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情報化のパラドクス
 情報化のパラドクスとは、情報化が進めば進むほどかえって業務効率が低下しかねないリスクを言い表している。ビッグデータと騒がれる昨今、膨大なデータの洪水の中で溺れることなく効率よく泳ぎ切ることができているだろうか。

 加護野忠男先生は、情報化のパラドクスについて「情報化が進めば進むほど、人間系・社会系の果たす役割が増大すると説く。前職で店頭POSレジほか店舗運営業務データの活用が緒に就き始めたころ、早稲田大学が主催するITフォーラムで事例発表する機会を得た。
何か画期的な結果が出ていたわけではないが、担当者としての実感として人間や組織を賢くする情報システムがありそうだと報告したところ、ファシリテーターの根来龍之先生が強くリアクションしてくれたことを覚えている。

 マズローは、「生理」「安全」「社会」「承認」「自己実現」と五段階で人間の欲求の進化を定義したが、情報にも五段階のレイヤーがある。教えられたのは、MBA在学当時に神戸大学における田村政紀先生の最終講義のときだ。

 それは、「データ」「形式情報」「意味情報」「知識」「英知」の五つだ。データのみ英語で表したが、ここは全て英語で表現した方がわかりやすい。すなわち、「データ」「インフォメーション」「インテリジェンス」「ナレッジ」「ウィズダム」である。諜報機関の活動のことをインテリジェンスと称するのは当然のことだ。インフォメーションの受け渡しをするだけでは、ただのメッセンジャーボーイに過ぎない。丁稚の使いに一国の命綱をたくすのはあまりにも心許ない。

 ところが、インフォメーションとインテリジェンスの間には、簡単には飛び越えられない高さと幅がある。それを可能にしてくれるのが人間力と組織力なのだ。

 マンションにおけるデータ偽装、一連の耐震偽装、食品偽装とギソーには事欠かない我が国の実情であるが、そこで漏れ聞こえてくる「面倒くさい」という一言が気になった。多くはコストや利益や納期などの業務上のプレッシャーが直接的原因になっているものと思われるが、それらをマクロ的要因として戦略の失敗として経営者の問題と捉えることにする。

 一方で、情報化のパラドクスが現場レベルの個人に悪魔のささやきとして最後の一押しを演出しているのではないか。コピペすることでいとも簡単に目先の作業は終了してしまうのだ。ネット上の他人の写真を流用して自分の作品にするような行為が、それなりの立場にあるプロ集団においても容易に起こりうることが明らかにされたのは記憶に新しい。

 黎明期においては人間や組織を賢くすることに寄与した情報システムが、成熟期においては逆機能として人間や組織から考える力と余地を奪うことになりかねない。成熟はIT技術全般のマクロ派とそれぞれの企業や個人のマイクロ波の合成変数なので、自分たちがおかれているステージとそれ故のアドバンテージやリスクを正しく読み取ることが求められる。

 最初のボスから口酸っぱく言われたことのひとつに、「(特に法務担当者には)抽象化能力が求められる」という教えがある。抽象化能力はインフォメーションからインテリジェンスを引き出してくれるもっとも重要な源泉である。さらには、学習としての模倣の中核能力でもある。模倣学習については次回にでも。
 2015/10/19 07:46  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
ワールドの課題、そして今後3
トヨタは「人は育てるもの」、ホンダは「人は(戦略、施策を)指示してやらせるもの」という人材に対する最優先事項の違いがあった、と。

 卸ビジネス全盛期には「ハーティ・ワールド」と社主が盛んに発信していた。その実がどうであったかはともかく、少なくとも形式的メッセージとしてはそう言っていた。プラットフォームビジネスを名実ともに追いかけはじめてから、それは180度転換してしまった。プラットフォームは機能的には優れたインフラだが、それを支える、そしてそれに支えられる人材にとっての居心地は果たしてどうであったか?

 支える側はエンジニアとして優秀な事務方へと変貌し、支えられるクリエイティブを担う人材は限られた旬の期間で燃え尽きるフローとなってしまう。ストックがエンジニアでクリエイティブがフローのビジネスモデルは、ファッション業界において正解であったのだろうか。

 あえて抽象的な表現で記述するならば、おそらく経営の意思決定のための参謀機能が求められるスピードでの動きができなくなっていた、あるいは卓越した能力を発揮できる
組織が従来のような機動性を発揮できない理由があったのではないかと推測する、と。

 稲田氏の抽象論を具体化すると、参謀機能の茶坊主/太鼓持ち化が進展し、組織全体の能力発揮よりも個人の利得が優先されるようになったと言うことができる。前者は歴史および組織の常であり、口先だけ達者で怪我をしないスーパーテクニックを有する人材も古今東西を問わない。

 かくして、歴史的必然ループに巻き込まれただけのことなので、取り立てて経営責任や組織能力の有無を問うこともあまり意味がない。むしろ、未来に向けてそれを乗り越えることができた企業として歴史に名を残すことができるのか、戦略不全企業として三品先生のデータのひとつとして記録される企業に終わるのか。

 これまでの経緯はどうでもよい。未来が問われているのである。
 2015/10/05 17:21  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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