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屋台のタコ焼き屋
 屋台のタコ焼き屋が窮極の戦略家でありマーケッターである。およそ20年振りにこのフレーズが脳裏に蘇ってきた。

 大手小売チェーンの新入社員研修のコンペに応札中のクライアントとマーケティングのパートはどうあるべきかを事前擦り合わせをしている最中であった。マーケティングの真髄と伝えたいメインメッセージは何かとの問いに対して、売るのではなく売れる状況を整えることと、商売って面白え!と気づいてもらうことなりと応酬しているうちに頭に浮かんできた。

 神戸大学のMBAからはこのようなベタなメタファーを通じて多くのことを学んだ。屋台のタコ焼き屋はいつどこに屋台を出そうかと考える。出店場所と次期が決まるとどんな客がどれくらい買ってくれるかを予測する。前夜までにそれに必要な原材料を仕入れるとともに、当日は早朝から仕込みに取りかかる。晴れて開店したのちは、通りがかる客に気の利いた言葉をかえて購買を促す。可愛いおねえちゃんや子供達にはオマケの一つもつけてあげる。
立ち居振る舞いの悪い客には、売らないという窮極の選択も行うことができる。

 さて、閉店時間も気になる頃には仕込んだ在庫の残が気になり、持ち越せない原材料をはくために段階的に値引くとともに、最後は廃棄処分を施す。対価と商品の受け渡しも自分の手で行うのは当たり前で、一日の売上を締めて現金残高の照会も自分で行う。そして明日に備えて仕入と仕込みの軌道修正を行って、ようやく床につくころには日付が変わっている可能性がある。数日のチャンクを終えるとトータルの収支とプロコン分析を行い、今後の出店場所と次期についてあれこれ考えを巡らす。もしかしたら、どこぞに常設店舗を出そうかとか、弟子をつくって多店舗展開しようか等々。

 これら一連のアクションと思考を全て一人の手で行うことから、彼は窮極の戦略家でありマーケターと呼ぶに相応しい。

 さらに情報化のパラドクスがズバリあてはまる典型的な業界が今回のクライアントである。
そのパラドクスとは、IT業界の文脈では情報かが進展すればするほど、かえって業務効率は低下するというものだ。前さばきや事後フォローに余計な業務が発生するとともに、必要なインフラ投資も膨大なものになりかねないという警鐘だ。

 経営学的には、ますます社会性が重要となり必要とされるようになると解く。システムやデータを適切に使いこなすことができる組織力や個人の力量が求められるようになるという意味だ。

 社会人一年目の、しかも項目モリモリの4月の研修において240名を相手にどこまで腹落ちさせて、彼ら彼女らのよきスタートアップに繋げることができるかどうか大勝負だ。是非我々を採用していただいて、テンションあげあげで当日を迎えたいと願っている。
 2017/01/31 19:00  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
私的勉強会継続中
 昨年の三月にスタートした私的勉強会(仮称:北村塾)が年をまたいで先週土曜日に4回目を数えることができた。初めは恐る恐るの出発であったが、参加者の高いモチベーションに支えられて、3月には第五回を予定している。

 ビジネススキルに寄るのかなと思っていたら、予想に反して皆さんの関心はむしろリベラルアーツにあった。第一回目はいかようにも振れる自分自身のキャリアをしっかり考えて欲しいという趣旨で人口減少社会における経済学を扱うことから始まり、次はジャレド・ダイヤモンドで人類の歴史と経度と緯度のいたずらを議論した。そこでのメッセージは、西洋文明(西洋人)が必然的に先進していて優れているわけでもなんでもなく、横に広いという地理的偶然と栽培可能植物と家畜化可能動物に囲まれていたかどうかの環境的偶然の賜に過ぎないというものだ。

 そこから、ムロディナウとグラッドウェルを通じて偶然と必然を取り扱い、今回は統計と確率の世界へと突入した。谷岡一郎氏の辛口の議論と、小島寛之氏の精緻な議論に大いに盛り上がることができた。加えて今回は事業会社の現役執行役員をゲストスピーカーを招いて、
リアリティ溢れるファミリービジネスに関するホットな話題も提供してもらうことができた。

 ここでその内容に触れることができないのが残念であるが、日本語で同族企業と言ってしまうとネガティブなニュアンスやおどろおどろした感覚がバイアスとして働きかねないが、ファミリービジネスは学会もあるくらい世界的にも我が国においても真面目に議論されている経営学の立派な一分野である。

 毎回有志が残って軽くビールをやるのだが、軽くどころか昼間の議論を凌ぐ盛り上がりで3〜4時間の猛論がとめどなく展開される。参加者の反応としては、会社以外のビジネスパーソンとしかも業界を超えて触れあう場がほとんどないらしく、近しい話題であろうが全く遠いテーマであろうがもの凄い刺激になっているようだ。

 私の20代、30代はというと組合や会社を通じて参加できるセミナーや異業種交流にはとにかく活発に顔を出して、これはと感じた人材には講師も含めて別途アポをとって押しかけていたものだ。ネットインフラを通じて誰とでも繋がることが可能になったこの時代にこそ、リアルなフェイスツーの交流が欠損してしまっている現代社会のパラドクスを見て取ることができる。

 SNSには計り知れない効用があることも事実であるが、それが奪い去っているもの、見えなくさせてしまっているものとしての罪(ざい)の部分を見落としてはならない。ふたたびモノからコトへの回帰が起こっているように、デジタル(バーチャル)とアナログ(リアル)も回帰を繰り返す。

 AIや自動運転がどう転回してどう着地していくのか、その動向は注意深く見守るとともに見誤らない人間としての知性と品性が問われている。
 2017/01/26 17:35  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
輪廻転生
 ニトリの百貨店進出を契機に「小売の輪」について議論したのは昨年の12月10日だったが、その上位概念として「輪廻転生」を強く感じざるを得ない年明けだ。

 東洋における宗教観で一度あの世に逝った霊魂が姿形を変えて何度も生まれ変わるという考え方だ。生まれ変わるたびに記憶がゼロセットされているだけと考えれば、私たちは擬似的に永遠不滅の命を手に入れることができるし、生まれ変わりに備えて良き行いをしておかなければろくな姿に生まれ変われないという戒めにも活用できる。

 神戸人にとって今日は22年の歳月を経ても忘れることのない日だ。とはいえ神戸市民の半数が震災経験がないと聞くと歳月の流れを痛感させられる。ところで人間の記憶は不思議な構造をしているようで、その瞬間ベッドの中で何を考えたのかは今なお鮮明に記憶している。

 その後、家族の無事を確認しておよそ小一時間の間に必要な電話連絡をとって(携帯電話は持ち合わせていなかったが、直後の15分ほどは固定電話でそれぞれの実家、同行出張を予定担当教官の加護野先生、直上司の自宅には連絡を取ることができたのだ。その後はまったく電話が繋がらなくなる。

 NHKは早い段階から街中の光景を中継し、通い慣れたホルモン串やの城戸が入っているビルが倒壊し城戸の看板が無残に転がっている映像に愕然としたのがおよそ一時間ちょっと後のこと。それ以降の記憶はまったく途切れている。記憶は自己都合によりメリハリと尾ひれをつけて蓄積されていく。

 社会も会社も個人も阪神淡路大震災から学んだことは数多くあり、その後の中越、東北、熊本における災害ではまだまだ課題は山積みではあるが確実な進化成長を感じることはできる。その一方で福島で起こった出来事は前にチェルノブイリがあり、その前にスリーマイルがあった筈だが関係者および社会はどのような学習を蓄積することができたのか、できなかったのか。

 guやH&Mが価格破壊を仕掛けてきたが、価格破壊は95年の私の修士論文の書き出しにダイエーを主語として記述しているデジャブに過ぎない。モノからコトへとあらゆる業界紙誌に活字が踊っているが、なんか20年ちょい前にもそんなこと言ってたよなと。

 帝国主義に次ぐ新帝国主義の台頭にしても、かつて孤立主義を貫いていた米国が再びTPPやEUを否定しはじめたり。ベトナムにおける惨禍に懲りることなくアフガニスタンがあり、
イラクがあり。このままではマルクス主義さえ一方通行的に消え去ったのではなく再び命を宿して登場してくるのではないかとさえ思ってしまう。

 このように、姿形や場所を変えて何度も同じ魂が再来する事象はまさに輪廻転生だ。それゆえに今生でそれを経験している私たちが次の転生に備えなければならないことと、申し送らなければならないことに対する責任は決して軽くはない。

 メトロノームのごとく同じ場所をいったりきたりしていたのでは、何の前進もない。せめてスパイラル運動を経てX座標Y座標は同じところに戻ってきたけど、Z座標は確実に高い視座に上昇してるよねと言いたいところである。

 メトロノームであればまだましだという見方もあり、下手をすると負のスパイラルのあげくにレベルが下がっていることにもなりかねないのが私たち個人であり社会である。既視感のある輪廻転生に遭遇したとき、Z軸のチェックを怠ってはならない。

 2017/01/17 19:45  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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