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次世代の支援
甥っ子が訪ねてきて、しこたま吞んだ。

 私はアルコール分解酵素が若干ある三分の一の属性で、ただの酒好きに過ぎないが、彼は正真正銘のアルコール分解酵素満載の三分の一の人材なので吞みではまったく勝負にならない。

 大阪でEC系の仕事に携わって10年近く、今年29歳になるという。少しは役に立つアドバイスができたとしたら幸いである。そう言えば私も29歳の頃にいろんなことを考え始めたなぁと。

 本川達雄氏が言う、できるだけエネルギーを消費することなく次世代の次世代育てを支援する余生に大きくシフトしていきたいと思っている。現在のコンサルティングビジネスも教育ビジネスも、次なるビジネスパーソンを育成するという意味ではその流れに叶っている。

 稼ぐのではなく次世代を応援する10年ほどを過ごすことができれば、私のビジネス人生の仕上げとしては御の字であろう。

 3月の母親の急逝は突然のことで悲しくはあったものの、親の介護のリスクが50%軽減したことは中長期的にみればありがたいことである。親の介護と子供の教育費でダブルバインドされる世代を押し出さざると得ない企業の責任は重い。

 人類の今後は、早ければ数百年、長くて数千年という説が有力であるが、新人としておよそ20万年、旧人からは700万年のヒト科の歴史は残りの時間の方がはるかに短い現実をどう捉えるか。

 シーラカンスやサメのように億年単位では永らえることができない種として、いかに美しく生きて終えるかが問われている。
 2015/06/28 18:58  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
リリースされた
 ワールド、希望退職500人募集との活字が踊った。内々では様々な動きがあったが、パブリック情報となったので触れてみることにする。

 小売(SPA)が軌道に乗り、卸ビジネスの業革が一段落した2002年にも実施しているが、その際に経営者の一人が“最初で最後”と口を滑らせてしまっている。その約束を破ってしまったことも重いが、積み増し条件も当時のおよそ半分に過ぎないようで、経営責任は極めて重いと言わざるを得ない。

 三枝匡氏の苦言、経営リテラシーの欠如と経営者人材の枯渇はとりわけアパレル業界において著しいものがある。年間30億円の人件費削減に繋がると報道されているが、会社は1年で回収できるが該当する社員の人生は1年では終わらない。諸先輩、同僚、後輩達の冷静かつ矜恃を伴うジャッジを祈るしかない。

 TSIホールディングスは既報の通りで、アダストリアでも気配満々である。アパレル業界がリセットタイムに突入した。

 何をどうリセットすればいいか、答えは見えているが実行が伴うかどうかの正念場に突入だ。
 2015/06/27 18:14  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
大和言葉はグッとくる
 三枝匡氏の生セミナーを受講してきた。そのためだけの東京日帰りとなってしまったが、七万円の投資は全く無駄にはならなかった。

 同氏の三部作「戦略プロフェッショナル」「経営パワーの危機」「V字回復経営」は必読書であるが、今回の日経ビジネスセミナーを契機に「日本の経営を創る」にまで至ることができたのは収穫であった。

 同書の対談相手の伊丹敬之は我が師加護野先生と同時代の研究者で、“オーバーエクステンション”“人本主義”などのコンセプトを世に問うた大学者のお一人である。加護野先生が、よく「伊丹が…」と敬愛を込めて呼び捨てにされていた講義が懐かしい。

 三枝氏が爆発的成長と変貌を遂げさせたミスミは、20年前の大学院時代に加護野先生が盛んにケースとして取り上げておられたので、ある種の感慨と感動をもってして本日のセミナーを聞き終えることができた。一流の経営学者の議論も素晴らしいが、なんといってもBCGの日本人社員第一号にして、再生のプロという職種のフロンティアであり続けた第一人者の議論にはド迫力があった。

 迫力の源泉は三つあって、第一にオリジナルで熟成してきたロジックである点だ。限られたスペースでその全容を示すことができないが(興味のある方は自分で勉強されたし)、手作り感満載のパワーポイントには圧倒された。

 第二は、大局と大義が押さえられている点だ。80年代に惹起した我が国経済のターニングポイントから、ポジティブなたられば議論を、EMS産業の台頭やデルコンピューターの創業を引き合いにして失われた20年を総論ではなく各論と負の必然性をもってしてぶった切る。その上で日本のエレクトロニクス産業が享受することができていたであろう数十兆円規模の機会ロスを鋭く指摘する。

 それだけであれば、元ボスコンのMBAで終わりかねないところであるが、氏のボキャブラリーが大和言葉に充ち満ちているのが第三の迫力なのだ。そもそも、セミナーのタイトルが「戦略と志」。そのほか、「思い入れ」「熱く語る」「痛みを感じる」「燃える集団」「近接感」「勝負感」「切迫感」と続く。武田信玄の軍旗が瞼に浮かんだのは私だけではなかっただろう。(大和言葉に関しては、「日本の大和言葉を美しく話す(高橋こうじ)」をご一読あれ)

 神戸大学MBAのコンセプトのひとつに大和言葉で経営を語るということがあるので、私のDNAは激しく反応した。
そして、氏の最大のメッセージは「おまえらジャパニーズビジネスマンとして自覚をもって、勉強して、しっかりせぇ!」と極めて明快なものである。重要なキーワードとして“単純化”を強調する氏であるが、経営リテラシーが足らんという単純なメッセージは多くの人々の急所に突き刺さるはずだ。

 繊維⇒白物家電⇒自動車⇒鉄鋼、特殊鋼⇒半導体とたどってきた歴史を認識できているか。日米で繰り広げられた戦いの舞台が日中に転移していることがわかっているか。決して現在の国政の動きは肯定することはできないが、戦後70年を経て平和ボケして勝つか負けるか喰うか喰われるかという競争感覚、国際感覚を見失ってしまっている我が国の国民とは言わないが、少なくともグローバルな戦いにさらされている業界に属するビジネスパーソンは猛省しなければならない。ミスミにおける事例も執筆中とのことなので、四部作の完を期待して待つことにする。

 さて、創って作って売るというスモールイズビューティフルの三枝理論を体現したはずのSPAビジネスモデルが大苦戦中である。一気通貫したのはオペレーショナルな表面的連鎖に過ぎず、要諦である「ものつくり」の機能をOEMならまだしもODMに売り渡してしまったのだから当然の帰結だ。セレクターとしてのMDしか居なくなってしまったアパレルの未来はない。クリエイティブとかクリエイターという言葉は誤解を招きかねないが、アパレル業界は創造性の回復が急務である。

 誤解とは無から有を生み出すというショートカット発想であり、私が言いたいのは地に足がついたフレームワークに基づいて組織および業界の共通言語を再発見しなければならないということであり、フレームワークに徹底的にこだわるのが三枝氏であるからである。
一気通貫したはずが、SCMが目指す中抜きではなく元抜きをしてしまった失われた10年は、
 
 失われた20年に足して30年すなわちワンジェネレーションのロスに相当する。これを回復するのは並大抵のことではないが、氏の真骨頂を確かめておきたい。「今ここに居てそこに居る人々の心に火がつかないとターンオーバーはおぼつかない」ということ。外部人材が火中の栗を拾いつつあるアパレル業界にとっては深考が必要なポイントだ。

 経営のプロフェッショナルとはかかるそこに居る人々であるが、それらの人々に炎と方法論を灯すことができるのは真のプロフェッショナルである。

 楠田丘、後藤俊雄、マーシャル・フィッシャーが大師匠であったが、三枝さんも加わった。
 2015/06/22 21:58  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
熱き商社マン
 熱き商社マンと熱き議論にて一席ご一緒した。もっともご縁を頂いている総合商社繊維カンパニーの勇者だ。

 ご縁は新入社員時代に始まる。入社三週間で配転になった社長室の室長が当該商社のOBであった。以来二年九ヶ月、当時はアパレル業界以外でも珍しかった法務専任担当者として鍛え上げられた。叱られない日は皆無で、褒められたことは三年弱の間に1〜2回しか記憶にない。私のビジネススキルとスタンスの基礎には当該商社のDNAが刻まれている。

 当時は一刻も早くこのオッサンの部下から逃れたいとの思いでいっぱいだったが、今となっては感謝しかない懐かしい日々だ。ワシに怒られたことを書き留めておけば新入社員に向けた本が書けるというフレーズは忘れられない。ご自身は数冊の著書を著し、今では森づくりのMさんとして小学校の教材にもなっている御仁である。本は書いていないが、当該商社の新入社員研修を八年間お世話させていただいてきた。少しはご恩を返すことができているのではないかと。

 さて、熱き議論とは“ものづくり”にまつわる。アパレルからものづくりの遺伝子が消えて久しいが、商社においても同様の現象が進行中とのこと。このままでは我が国の繊維産業が空洞化してしまうとの危機感で一致した。「創って、作って、売る」「スモールイズビューティフル」は三枝ロジックであるが、創って作って売るプロセスを一気通貫したはずのSPAがものづくり遺伝子を破壊したとは皮肉なるかな。

 組織が小さいことは美しいが、一社員が担当する仕事の範囲が小さくなりすぎてただのパーツ屋さんになってしまったのでは、これも本末転倒である。スモールイズビューティフルの意義は、フルセット自前で自己完結できるということだが、自前のファンクションが限定されていて自己不完結だとどうにもならない。

 光あるところに影はすきものだが、SPAの功罪についても深く考え直す必要がありそうだ。コンセプトと目指すべき原理はまったく間違っていなかった筈だ。何がどこでどうはき違えられたのかを明らかにしていきたいと考えている。

 ところで、いまの時代に敢えて商社マンと書いたことには訳がある。ビジネスパーソンという言い方には少し慣れてきたが、商社パーソンではあまりにもピンとこない。ウルトラパーソンだと怪獣に勝てる気がしないし、デビルパーソンだと戦う男の気がしない。ゼンダパーソンもパーパーソンもガッチャパーソンもあり得ない。

 マンには男という意味の他に、人/人間という意味もあるからいいではないか。大元帥と天皇の上位概念に大天皇があるように。パワハラだのコンプラだのに神経質になっている間に私たちは大切なものを置き去りにしてきた。

 もっと大らかに大目にみながら大股で堂々と歩みを重ねなければ。ファッションがすべてコモディティに成り下がってしまうと元も子もない。
 2015/06/18 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
サイクルタイムが違う
ひょんなことから本川達雄節の洗礼を受けた。

 およそ20年前の「ゾウの時間ネズミの時間」は衝撃的は議論だった。そして「生物学的文明論」「長生きが地球を滅ぼす」「生物多様性」「サンゴとサンゴ礁の話し」「おまけの人生」だ。
端的に言うと50歳を過ぎた私たちは生物学的には既に死んでいる。膨大な化石エネルギーを投入して食住環境を改善し、高度医療を発達させた人類は、本来の生物学的寿命をはるかに超えて生きながらえることになってしまった。

 高齢者の介護より次世代の次世代育てに貢献すべきとの過激な主張には賛否両論あろうが、余生を次世代の支援と極力エネルギーを消費しない時間に捧げるという思想には共感させられた。お忙しい方は最新の生物学的文明論を読めば、氏の主張は大方理解することができる。

 さて、サイクルタイムとは生産現場における時間間隔を表す経営用語であるが、もう少し広い意味で私たちが認識する時間間隔と定義して以下議論を進める。

 早稲田大学の井上達彦教授が表した「情報技術と事業システムの進化」では、システム時間という概念でサイクルタイムの革新がSPAビジネスモデルのイノベーションの要諦であることを看破した。同書は彼の博士論文がベースになっており、当該論文はワールドのケースが重要なコンテンツになっている。同時期に大学院で机を並べていた井上氏とは、アパレル業界で起こりつつあるSPA化について熱い議論を交わした。

 一条和生氏の「企業変革のプロフェッショナル」でもワールドのケースは言及されているが、ビジネスシステム論としては井上氏著作がお勧めだ。他にも、「UNTITLED」「新業態ブランドHusHusHの誕生」「卸改革小史」と大学教授によるケーススタディは豊富にある。非公開化に関する論考やケースも少なくない。おっと、脱線しかけるところだった。

 私たち人間にはビジネスパーソンである以前に、生物としてのサイクルタイムが備わっている。15億回の鼓動で終了する人生(これだと30年で縄文弥生時代の寿になり、現代ではその三倍近い)を、24時間、一週間、一ヶ月、一年というサイクルタイムで過ごしている。

 一方、それぞれの事業やその主体である企業が有するサイクルタイムは多様かつ固有のもので、必ずしも私たち人間のサイクルタイムと同期はしていない。そこが大いなるジレンマで、ビジネスのサイクルタイムが速すぎると人間の側がついて行けず、またその逆もしかりだ。

 起業寿命30年説を説いたのは1983年の日経ビジネスだが、SPAビジネスモデルもそろそろ寿命に差し掛かっているようだ。業界紙でも52週のMDの終焉などど議論されているが、ロジックが色あせたわけでもなく、何か他のものに取って代わられるわけでもないので勘違いしないように。

 情報システムをベースにしたロジックに浮かれているうちに、大切なものを見失ってしまっただけに過ぎないので。大切なものとは、気持ちを入れていいものをちゃんと創るということ。そして、人間のサイクルタイムを遙かに超えて早く回しすぎたビジネスのサイクルタイムを人間に優しいレベルに戻すこと。

 ワールド、TSI、アダストリアが大規模なリストラクチャリングに直面しているが、外科手術だけでは一時的緊急避難的回復しか望めない。奥行きのある内科療法の併用が期待される。
 2015/06/15 08:07  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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