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慈円との対話
 閑話休題的に日本の古典に振ってみた。枕草子、徒然草、方丈記の三部作も控えているが、慈円の愚管抄に変化球を投げてみた。

 週末の新潟への半公半私の出張の行き帰りと本日の名古屋出張の帰りで読み切ることができた。

 曰く、“人材なき世の末”とのこと。官が人を求めるのではなく人が官を求めるがのごとく、大納言、中納言その他末端に至るまで官職の大安売りを嘆いている慈円の嘆かわしい苦げな表情が目に浮かんだ。彼が世も末と嘆いてから1000年の時が経過したが、同様の嘆きがその間に幾度繰り返されたであろうか。

 “今時の若い者は…”のフレーズは、確認されているだけでも2000年以上前のプラトンの「国家」にも記述されているが、都市伝説レベルでは5000年を隔てた古代エジプトの遺跡の落書きにも見られるという。

 私たち人類はかくも長きにわたって、いったい何を繰り返しながら何を進化させてきたのだろうか。変わらないものと変わるものを見極めて組み合わせることはMDの極意のひとつであるが、それらがテレコもしくは望ましくない姿で固定化したときに私たちの進化は停止もしくは退化に転じることになる。

 慈円は最後の自己問答のパートで、リストラチャリングの必要性と要諦を語っている。そうか!一千年も前からの普遍的課題なのかということがわかった瞬間に距離感が一気に縮まった。その昔、皇統においても摂政においても世襲が基本であったが、器量として満たさざる人材は自然もしくは人為的に排除するメカニズムが働いていたという。後者は権力者側が権威を縦に強権を発動することを、前者は当事者側が自発的に辞退することを指すが、権力者側が腰が引けてしまう現象と当事者側が厚顔無恥で居座ったり吹聴する事例が少なからず見受けられる今の状況は慈円同様嘆かわしい次第だ。

 いろんな文脈で「ニセ者が闊歩している」と私が表現するのは、そういうコンテクストの元、自らをわきまえる生き様を外から強制される前にわきまえた人生のほうが美しくかつ安寧ですよというメッセージである。

 初期の諸天皇が100歳を超えて存命したという記述には都市伝説を超えて神話的記述を感じざるを得ない第一巻と第二巻ではあったが、全体としては1000年を超えてある種の対話が成立したという清涼感の残る古典であった。

 変えることのできない大いなる自然の流れを、慈円の言葉を借りれば“あさましさ”という個別恣意的なバイアスによって曲げて曲げられて右往左往しているのが私たちの人生であるということができる。

 決して抗うことができない大統一理論は「流れとかたち」にある。エイドリアン・ベジャンの同名の著書は、私の歴代ベスト3に入る名著であるとともに目から鱗書籍であった。カミングスーンとして、今しばらく寝かせていただくこととする。

 かかる名著を拙作として短文でご披露するにも、巨大なエネルギーと環境的諸条件が必要であることをご理解いただけるとありがたい次第である。

 名古屋のメーカーさんとは、濃くて深いワークショップが展開している。
 2014/09/30 22:42  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
半世紀を経て
ダイエーの名前が消える。創業から半世紀を経て…。

 昭和の高度成長期の寵児だったダイエー。昭和40年代の母との会話は、「お尻はダイエーに行っても売ってないよ!」だった。

 野外でのやんちゃな遊びが主流だった当時、不注意から怪我をして帰ってきた小学低学年だった私への説教だ。つまり、さすがに体の部位は販売していないが、大抵のものはダイエーに行けば手に入る、しかも廉価でという認識が一般消費者にいかに浸透していたかうかがい知ることができよう。

 子育て時代にはディスカウント業態のトポスにお世話になった。ハンディカムやミノルタの一丸レフを最安値で手に入れようと通い詰めた。社会人になってからは、ポーアイに出現したバンドールに悩まされたり、助けられたり。悩まされたのは、メンズ系の尖ったブランド商品の恒常的ディスカウント売り場。商品の流通ルートの特定に四苦八苦させられた。

 助けられたのは、結構直後のお金がないときに月次記念日のちょっとしたグッズを買うにはうってつけの品揃えだったこと。

 企業寿命30年説には、メカニズムとしての理もあり経験則としての実例も豊富だ。
30年を超えて50年を超えたアパレルは多数あるが、メカニズムとしての次の危機は60年あたりに訪れる。30年の倍数になるのはジェネレーションが大きな要素として関わっているからだ。

 60年の節目を超えることができない組織が50年前後を境に消え去っていく。100年企業を満たすだけの正のスパイラルになっているかどうか、足下の点検を怠ってはならない。ただしこの足下を照らす灯りは、3年や5年の中期スパン、ましてや今期や四半期の業績に杞憂するスタンスからは決して見えてこない。

 今期の積み上げであっという間に10年、20年は経過してしまう。自身が50年以上生きてきて、ようやく時間のいたずら度合いがわかるようになってきた。
 2014/09/25 07:54  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
アパレルのMECE
 ロジカルシンキングの議論をしていて、大半の受講生に共通する課題の一つにMECEがある。切り口を見つけるのが難しい、どんな場合にどのMECEが適切なのかを見極められない…等々。

 ファッションは、デザイン、素材、カラーに分解して、デザインはさらにシルエットとディテールに分解される。VP→PP→IP、RMFによる既存顧客のセグメンテーションなどもファッションビジネスにおけるMECEの適用例だ。

 ところで、企業活動をコンテンツとプロセスに分解して、前者を「商売」に、後者を「政策」と読み替えてみる。商売はモノ作りと販売活動に、政策は政治活動と財務活動に分解できる。

 私たちの本分はコンテンツであるモノ作りと販売に専念することに疑う余地はないが、そうも言ってはいられないもどかしい場面も少なくない。財務活動であるMBOの余波に喘ぐ会社あり、同じく経営統合に忙しいグループあり。

 財務活動は資本政策と言い換えることもできるが、その厄介な点は次の二点だ。第一は創業者やオーナーの個人的資本政策が絡んでいる可能性が高いこと、第二は、事前/同時/事後的に人的政治活動を伴うことが大いに考えられることだ。

 20年を要して各リーダー企業が牽引し、業界をあげて構築してきた平成後期のSPAビジネスモデルが大きな転換期を迎えている今、我々に政策に振り回されている暇はない。今こそ真摯に商売に向き合って、モノ作りへの回帰と販売活動のクリーンアップに全力を尽くさなければんならない。

 劇的な旋回や成長を遂げることができた企業が商売に集中できなくなるのは必然的宿命なのかもしれない。企業寿命30年説はそのようなモーメントの表象だ。自然選択においては、環境が客観的に取捨選択するというよりも、当事者が主観的に取捨選択される自分の運命を選択してしまっているのではないか。

 そこには「流れ」という大きなメカニズムと「デザイン」という必然的結実に向かう力が働いている。私たちはもっとも抵抗がなくスムースな流れを形成する秩序の中で活かされている。まだ読み切っていないのでこれ以上の言及はしないが、この「流れ」と「デザイン」いうキーワードは心に留めておいてもらいたい。血管も神経回路も河川も同じようなデザインになるのはそういうことだ。

 マーケットと消費者は私たちの商売を流れとして制御する。社員と取引先は私たちの政策を流れとして制御する。その結果結実するデザインは美しくなければ存続は許されない。

 ファンドの動きに翻弄されたあげく、いたく傷心しているであろう友人の心持ちはいかばかりかと憂慮しながら…。
 2014/09/18 08:14  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
やっぱ戻ってきた
プハーッという印象の週末三連休であった。

 今時の大学生は、8月頭までテストがあって9月いっぱいが夏休みであることから長男および次男が8月後半から今にかけて来たり帰ったりと。お陰様で仕事も忙しくて、8月9月はマンスリー他で三回ゴルフに行った以外は休みなしで走らざるを得なかった。この三連休もデリバリー一日と内勤二日で仕事三昧で終わってしまった。

 長男がNECのPCを引き取ると言うので、新生バイオ社のVAIO PRO11に回帰して移行におよそ半日を費やす羽目に陥ってしまったのもこの週末であった。VAIO Xはモバイルの至極の名機で、CPUがATOMであることを除いては申し分のない相棒だった。およそ7年つきあって、SONYがVAIO事業を手放すと聞いて検討範疇から外してNECに浮気したのがこの5月のこと。

 それでもやっぱりユーザーインターフェースの無機質感と、キータッチのぺらぺら感に耐えることができずVAIOに戻ってしまった。11インチでのコアi7搭載にはやはり無理があり、書き込みの通りファンの騒音には辟易するが、キータッチと手のひらタッチの感触は従来の一体感が戻ってきたと満足している。あとは左手のパームに優しい形状さえあれば言うことはないが、そこまで望むべくもないだろうと満足して一日半が経過した。

 新生なったiPhoneも年内には買い換える可能性が大であるが、インターフェースのアナログ感はアップルとバイオには相通じるものがあるというのが私の印象だ。

 アパレル業界において、売れ筋と機能性の無機質な充足と収まりのよい原価率を探求した結果が今の店頭であるならば、アップルとバイオに学ぶ点は少なからずあると思われる。
ハイタッチという言葉はほぼ死語であるが、人は人として暖かみのあるプラスアルファの接触価値を大切にするものである。ハイタッチ商品の権化であり原点であるはずの服飾がそのことを忘れてしまっては元も子もない。

 ここはひとつ、利益や原価は度外視して私たちが取り扱っているアイテムの原点に立ち返ってはどうだろうか?
 2014/09/15 17:51  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
タッチポイントのなせる技
いやぁ、さすがに始めての経験だった。

 とある通信系の企業でライン長向け研修をこの8月から来年の2月まで全6回受け持つことになっている。その二回目がこの金曜日だったのだが終了後に受講生のお一人からご挨拶を頂戴して驚いた。何と、前職でいろんな場面をご一緒させていただいたITKMO氏の奥方であった。研修においてはその文脈に応じて前職時代のエピソードやアパレル業界の事例を適宜取り入れるのだが、適切な引用と適切な表現であったかどうかちょっとヒヤッとさせられた。

 とてもチャーミングな方で、講義中も発言を引用させていただいたりしたがまさか彼のパートナーだったとは。そういえば何となくお顔の表情も当人を偲ばせるものがあり、夫婦は似てくるとは言うが、やっぱりそうなのだろうか。集合研修の講師の登壇回数も400回を超えて、延べの受講生も1万人を越えているので、それだけのタッチポイントをこなせば確率的には色んなことが起こりうる。

 店頭における商品の売り上げも顧客とのタッチポイントの多寡のなせる技である。来店顧客数の多い店舗では品番の横幅は少なくても十分な売上を確保することができる。その一方で、数少ない来店数に対しては商品バリエーションの豊富さで対抗しない限り売上は望むべくもない。

 売上と在庫ロスのバランスを考えると大矛盾を抱えているのが有店舗ビジネスの宿命だ。それをいとも簡単に乗り越えたネット販売ではあるが、有店舗ならではの顧客タッチポイントの演出とO20を掛け声だけに終わらせない気概と智恵が求められている。商品の横幅(品番およびSKUバリエーション)と売場面積と来店顧客数の関数を解くことがMDとDBは要請されている。やっぱり数学頭がないとMDは勤まらない。

 気鋭のブランドのMD、DBそしえ営業本部スタッフとの課外授業も楽しかった。死に筋を銭形警部に喩えたところ、皆さんの心に響いたようである。ルパンを逮捕したことはほとんど皆無、すなわち検挙率はほぼゼロにもかかわらず番組とストーリーにおける存在意義は絶大であることから、それがファッションにおける死に筋だという議論。消化率は低いが存在意義が捨てがたい品番はある筈というお話し。

 また、ある臨界点(店舗数と売上規模)を越えたブランドは、むしろ商品バリエーションにおいて極度のメリハリをつけた方が全体売上は向上する可能性が高いという逆説。ブランドが大きくなるとマスに向けて平均的標準的MDを目指すことになりがちであるが、敢えて尖って角を立てたMDを断行した方が結果的に顧客タッチポイントの最大化につながって売上向上に貢献するという議論にMDのOKMR氏はいたく反応していた。

 帰りの丸の内線が一緒なので、とりあえず大手町の改札は通ったものの、ふと立ち止まってそして振り返って、やっぱ有楽町まで歩きます、考えながら歩きますと彼は去っていった。
難しい局面を迎えたブランドの重責を背負ってはいるが、横でパートナーシップを発揮してくれている頼もしいDBのKMSK女子の存在もあるので心配はしていない。

 営業本部のST氏の次なるステージも演出しなければならない。余暇時間的にも気候的にも、私にとって今年の夏はなかった。トマス・モアの“ユートピア”における背骨は、無および皆無であった。
 2014/09/06 17:08  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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