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変容する労組
 「ろうそ/ろうくみ/くみあい」と呼称される労働組合を、現代的活動への脱皮を標榜して“ユニオン”と改称したのは前職時代の30年も前のことだ。

 かつてはストライキ(労働争議)を切り札に春闘をはじめ経営と対峙することが伝統的労組のスキームだった。それが会社と協働して社員の福祉に寄与したり経営参加まで視野に入れる動きが出始めたそんな時代背景であった。

 今の世代にはゼネストという言葉は辞書にはないだろうし、本当に国鉄や飛行機が止まったなんて信じられないことだろう。組合員の減少とプレゼンスを発揮する場という意味ではすっかりボリューム的に影を潜めつつある労組であるが、ここにきて質的変容の兆しがある。

 典型的な事例がヤマト運輸の荷受量抑制の要求だ。人口減少経済は遠くない確実な未来であるが、短期的には実感できないし認めたくないバイアスが働く。消費市場の縮小と労働力の減少と何が後先でどのようなメカニズムが展開されるのか、変数や仮定が多すぎて的確に見通すのは目と閉じて針に糸を通すより難しい。

 今回の要求と会社側の合意方針は、消費市場が伸びるのではなく大きくECに軸足が移る中、労働力が追いついていない矛盾の結果だと考えることができる。ワークライフバランスの確保という視点で考えると従来の組合活動の延長線上にしか置けないが、市場と労働力の変化圧力に耐えられなくなった現場が経営戦略にもの申したと考えると異なる景色が見えてくる。

 変化する環境に対して質的対応を突きつける新しい労組のあり方が見え隠れする。大きな声で要求を繰り返すだけでなく、クールな頭で経営戦略に質的貢献を及ぼす。労働法の強化やプレミアムフライデーなど国の諸施策は企業体力を奪い続けるが、労組が企業知性を下支えすることでギリギリのバランスが保たれることが期待される。
 2017/02/27 09:50  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
サピエンス
「サピエンス全史」にようやく手を付けることができた。

 昨年来ベストセラーとして気になってはいたが、東京の友人からの地元目黒の図書館で500人待ちとの話しを聞いて、即手に取った次第だ。

 それにしてもイスラエルの人々の賢さには舌を巻くしかない。ダニエル・カーネマン、ダン・アリエリにユヴァル・ノア・ハラリと三連発だ。

 ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」は1万年のオーダーで人類史をとらえているが、本誌は数万年のオーダーで7万年前の認知革命から人類史を扱う。数千年前の農業革命が次なるイノベーションで、ここ数百年の科学革命が直近の大変革だ。

 大革命のスパンがムーアの法則のごとく短くなってきていることにお気づきだろうか。ムーアの法則とは、半導体の集積率が18ヶ月で倍になることに端を発して、IT系のスペックは10年で1000倍に進化するなど応用型で用いられる概念である。

 本当の直近の大革命をインターネットによる情報革命だと定義すると、それはほんの数十年ほど前の出来事ということになるが、そうすると数年のオーダーで次なる大革命が迫っているということだろうか?

 その旗手はAIが担って、最終的にはターミネーターやマトリクスの世界が訪れて私たちはゼロイチに隷属することになってしまうのか。

 ハラリ氏の逆説的問題提起は随所に溢れており、ハッとさせられる箇所が満載だ。私がもっともドキッとした部分を紹介するので、早く読もうと感じられた方はお急ぎあれ。

 小麦をはじめとする炭水化物食物を栽培化したことと飼育可能動物を家畜化したことが農業革命の背骨であり、その後の世界史を変えるパラメーターであったことは等しくダイヤモンド氏も強調した点である。

 そこでハラリ氏はこう言う。定住化して農耕民族のなった人間は、日々潅漑や水くみのハードワークに追われる、天候次第というストレスにさらされて、以前の狩猟採集民族の方がよっぽどハッピーであった。私たちは小麦を栽培可能にしたのではなく、その瞬間から小麦の家畜に成り下がってしまったのだと。

 現代に置き換えると、休みの日だろうが移動中だろうがスマホを通じたメールチェックに追われる私たちは、ITの家畜なのかもしれない。

 ワークライフバランスなる言葉には、OA化以前の職場環境へのノスタルジーが込められているように思えてならない。私たちはやっちまったのかもしれない。
 2017/02/12 16:30  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
自分で考える
自分で考えて、自分なりの考えをもつ。

 リーダーシップ関連の研修を中心として、クローバルに一人前と認めてもらえるには必須の条件であると、いろんな場面で発信しているメッセージだ。私も含めて、私たち人間にとってそれは追求し続けなければならない永久の課題だ。

 自分で考えるには、道筋としての方法論とその上に載せるべき質の良い情報が不可欠となる。方法論は論理的思考(ロジカルシンキング/クリティカルシンキング)をはじめとして、形式知として学習可能な時代になった。

 その一方で、質の良い情報をいかに選りすぐってトッピングしていくかはインテリジェンスの領域だ。我が国には、世界に誇れるインテリジェンスオフィサー杉原千畝とマッカーサーを唸らせた名参謀堀栄三が存在した。いずれもあたるべき書籍があるので、是非トレースされたい。

 質の悪い情報しかインプットされていない領域の代表格が歴史であり、とりわけ日本史がグダグダである。「中国化する日本(與那覇潤)」を読むと、高校までの日本史がいい加減どころか、大嘘を刷り込んでいる実態がよくわかる。方法論すら心許ない上に、大嘘の情報が載っかっているようでは自分で考えるどころの騒ぎではない。自分で正しく考えることができないのであれば、自分の考えを持ちようもない。

 先週は国会が騒がしかった。ことに法務と防衛が怪しかった。自分で考えて自分の考えをもっていない典型的な現象が繰り返された。特に防衛は、地に足がついていない浮遊感が終始感じられ、ただの見栄から登用されてしまった哀愁すら感じざるを得ない。自分で考えることまでは、トレーニングによって何とかたどり着くことが可能だ。

 しかしながら、その先の自分の考えをもつに至るには単なる思いつき的なアイディアを超えて色落ちすることがないイデオロギーの次元にまで到達することが可能な、さらに一歩踏み込んだ鍛錬が必要となる。

 インプットし続けることを人生の最後の生業にするのも悪くないどころか、それが人生ではないかと思いをめぐらせている。
 2017/02/05 18:10  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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