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乾ききらない雑巾
トヨタの底力は計り知れない。

 1000万台を超える規模の拡大と円安もさることながら、構造改革によるコスト削減をいとも平然と実現している。

 KAIZENはいまや国際的な共通語であるが、30年近く前にNPS(ニュー・プロダクション・システム)に取り組んでいる際に、トヨタの乾ききった雑巾をさらにギュッと絞って水を絞り出す力には驚愕せざるを得ないという印象があった。

 それから二十数余年、リーマンショック直後は流石のトヨタも‥と思われたが、その実力たるや本物中の本物であった。通常の原価削減だけに留まらず、ラインの長さや配置の見直しなどの構造改革にも手を付けたと報道された。

 さて、アパレル業界としては何をどう考えるべきか。

 SPAが一定の成功を担保し始めておよそ20年になるが、勝ち続ける企業は出てきていない。前職の会社も、販売系の一気通貫は比較的早期に確立したが、生産系のそれを構築するには苦労し未だ完成の域には達していない。

 アパレルは直営工場を配するポジション(アッパー×エレガンスとランファン)にいる企業が一部あるが、大半はファブレス方式で協力工場を頼りにするか商社に依存しているのが実態だ。その体制ではアウトソーシングと工賃の安い海外へという戦略的枠組によるフォーメーションシフトは可能だが、製造現場における戦術および戦闘的改善や改革は他人の手にゆだねられることになる。

 その他人は、ある程度は頑張るが最終的にはアパレルに価格転嫁してしまえばそれでおしまいなので血のにじむような努力と工夫をするには至らない。アパレルとのインターフェースでは、芸のない原価率低減交渉のみに終始して、現場をどう構造的に変えていくかなどの激論が交わされることは絶対にあり得ない。

 ZARAのビジネスモデルの強みも直営工場による自前生産によるところが大である。自分事として足元で智慧と汗を絞り切った改善や改革がプロトタイプとなり、海外の直営工場や協力工場もそれを雛型に進化し続けることが可能となる。

 小売型と称して川上の諸作業を商社に丸投げしたり、単に人件費が安い国を目指して転々としているだけでは、その場しのぎの遊牧的焼畑ビジネスをしているだけで終わる。川上を自責として取り込まない限り真のSPAには至らない。利は元にありとは言ったもので、相対的に¥の絶対値が小さい川上での改善効果は大きなレバレッジとして効いてくる。

 4000万枚を商いしているアパレルが一枚当たり10円のコスト改善に成功すればその効果は4億円だ。また、100円の工賃改善は上代にして300円〜500円のインパクトがある。時給500円の世界で100円の改善は20%の工程改善に過ぎない。

 現場的には全くできない話ではないが、ビジネススキーム的にそれができない状態に自らを追い込んでしまっているのは誰あろうSPA企業自身なのだ。
 2014/01/31 08:29  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
空いてしまった
年明け、ちょっと間が空いてしまった。

 読書録の続きで、歴史と哲学と数字にまつわる分野へと展開しようと思ったりもしていたが、年末年始はどうもキーを軽快にたたく気が起こらず‥。

 そうこうしているうちに第二週になって風邪を患ってしまい、二週間ほど集中して文章を作る気力が生まれないまま気が付けば一月も下旬に突入してしまった。

 いまさらなのでそれぞれの分野の個書を紹介することは別に機会に譲るとして、それぞれでケアすべき事柄だけ指摘させてもらうとしよう。

 歴史については幕末から明治、そしれ昭和史をしっかりと認識しなければならない。古ければ古いほど記録が曖昧で、新しければ新しいほど重要書類が開示されていないことが歴史のジレンマではあるが、何が事実かもさることながらどのような史観をもつかは極めて重要なことである。特に米国や中国との歴史やそれに付随する韓国や琉球との関わり合いに一定の観点をもつことは、現代的諸問題を理解するにあたり不可欠の教養となる。

 哲学は全体を俯瞰しただけで各論はこれからだが、人類二千数百年の思惟の蓄積を知ることは脳ミソの基本サプリだと言えよう。

 また、数字に関しては統計的議論や確率論的ものの見方は、ビジネスの様々な現象の理解を助けてくれる。ありえないことと必然性の間に蓋然性があり、蓋然性を顕在化させるのは“たまたま”に過ぎないと考えると、実力とか成果とは一体何なのか?という命題に行きつく。答はないものの、ないからこそ追いかけ続ける価値があるテーマに行きつく。

 宇宙論の続きとして年明けに読んだ「宇宙が始まる前には何があったのか?」(ローレンス・クラウス)からの衝撃は、加速膨張する宇宙でもなくマルチバースでもなく、私たちが一瞬のうたかたの中にあって、そのお陰で宇宙を認識して理解することができているという事実であった。

 宇宙の年齢は137億2千万歳という有効桁数4桁まで見えてきたことも凄いが、これから数兆年続くであろう宇宙の中でたまたま観測可能な数千億年の中に私たちは生きているそうな。2兆年後の科学者たちは、いかに文明の利器が進化していようとも大空に一片の銀河を見ることも観測することもかなわない、そんな宇宙になるらしい。

 私たちは不可逆的進化の中にいる訳でもなく、人類が何か最高の到達点であろうはずもなく、ほんの一瞬水面に浮かんだ泡の中で再現不能なかけがえのない時を一度だけ過ごす蜉蝣なんだろうなと。

 会社も10期目に入ってちょっとした節目になるので、考えること多々ありだ。追々お話しすることができればと思っている。

 宇宙論の仕上げにと思って手にとったサイモン・シンの「宇宙創成」に触発されて、彼の「フェルマーの最終定理」「暗号解読」「代替医療解剖」と間に読む本が挿入されてしまった。宇宙論であと数冊バックログがあるが、それらが一段落したら哲学の各論に入っていく予定だ。
 2014/01/21 16:09  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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