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月間100時間
月間100時間という水準が残業の上限として決着した。

 大方の企業の定時はというと、週40時間弱でおよそ年間2000時間くらいだろうか。それに月間100時間を加えると年に3000時間強という計算になる。過労死に至りかねない閾値が月間80時間という議論もあるので、これをどうとらえるかは微妙ではある。

 その昔、24時間のみなし残業手当で働いてきた期間が20年ちょいあった。ほぼ毎日定時の一時間半前には出勤していたので朝残業が1.5時間、夜も普通に2〜三四時間残っていたので一日当たり小さく見積もって4時間の超過勤務。ちょうど月間80時間は残業という計算になり、みなし手当との差分は60時間弱となる。

 幸い体は持ちこたえることができたが、2年で時効になってしまう請求権を積算するとトータルで2000万円を超える金額が試算される。仕事を通じて得られることや勉強になることの方が多かったことから、何か持ち出しをしてしまっている感覚は皆無であるが、これは知識労働と肉体労働でその印象は大きく異なる筈だ。

 ユニオンの活動をしてた20代後半の頃、ドイツでは年間労働時間が1600時間を割ったと聞き、大前研一さんの発言から米国のパワーエリートは年間4000時間は働いていると聞かされ、何がどうなんだ?と頭を悩ませたものだ。

 裁量労働やフレックスと言われて久しいが、場所的時間的制約と拘束の有無と自己裁量のバランスがどうなっているかで一概に議論することができないのが職種のバリエーションである。単純労働/複雑労働、自発行為/他発行為、思考/作業、生産性格差小/生産性格差大、等の軸で分類すると単純に労働を括ってしまっては乱暴な議論になることは否めないのが労働現場の実態である。
 
 法による規制と企業の自助努力と個人の価値観が三位一体となってにらみ合っている。
 2017/03/29 18:55  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
ビジネスモデルの世代交代
ビジネスモデルにもジェネレーションがあり世代交代がある。

 アパレル業界においては、“52週のMD”に代表されるPOSデータに基づくロジック優先、MD優先のモノ作りが一週廻って過渡期に差し掛かっている。店名や織ネームを隠してしまえば、どのショップも商品も区別がつかないと言われて久しい。

 私事に過ぎないが、電子たばこのアイコスに変えて八ヶ月が経過した。きっぱりやめればいいものを変えるに留まる意思の弱さは情けない。アイコスは二百万個を超えたとのことなので、対喫煙者の比率はおおよそ5%というところだろうか。大きな喫煙場所で二十人に一人というと、大体そんな感じだ。

 ネットでは1.5倍から2倍のプレミアがついており、直営店では整理券状態、さらには女性にしか売らないという強気の商売になっている。機材は工業的にいくらでも増産できるはずだが、おそらくタバコの生産ラインの移行がネックとなって爆発的にシェアが逆転しては困るという事情が隠れているのではないかと想像される。

 10年後には火を付けるタバコのシェアは50%を下回っているというのが私の見立てだ。加えてそもそもタバコを吸う人は今の半分程度になっているとも予想される。その予測の下では、タバコ業界として電子タバコから四倍の粗利を確保することができれば現在の利益構造は維持できる勘定になる。

 アメリカ大陸の原住民の嗜好品が世界に広まって数百年が経過するが、ほんの10年ほどのオーダーで大きくビジネスモデルが変化するダイナミックな事例になる。さらに数十年後には、その昔は火を付けたタバコというものがあったそうなと語られている、そんな未来もかなりの確率でありそうな話しである。

 多くのアパレルがAIの可能性を模索し実証実験が盛んに行われている。メルマガで大きな成果が出た事例が複数あるようだが、本丸は発注と配分業務だ。POSデータが発注と配分の精度を飛躍的に高めてくれたことは間違いない事実であるが、人間には超えられない限界が二つある。

 一つは、情報処理の量の問題である。年間数千の規模になるSKU個々に最適な発注数量をはじき出すことは神業に等しい。二つめに人間ならではの数字の丸めをやってしまうことから逃れることは難しい。1500枚という発注は容易にできるが、1459枚という発注がなされることはまずない。たとえそれば最適発注数量だとしてもだ。

 各店各一の配分は多くのDBが初回にやっていることだが、数十〜数百におよぶ個店ごとにSKUを間引いて配分することも、店舗側のVMDの要素も絡んで困難を極める。そこはAI君の出番であり、彼らにとってはデータさえ整っていれば最適解を出すのは朝飯前だろう。

 SPA型のビジネスモデルが急成長しはじめたころに、人間を賢くさせて人間にいい仕事をさせる情報システム云々という議論をしたことがあるが、人間にはできない、人間がやってはならない仕事を任せてしまう情報システムの時代に突入した。

 いまの新入社員が経営幹部になる頃には、そういえば昔はMDが発注してDBが配分してた時代があったんだって、へぇー!!!と語られているのではと思いながら。

 30年というワンジェネレーションを経て、SPAモデルが大きく転換しようとしている。
 2017/03/28 09:49  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
十二人の侍
 昨年はアウトレットのSVの方々をメインに事業部のDBも交えた育成施策をご一緒させていただいた老舗セレクトさんの第二弾が折り返し点まで到達した。2月10日を皮切りに、最初だけ二週のインターバルで、2月24日からは毎週の四連チャンだったことから、様子を紹介させていただくのがこのタイミングになってしまった。

 第二弾は事業部のMD十二人の侍たちを対象にして、昨年よりもややボリュームアップしての実施となった。同様のスキームを実施することで職種特性が浮き彫りになった。これは当該企業のみならず業界一般論にも敷衍することができる。

 SVとDBにとってはものごとそのものよりも表現や形式が気になるしぱっとそれを掴みにいくのに対して、MDはものごとそのもの、すなわち本質をじっくり考えて、そう簡単には表現や形式では手を動かさないという特性の違いがある。

 何もSVとDBが表面的で浅はかに過ぎないと言っているのではなく、どちらから手を付ける傾向があるのかという順番の問題である。前者の方が分析的アプローチなので着実に前進しやすい一方、後者はいきなり本質を対象にして思考することから、じっと考えこんだまま手が動かない罠に陥りかねない危険性がある。

 52週のMDロジックの逆機能については改めてこの場で議論するまでもないが、サクサクとデータをぶん回してその結果として本質にたどり着いたつもりになっていた“なんちゃっMD”
は、手は動いているがその実、本質的なモノ作りにはとうてい及ぶ術もなく、軽薄短小なペラペラの商品しか生み出せなくなってしまった業界事情は大反省ものだ。

 だからこそそう簡単にはパッと手が動かなかった今回の参加者を私は「侍」と表現した。算盤をはじく商人ではなく勘定ごとには不器用な、しかしながら武士としての道を踏み外すことはない、そんな侍と姿が重なって見えたからだ。

 その彼ら彼女らが、喜々として次回に向けてアウトプットイメージとそれにむけて必要なデータや分析方法を情シスと打ち合わせている姿に心打たれるものがあった。それは決して算盤を手に入れたのではなく、名刀として新しい鞘に収まったのだろうと想像される。

 そんなMDの遺伝子を失っていない人々に一本でも多くの名刀をお届けしたい。
 2017/03/20 16:41  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
サービス残業が隠れていた
ユニオンの質的変貌の影にはサービス残業が隠れていた。

 サービス残業にも様々なタイプがある。横軸に職種を、縦軸に類型をとるとマトリクスを描くことができる。横軸には、肉体労務の提供(いわゆるブルーカラーもしくはワーカー)と知的役務の提供(ホワイトカラー)が挙げられる。

 その折衷形に、知的肉体労務の提供がある。何も考えないでただただ体を動かすだけの単純労務の多くは機械にとって代わられた。アパレルや飲食の接客業も、背景としての知識や機微に溢れる会話が問われる。宅配便のセールスドライバーも間違いなく折衷形だ。

 トラックを運転して荷物を揚げ降ろしする分には単純作業であるが、配荷のみならず集荷や再配達、時間指定まで含めた最適配達ルートの立案は完全にオペレーションズリサーチの世界である。とても頭を使う仕事であり、スキルの差による生産性の違いも大きいと考えられる。

 縦軸は、完全放置(タイムカードも出勤記録もない)というもっとも杜撰なレベルから、みなし残業手当で一律処遇しているケース、タイムカードや端末のオンオフを意図的にショートカットするちょっぴり悪質なケース、そんな暇はないので無意識に実態と打刻がずれてしまう良質なケースなどにグレーディングできる。

 折衷形×良質なケースでも、違法は違法という厳しい現実がある。数百億の負担はさすがに企業体力を奪うだろうが、超優良企業の遺伝子があるはずなので大丈夫だと信じたい。

 それより深刻な問題は、ECの急速な拡大とそれに伴うデリバリーのバリエーションの増加である。厄介なことに核家族化単身家族化も並行して進行しており、不在率も併せて増加する一方である。

 もしかしたら、利便性とコストが見合う閾値を超えてしまっているのかもしれない。利便性を担保するバリューが人力である限りは時間的にもコスト的にも限界があることを甘んじて受け入れなければならない。付加価値の大元の源泉は人である。折り合いをつけることができるか、資本主義。
 2017/03/04 17:22  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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