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振り子運動
 本日のロジカルシンキングの講義での締めのメッセージはこんな風にしてみた。巻き込む力(説得力)は、ロジック+パッションという方程式で表すことができると。

 ロジックはわかりやすさを担保してくれるが、それだけでは他人は動いてくれない。本気度や迫力が体現されたパッションを伴わなければ、それは片手落ちであると。科学とは、再現性と反証可能性の両方が確保されてはじめて科学として仲間に入れてもらうことができるので、“アパレルを科学する”という概念をずっと標榜し、それは再現性と継続性を約束してくれるものと脚注を入れてきた。

 いくら科学的にロジックを通じてMDを展開しても、再現性と継続性は確保して継続させることが叶うけれども、再現して継続すべき最初のコアはいったいどこから降ってくるのだろうかと原点に戻らなければならない。売れ筋を追いかけると言われて久しいが、では最初の売れ筋はいったい誰が創るのか?神様が創ってくれて天から降ってくるのか?という問いは多くのクライアントに忠告し続けてきたパラドクスだ。

 先月の情報化のパラドクスでも触れたように、パッションを担う社会系すなわち人間力と組織力が伴わないと市場を巻き込むダイナミズムは生まれてこない。いたずらにロジックを振り回し過ぎたツケはあまりにも大きい。人間力によらずしてはかなわないクリエイティブを一朝一夕で回復することは容易ではないが、業界を挙げての課題はまさにそこにある。

 だからと言って、MDロジックが陳腐化したわけでも不要ということでもない。要は、バランスと使い分けの問題である。世の中には、大きく左右に振れながら収斂すべき事象は枚挙にいとまがない。戦争と平和しかり。愛と憎しみしかり。そして、MDにおけるロジックとパッションもその例外ではない。

 私がアパレル業界にお世話になった30年前は、業界を挙げて、そして当該企業はとりわけ気合いと根性という営業系のパッションと、とにかくいいモノを創るという企画開発系のパッションに溢れていた。およそ四半世紀を経て大きく針は振れて、そして反対方向に戻り始めた。

 行きつく均衡点を見極めた個人や企業が10年後には勝ち組として笑っている姿が目に浮かぶ。目指そうではありませんか。
 2015/11/26 22:13  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
戦争と労働
 価値観とルールが大きく変わってしまったのが世界レベルでは戦争であり、我が国では労働だ。

 戦争については、3つのルールが変わってしまった。第一は専門職としての軍人(武士)間による優劣を競う政治の延長としての位置づけが民間人を巻き込む底なし沼へと変貌してしまった。「やぁやぁ我こそは…」で決着をつけていたのは古き良き時代。第一次大戦あたりからおかしくなり、戦争がテロ化した現在は最悪である。

 第二に、無人機による戦争だ。Uコンやラジコンに憧れたのが私たちの世代の少年時代であるが、ラジコンで敵を殺傷する時代になるとは恐れ入るしかない。

 最後は、諜報戦のルール変更だ。インターネットのノードを押さえてしまえば国家は何でもできる。個人情報などくそ食らえだ。この点については、伊東寛氏の「サイバー・インテリジェンス」を参照されたい。

 経営側からのプレッシャーがアルバイトに集中砲火として浴びせられている。労働法の強化が企業体力を奪ってきたが、法律で厚く保護されて腫れ物になってしまった正社員を下手に触ることができないことから、相対的弱者であるアルバイトが標的にされている。

 格差は資本主義の必然的帰結なので、今後とも広がることはあっても縮まることは考えにくい。これはトマ・ピケティの「21世紀の資本」を参照されたい。

 戦争の価値観とルールを変えているのは両極に位置する強者と弱者である。労働についても同様で、アルバイト側にも冷蔵庫に入った写真の投稿などの愚行を通じて仕事や職場を舐めてかかっている面は否めない。

 中庸に位置する最大多数の私たちの社会が、両極の人々によって大きく歪められつつあるのは由々しきことである。

 ファッション業界はその逆で、商品も人材も中庸の最大多数に寄ってしまって市場がおかしくなった。両極によるストレッチが期待される。

 2015/11/14 17:44  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
システム時間
イミテーション(模倣)は人間にとって学習の基本である。

 ただし、善玉と悪玉があるので注意が必要だ。対象を一段ないし二段階抽象化してそのエッセンスを抜き取り、自分なりの解釈で具現化することができれば、それは立派なオリジナルである。そのまんまパクってしまうとただの違法コピーになる。

 イノベーションは模倣から生まれるというのは、早稲田大学の井上達彦教授の議論だ。著書「模倣の経営学」も参考にされたい。

 セレクトのY氏、H氏とは今の時代を読み解く節目の認識で意見が一致した。仕組みとしてのハードが転換期に突入し、コンテンツとしてのソフトを創りあげる人間力が置き去りにされてしまった。立て直すべきことは明白だが、その道のりは簡単ではない。

 大手アパレルのS氏は、多くの事業体(ブランド)にプラットフォームとしての横串を刺すことの困難に直面している。困難ではあるが、その意義とダイナミズムをよく理解しているS氏の目は輝いていた。企業としての転換期を無事乗り越えられることを祈る。

 投資先で奮闘しておられる商社パーソンには、システム時間という概念が突き刺さったようだ。これも上記井上教授が提唱した理論だが、何も週単位のビジネスサイクルが全てでもないし、もっと短い方が向いている業務もあればより中長期のシステム時間で回されるべき業務もある。色まで遡ると1年半のシステム時間が必要なのがファッションである。

 最後は、私たちはサインカーブの合成変数を見ているというものだ。インナーアパレルと通信キャリアの教え子たちが強く反応した。

 事象をこれ以上分解することができない素要素まで具体化することができれば、その要素はサインカーブを描いて盛衰を繰り返している。洋服であれば、デザインと素材と色柄の三要素に分解し、デザインはさらにシルエットとディテールに分解される。
例えば、シルエットではタイトとルーズが、素材ではマットとコートが、色柄では動植物と幾何が、行ったり来たりを繰り返している。

 それぞれのサインカーブには固有の振幅と周期があり、その大きさと長さは人間が心理的に飽きる度合いに依存して決定される。これが私たちが直面しているファッショントレンドの正体である。

 これは店舗や商業施設や街にあてはめて議論することもできるし、業種や業態で応用することも可能だ。様々なシステム時間が合成されて進捗する業務プロセスも同様だ。

 売上や来客などに影響を与える変数は無数にあり、完全に要素分解することは現実的には不可能であるが、このようなメカニズムの上にいることを認識できているのかいないのかでは大きな違いがある。

 彼らの腹落ち感は相当のものであったので、うまく認識することができたのだろう。
 2015/11/09 07:28  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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