーズンMD展開が微妙に違うのです。両方をミックスしているセレクトショップなど、その組み合わせ方がひとつのMDノウハウになっているはずなのですが、店頭で見る限りは欧米ブランドのシーズン展開を活かしているとは思えません。
 日本では年末投入の初春が起点となり、春、初夏、盛夏、晩夏、初秋、秋、冬、梅春とシーズンMDが流れますが、米国では独立記念日(7月4日)前後から立ち上がる晩夏・初秋に相当するバックトゥスクール(欧州ではプレフォール)に始まって、9月第一週末〜月曜のレイバーデイ休暇明けに秋冬物が一斉に立ち上がり、11月に入ると最終木曜日の感謝祭から始まるホリディ商戦向けのギフト商品やクリスマス休暇向け商品が並び始めます(日本で言えば梅春&クリスマスですが、年中パーティやってるのでパーティウェアはシーズン商品とは言えません。クリスマス柄のバルキーニットなどが代表でしょう)。ホリデイ商戦の後半にはクリスマス休暇を暖かいリゾートで過ごす為のクルーズ(リゾートウェア)が立ち上がりますが、欧米でも一般大衆向けとは言えません(日本でも正月休暇を暖かいリゾートで過ごすのはリッチな芸能人や開業医ぐらいでしょう)。
 欧米のシーズン商品で特徴的なのはホリディとクルーズだと思いますが、日本のセレクトショップがそれらを大きく訴求しているのは見た事がありません。有力セレクトショップも多くはガラなマーケットに埋没しており、本来のグローバルな編集提案力を失っているのは残念です。
 2012/01/23 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール

小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。

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