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どちらが上位概念?
古典的物理学と天文学は別物のように見えていた。

 天体の動きはニュートン力学で説明できるという意味では天文学は観測を通じて物理学を手段として様々な天文事象を説明してきたと言うこともできる。

 ところが、量子力学(恐ろしい物理:注(コリン・ブルースによる表現))が見えてくると、「物理学∋天文学」の関係になるようにも思えてくる。それらを支える土台となる学問は当然ながら数学である。

 アパレル業界では、SPA化を通じてMDの守備範囲と位置付けが大きく変化し始めて久しい。商品企画のクリエイティブな側面に軸足を置いて売れ筋を追いかける狭義のMDから、ファッションビジネスの全てを司る広義かつ再上位概念としてのポジションを獲得してきた。

 ところが理念型としてのMDが未確立であったり、現実の組織や役割分担が追いついていない事例はまだまだ多い。MDとDBが別組織で並列に動いていたり、営業という言葉が残っているばかりか中途半端に数字や商品を動かす営業担当者とMDが併存する企業も少なくない。

 今のところは「MD∋VMD∋DB」で、営業ではなくSV(スーパーバイザー)が店舗を管理し、店舗開発が対ディベロッパー業務を担当する体制が正解とされるが、それぞれの業務が進化していくとそれは不変の関係性ではなくなっていく。

 MDを天文学だとすれば、古典的物理学がVMDやDBに相当する。VMDは静止画としてのDBは動画としての物理を担当する。もしここに量子力学に相当する恐ろしいVMDやDB(便宜上"超MD"と呼ぶことにする)が見えてきたら関係性は逆転する。超MD∋MDという図式だ。

 超MDは私にとっても未だモヤっと概念に過ぎないが、数学に相当するような、手段としても哲学としても基本になる分野がロジカルシンキングであることに変わりはない。

 ロジカルシンキング=分類学+論理学+修辞学であることから、ファッション業界の現場諸氏はそれらの基礎学問の研鑚に励むことが求められる。一方で経営者諸氏に求められるのは、自社のバリューチェーンの齟齬を解消して自社を少なくとも現時点で理念型として見えている組織体制に一歩でも近づけることだ。

 さらには超MDって何なの?その暁にはどうなるの?を考え尽くすことがアパレル業界の未来に繋がる。
 2013/05/30 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
魂の使い分け
政治家はもとより、私たちは社会や家庭において正しく複数の魂を使い分けなければ生きていく資格はない。

 沖縄では一人の人間に六つの魂があるという。それぞれの魂が個性と生命をもっていて、人は複数の魂に従って複数の人生を送ることができる。多元性が保証されているとともに、真理も必ずしも一つではないということになる。(詳しくは、佐藤優「母なる海から日本を読み解く(新潮文庫版)」P77)

 なんとラオスでは32の魂があり、沖縄ではマブイ(魂)を落としてしまったときには、それを拾いにいったり呼び戻す必要があるとされている。歴史的事実は一つであるが、それをどう認識してどう評価してどう表現するかという意味での真理は複数ありえる。

 人間としてのそれ、日本人としてのそれ、日本人の中でもいつの時代にどのような思想と立場で生きているかによるそれ、と真理は六つどころかそれこそ32あっても不思議ではない。持論だの撤回だの騒がしい政治家がいらっしゃるが、唯一のマブイに呪縛されていてそこから逃れられない御仁なのだろうか。

 かく言う私も、意思を持って適性に使い分けてきたとは言えないものの複数の魂に心あたりは大いにある。

 校則や部活のルールを拠り所にクラスやチームを引っ張った小さな箱庭の中での魂。
 少し外に目を向けてやんちゃをしてみた魂。
 目標を見出すことができず、その日暮らしを繰り返していた大学前半の魂。
 米国でのホームステイを契機に豪州でのワーホリに繋がる海外に視野が開けた魂。
 モノ作りというキーワードで期待に胸を膨らませた新入社員魂。
 法務の仕事を通じて会社の土台作りをした裏方魂。
 SPAへのイノベーションに燃えたチャレンジ魂。
 MBAを通じて体得した生涯学習魂。

 とまあ中学校あたりから90年代半ばまででもこれくらいの魂があり得るので、その後の20年と今後の20年を考えると32の魂も十分あり得る勘定になる。32年連れ添ってきた嫁はんからは、「あなたには何人も別人が居て、学生時代のあの別人は二度と返って来ない」とよく言われる。彼女も魂の違いはよく見えているのだろう。

 原因としての立場と意思という主観的立ち位置と目指すところと、結果としての行為類型が厳密に問われる世界が法律だ。

 行政手続きである"許可"と"認可"と"特許"と"届け出"を正しく理解できているだろうか。"刑事責任"と"民事責任"の違いは?"正当防衛"と"緊急避難"の区別はつく?"無過失"と"過失"と"重過失"はどう違うのか?

 主観的立ち位置は外から見ることはできないので、証拠や手続きや目指すところと合わせて本人の発言から理解するしかない。一方で行為類型は客観的に検証可能な側面もあるが、歴史や地理的背景など異なる価値観を有する他者にとって主観的にどのような行為類型に映るのかを完全に見通すことが発言者本人にとって困難なところにミソがある。

 私たちは何某かの魂に基づいて発言や行動を行うが、それが周囲にどう伝わって、どう理解されるかは別問題として存在する。社会における合意とか理解、共感とは、異なる魂同士がその宿り主の外で融和して、いわば社会的魂として昇華した個人個人の魂の結晶のようなものではないだろうか。

 融和できなければ衝突して崩壊するしかない。融和の結晶を保つことは、エントロピー増大の法則に反する多大な力を必要だ。宇宙が全宇宙の質量をもってそれらの重力をしてエントロピー増大と戦っているように、私たち人間には全人類の胆力をもってしてエントロピーと戦い続けなければ社会的安定を保つことはできない。

 してみると人生とは魂の使い分けを通じたエントロピー増大に抗する戦いの旅ということか。そこそこ道は険しいし、いいこと、楽なことばかりではない魂の使い分け。それにピリオドを打ち、霊に立ち帰るのが死だとしたら、魂の使い分けという試練から解放されて誰からも何も言われなくても済む本来の自分に戻ることができる安息への入り口と言うこともできる。

 別の機会に譲るが、霊と魂の議論も奥が深い。生きているうちは複数の魂と真摯に向き合って正義の戦いを続けていくしかない。霊にもどってしまえばエントロピーは最大化するので、戦いはそれでおしまい、晴れてジ・エンドとなる。
 2013/05/28 08:44  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
三層のエリート
佐藤優氏がその著書にたびたび引用しているソ連崩壊当時の「ロシアにおける三つのカテゴリーのエリート」は普遍的に応用可能なフレームワークだ。

 その第一は、ソ連共産主義体制のエリートで、ソ連システムを動かすノウハウはあるし人脈も豊富である一方、新しい時代の変化に対応する意欲、能力、体力に限界がある。これらの人々は守旧派とも呼ばれる。

 第二は、偶然のエリートで、民主改革運動との関わりやエリツィンとの個人的関係を土台に、突然想定外の高い地位を占めるに至った人々を指す。巨大国家を動かすノウハウはもっておらず、突然偶然に手に入れた特権を手放したくない想いが強く、閉鎖的で縁故主義などの腐敗体質をもつ。

 第三は、未来のエリートで、当時20歳代〜30歳代前半の若者だ。これから外国のノウハウを吸収して10年後(すなわちちょうど今時)のロシアを本格的に支えていく。ロシアの将来は、この第三のエリートを育成できるか否かにかかっている。

 ただし、第三のエリートたちが子羊であるのに対し、第一と第二のエリートは狼なので、第三のエリート育成にばかり重点が置いて第一と第二のエリートを締めあげすぎると狼たちが子羊を食べてしまう。時間の経過とともに狼は老いて死んでいくので、それまでの間、狼たちが腹をすかせないで子羊たちが安心して育っていく環境をつくることが当時のエリツィン政権の課題だった。

 ここまでは氏の著書からの引用であるが、私の身の回りで実際に起こった事象に当てはめてみると次のようになる。

 卸から小売りへとビジネスモデルのイノベーションの真っただ中の企業では、商品系、営業系を問わず卸ビジネスの功労者が第一のエリートとして君臨していた。ソ連体制のような巨大システムではないが、メーカーさん、専門店さんとの人的関係性の構築と維持のノウハウには長けていた。そこに颯爽と現れたのがSPAの成功モデルとそれを牽引した新リーダーだ。

 成功事業と新リーダーの周りには第二のエリートが大勢誕生することになる。これら第一のエリートと第二のエリートの特徴はロシアのそれらと全く同じである。やがて第一のエリートたちは老いて自然に退いていき、そして誰もいなくなった。人的ネットワークが競争優位性の源泉になる時代から、システム的メカニズムの競争原理にアパレル業界が突入していることに、気付かないのか認めたくないのか、多くの元第一のエリートたちがお金を食い潰し、身を持ち崩す姿を目の当たりにしてきた。歴史とは非情なものである。

 ところが、第二のエリートたちが"ワシがワシが"のおしくらまんじゅうと足の引っ張り合いを続けているうちに、プロセスとしてはは突然偶然の一面もあったにせよ、しっかりと実力を伴う第二のエリートたちの大半が新天地に散り、気が付けば第三のエリートの育成がおざなりになってしまっていた。この仕事は10年がかりの大仕事なので、失われた時間と機会を取り戻すことは簡単なことではない。

 とまあ、このようなストーリーはアパレルに限らずいろんな会社のいろんな時代にゴロゴロところがっているだろうことは、読者の皆さんも容易に想像がつきますよね。

 また、会社という巨大システムを動かす知識とノウハウと会社を牽引する商品やブランドを制御する知識とノウハウは全く別物だと考える必要もある。シャープやソニー、パナソニックや任天堂のトップたちの苦悩を見ているとそのことがよくわかる。経営者とは、事業とは全く別次元の専門職なのだ。

 今を動かしている巨大システムとは全くことなる原理で動いているであろう将来の巨大システムを制御することができるような人材を、10年以上かけて育成することは至難の業であるが、それに取り組んで結果を出さない限り企業にも社会にも将来はない。

 ポジティブオプションとして、それを確実に手に掴みとって正しくハンドリングすることは神業に近いと思われるが、三層のエリートの功罪をよく読み込んでネガティブオプションとして反面教師的にNG集として応用することはそう難しいことではない筈だ。

 イノベーションや世代交代をお考えの経営者諸氏には、現在および近未来の三層構造を一段ずらしてトータル四階層で人材を定義して、具体的名前をあてはめてみることをお勧めする。

 NGをひとつひとつ丹念に潰しながら、神業に近い第三のエリート育成にかなりのエネルギーを注ぎ込んで取り組まれたい。前回ご紹介したお宝人材は、間違いなくこの第三のエリートである。
 2013/05/15 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
お宝遭遇
業界の宝といってもいいほどの人材に遭遇している。

 大阪の中堅アパレルで活躍中のMDで、30代後半の人材だ。彼が所属する会社のトップが描く1000億構想をお手伝いさせていただく過程での出会いだった。

 仕事が好き、会社が好き、ブランドが好き。負けず嫌いだが、その矛先は社内のミクロな人間関係に向いているのではなく、業界におけるコンペティターにターゲティングされている。
現時点では6倍ほどの開きがある競合ブランドを抜き去ると活字で宣言しているところも頼もしい限りだ。

 これまで数百名のMD、DB、事業責任者を見てきたが、彼は間違いなくトップ5%に入る逸材だ。放っておいても彼が引っ張るブランドは大きく成長するだろうし、会社も堅調に成長していくだろう。

 とはいえ、ご縁を頂戴した以上、三つのことを担保すべく気合が入る。

  その一:確実性をより高いものにする。
  その二:スピードを限りなく最大化する。
  その三:人材および組織的横展開を促進させる。

 このような次世代が控えている業界に明るさを感じるとともに、好きでもないフィールドで内向きの論理で四苦八苦している諸氏に猛省を求める次第である。
 2013/05/10 07:01  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
umie
umieはやはり、グランフロント大阪にぼろ負けと感じた。

 そもそも、大阪府の人口が886万人に対して、兵庫県は557万人でおおよそ63%となる。
大阪市と神戸市を比較すると、267万人と154万人で、比率は約58%である。開店後の日数や、曜日の違いも差し引く必要があるが、勢いの違いは倍〜三倍はあるというのが主観的印象だ。

 ハーバーランドは、開業以来鬼門となっているもとの西武百貨店、前のハーバーサーカスが廃墟状態のままである。ダイエーが音を上げて、阪急百貨店が耐えられなくなっての今回の大改装だが、先行きは楽観できない。

 神戸は東西の交通しか担保されていないハンディキャップがある。南は海で魚しか住んでおらず、北は山で人は少し居るが公共交通機関のアクセスは欠しい。加えて、灘と東灘の人々はJR,阪急、阪神を駆使して30分もかからず大阪(梅田)にアクセスできてしまう。明石や、加古川、姫路から人を呼ぶにも限界がある。すなわち、地政学的に限界を有するマーケットエリアだと自覚しなければ大きな間違いを犯しかねない。

 神戸以西の人々にとっては、真新しかったのかH&Mの異様な混雑には目が点になった。モノや空気を読む神戸人の目利き力はどこにいってしまったのか?神戸とは歴史と文化に裏付けられた都市ではなかったのか?

 オールドネイビーが関西初上陸だったが、時すでに遅し。94年に米国で見たウッドベリーコモンに驚愕し、バナリパのリアルクローズに一目ぼれし、オールドネイビーの等身大さに、これが日本に来たらブレイクするだろうなと思ってからおよそ20年が経過して。ギャップがベネトン化して、オールドネイビーもなんちゃって状態で、バナリパがイケてない現状はFRをはじめ他のアパレルにとっては"あっぱれ"であろうが、消費者にとっては残念至極ということになる。

 かつて、大物デザイナーのT氏からクリエイティブは地理軸と歴史軸で動いていると教わったが、マーケットも地理軸と歴史軸、すなわち地政学的な観点と時間的ちょっとした後先の機微で動いていることを感じさせられたumie市場調査であった。

 ちなみに、20年前に買ってきたガキ用のオールドネイビーのサンダルと手袋は藻屑と消えているが、バナリパのフリースベストは嫁はんがお下がりとして現役で着用している。そのようなモノを作っていたんだよね、当時のバナリパは。

 キーワードは、"地政学的マーケティング"だ。
 2013/05/07 20:21  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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