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勝負と試合
 勝負には勝っていたが、試合には負けた。その逆で、勝負に負けてたにもかかわらず、試合には勝った。皆さんも何度か耳にしたことがあるはずのパラドクスだ。

 前の週末はこのパラドクスのダブルヘッダーであった。

 ボクシングはとても爽やかな結果に終わったかに見えているが、元チャンピオンのコメントからは微妙なニュアンスが伝わってきた。故障による調整不足から延期も視野にいれたかったが、トリプル戦なので踏み切れなかった…という趣旨のトーンが感じられた。

 興行的にはトリプル戦は大成功をおさめたであろうことが想像されるが、ベストコンディションで勝負に臨めなかった可能性もある敗者の姿勢とコメントが爽やかさにさらに色を添えて天晴れだった。

 選挙という試合に勝たない限り主義主張のつばぜり合いを行う勝負の表舞台に打って出ることができない職業はパラドクスを内在している。試合に勝たんがための勝負の放棄に多くの有権者は白けさせられた。引き続きの政権に野党がどのような勝負を仕掛けることができるのか、期待を託せる党が一党だけでもあることがせめてもの救いか。

 さて、足元で進行中のプロ野球の頂上決戦であるが、勝負にも試合にもなりそうもない第一戦であった。機構側の興行的には今のシステムはベストなのだろうが、本当の勝負を楽しみたいファンの興味に十分に応えることができているだろうか?

 企業にもこのパラドクスは重くのしかかる。利益を出すことを試合に勝つことと前提におけば、いくら社会的好感度の高い活動内容で評価を受けたとしても、利益に繋がらない限り存続は担保されない。えげつない勝負に打って出て利益を出しても、違法でない限りは社会的に葬り去られる可能性は低い。

 勝負にも試合にも負けることは論外であるが、その両方に勝つことは美しいが難しい。
 2017/10/29 09:34  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
選挙権定年制
 台風のおかげで、神様がくれた内勤二日間となり仕事がはかどった。

 それにしても敵のエラーによる圧勝にはため息すらつく気が起こらない。企業において老い先が短くリタイア後の経済的憂慮をもする必要がない比較的高年齢層が重要なポストを占めて、企業の未来を左右する意思決定の業務分掌と権限を持たざるを得ないパラドクスについては何度か触れてきた。

 10年、20年を見通す能力があるかどうかが問われるというよりも、目先の短期視点で大過なく過ごすことができれば、退職金も年金も満額という安楽椅子から敢えて立ち上がる勇者はレアな存在なのが現実だ。

 18歳まで引き下げられた権利に基づいて数十年以上ある輝ける(もしくは暗澹たる)未来を意中の人物や組織に託した若人も数多くいる一方で、投票後数年も経ずして彼岸にわたってしまう人々が何十万いや何百万人いることだろうか…。

 戦中戦前を生き抜いてこられた大先輩方に対するリスペクトを怠ってはならないが、投票所の周囲で数多く見受けられた70歳半ば超のお年寄りの方々の立ち居振る舞いと言動を見聞きしていると、果たして現代的争点に対する理解と判断力がはたしてどれくらい備わっているのだろうかと心配になった。

 対候補者、対政党の両面においてかなりステレオタイプな意思決定、いやそれ以前の無条件反射的行動がなされてしまっているリスクは決して低くはないだろう。

 高齢を理由とした自動車運転免許証の返上事例は増加する傾向にあると聞く。この際、選挙権にも余命のカウントダウンによる返上を認めるか、思い切って定年を設けることも視野に入れてパラドクスを解消することを検討してみてはどうかとも思う。

 一票の格差は、議員一人あたりの有権者数という員数の問題のみならず、有権者の余命を衡量したときの時限格差も内在していると考えなければならない。
 2017/10/23 17:31  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
頑張れ!サラリーパーソン男子
 9日付けの新聞記事から三つほど拾ってみると、頑張れ!サラリーパーソン男子とエールを送りたくなる。

 日経MJでは「ゾゾタウン揺らぐ牙城」との見出しが踊り、“衣料通販アマゾン脅威に”と続く。伊藤元重教授がそれを受けて、「苦戦するカテゴリーキラー」と小論を展開する。

 米国のトイザらス破綻はビッグニュースだった。私たちの世代は、その昔、地場の専門店で玩具を買ってもらった。岡山出身の私が誕生日やXmasプレゼントを買ってもらっていたのは「人形の岡杉」というお店だった。

 私が子供に玩具を買い与える頃に颯爽と上陸してきたのがトイザらスで、その圧倒的な品揃えとお手頃価格には舌を巻いた。その後日本に登場したGAP数寄屋橋店で、嬉しげに息子二人に揃いで色違いのGAPパーカーを買い求めたのがまるで昨日のことのように思い出される。

 キラーはやがてキルされる運命にある。カテゴリーキラーのカテゴリーは当初品揃えという意味で使われ始めたが、いまとなっては広く流通システムを含んだビジネスモデルの種別と捉えなければ流れを見誤る。

 ZOZOの、アマゾンのそれぞれのバリュー、そしてリアルショップと直営サイトの意義と価値は何か。伊藤教授は女性は男性に比べて買い物時間が圧倒的に長いようだとして、買い物を楽しんでいる彼女たちが典型的に支持しているのが却下点の化粧品売場なのかもしれないと説く。

 安さと効率が求められる世界と、価格は劣後で効率ではなく居心地と満足感が求められる世界は全く別ものだ。

 片や、消費を斬るの特集では「働き方改革でさまよう会社員」として平日の夜に公園やカフェに出没する男子の姿にヒットの予感があるという。平日夜の早い時間帯に自宅で居場所とやることがない男子の現実は悲哀に溢れているとも言えるが、その彼らが居心地がよくて満足感を味わうことができて、帰宅までの時間を有意義に過ごすことができるコトと場の創出は、確かに新しい無限のビジネスチャンスであるとも言えよう。

 先頃NHKで報道された尼崎のプレハブ文庫では、多くの子供たちが親が帰宅するまでの時間を楽しそうに過ごしている姿が印象的だった。このような場のサラリーパーソン版が求められているというわけだ。

 私塾をスタートして一年半になるが、完全リタイア後にこんな場を主催できたら面白いとも思う。最低、四つの間が必要となる。愛煙の間、愛蒸の間、愛飲の間、そして禁欲の間だ。
愛煙は燃やすタバコから離れられない人に、愛蒸はアイコスやグローに移行できた人に、愛飲は文字通り1杯引っかけたい人に、そして真面目に本を読んだり静かにPCでお仕事したい人には禁欲の間を。

 時間と知識は無償で提供することは厭わないが、仕事帰りに立ち寄りやすい場所や通勤途上の交点となるとさすがに場所代がかさむ。それを自費で拠出できるほどの資産家でもないので、どの程度のお金の流れを創出することができるかが鍵となる。

 それさえクリアできれば、本気で考えるに値するラストウェイではある。実現できる確率は限りなくゼロに近いと思われるので、残念ながら、自己責任で頑張れ!サラリーパーソン男子。来たれ、放浪サラリーパーソンの受け皿となる新規ビジネス。
 2017/10/10 07:03  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
ついに御上が動くか?
 経産省によるアパレルサプライチェーン研究会の報告書も一読の価値があるが、生活製品課の「取組方針」も必読だ。

 日経MJでは、“経産省、慣行に異例の指摘”“服、セール頼みにNO”“価格に対する信頼失う”と見出しがつけられたが、原典にあたると業界の現状がバッサリと切って捨てられている。

 価格に見合う価値のない商品を提供することは、目先の利益はもたらすが中長期的な持続可能性はない。売れ残りを値引き販売することを前提にした商品価値に見合わない高価格で上代を設定することは消費者本位に反している。

 商取引慣行については、「歩引き」「長期手形」「未引取」「受領拒否」「返品」「契約書不作成」「過剰供給と値引販売」と生々しい単語が並ぶ。

 J∞Qualityにいかほどのリアリティがあるのかは河合氏の議論にもあるとおりだが、産地の彼我以前にビジネススタイルがグローバルスタンダードには遠く及ばす、ガラパゴス化していたのでは話しにならない。いっそ仏のソルドのようにバーゲンを法の規制下において欲しいとも思いたくなる。

 ネットの普及とともにブラックボックスだった原価率が明るみに出たと報じられたが、プロパー店舗で上代の80%Offまでさらしてしまっては、自らケツを丸出しにして商売をしたようなもので、決してネット上の第三者による暴露だけではない。

 サプライ側の費用であるところの原価はあからさまになってしまった(とはいえ方々の議論で引用される数字はアバウトだったり、的外れだったりもする)が、フロント側の最大費用の家賃だけは未だ多くがブラックボックスだ。インターナショナルで展開されているスーパーブランドの歩率は…。FRやニトリが都心の館に果たしてどのような家賃条件で入っているのか…。

 SCからチャージされる歩率見合い以外のとんでも経費のオンパレードに辟易しているテナント側も少なくないだろう。一方で高い歩率ではあるが、それ以外の費用はびた一文チャージされない百貨店の潔さ。

 店頭における家賃と人件費がマージンを圧迫し続けることから、商品原価を圧縮させるほかなく、そうすると商品がチープになってプロパーで売れる訳もなく。SPAとはいいながら売場はディベロッパー頼みで、他人の場所を間借りするしかない宿命にもかかわらず、ディベと一体化したサプライチェーン最適化の議論がなされることはなく、アパレルはただただ原価を下げ続けざるを得なかった。

 しかしながら、セール玉やアウトレット専用商材の仕込みはアパレル側の単独犯であろう。
MJではセールという宴(うたげ)の終わりは近いと締められていたが、なんちゃってSCMに過ぎなかった似非SPAがセールというガス抜きを必要としたのであって、ガスの発生源を根絶させなければ根本的問題解決にはならない、

 SPAとは何ぞやを再定義して、経済構造を川上から川下まで一気通貫させた新たな価値連鎖の再構築が求められている。

 自分が当選するために本来の主義主張が劣後になる人々の動きを見ていると、短期的に自社の利益を確保したいそれぞれのプレーヤーが目先の自分の利害を超えて一段高い目線のテーブルにつくことができるかどうか、ハードルは決して低くはない…とため息をつかざるを得ない。
 2017/10/03 17:04  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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