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真の教養とは
ハーバードビジネスレビューの付録“歴学”は毎回楽しみにしている冊子です。

 そこで目にして即買った本が、谷光太郎氏の「敗北の理由」−日本軍エリートはなぜ迷走したか−です。

 目的の本を買う際に、最近やっていることは、レビューを参照しながら同時併売本を必ず1〜2冊余分に注文することです。今回は、別宮暖郎氏の“旅順攻防戦の真実”と山本七平氏の“日本はなぜ敗れるのか”でした。

 旅順…は、司馬遼太郎氏の日本軍感や乃木希典氏に対するそれを痛烈に批判する論調で史実にできるだけ忠実に迫ろうとするものでしたが、ブログのネタにとは思いませんでした。

 日本はなぜ…を読破し、本日の東京への移動時に敗北の…を読み始めたところでちょっと書きたくなってきました。

 山本七平氏はベストセラー“日本人とユダヤ人”で有名で、日本文化論の基底として「山本学」と称される御仁です。当著において、深く考えねばならない様々な議論が網羅されていましたので、一部ご紹介します。

 林屋辰三郎氏が75年2月号の野生時代(角川書店)で記されていた一文の引用です。“歴史資料は「現地性」と「同時性」という二つの基準に照らされなければならない…”これは、6月21日にアップした“この世には「時間軸」と「地理軸」しかない”に通じます。やはりこの二つは私たちを取り巻く普遍的軸に違いありません。

 また、山本氏は75年の高度成長期の終盤(戦後30年)にあって次のように憂いておられます。“外国の青写真で再編成された組織と技術のもとで、日本の経済力は無敵であると本気で人々は信じていた…(中略)公害すら発生し得なくなる経済的破綻で日本が敗滅しうると考えている人はいないようである。”

 また、“日本はいかに生くべきか。日本と言う基盤の上に、いかなる技術を打ち立て、それを基にしてどのように生きていくべきか、その発想の基礎は「思想」である”と。

 さらに、「虜人日記」の著者小松真一氏の言葉として、“日本人の特徴として「教育があって教養がない」”を引用し、“文字が読めない教養人がいても少しも不思議ではないが、高度の学歴をもつ無教養人がいてこれまたすこしも不思議ではない、ということではないはずである”と。

 これら一連の議論の「日本」という文字を「アパレル」に置き換えると、そのまま業界の将来を考える議論の礎になります。(その前提として、実は日本のことをもっと真剣に考えないといけないのですが…いまとなっては日本の経済破綻の可能性が普通に議論されているのですから)

 SPAを推進する際のコンセプトに、“業界のあらゆるロスと無駄を徹底的に排除して、それを顧客価値に転換する”というものがありました。はたして顧客価値に転換することができたのか、その実は自社の粗利の確保に四苦八苦しただけではなかったのか?

 山本氏の言う「思想」とはコンセプト(上記に発想がコンセプトに近いような気がします)よりは上位概念で、イデオロギーともニュアンスが異なると私は考えます。

 SPAとはある種の発想に基づくビジネスシステムに過ぎず、その先にある思想を定義して文化にまで昇華させなければ単なる一過性の経済的手段で終わってしまうように感じます。ポスト平成SPAモデルの探求には、思想レベルの到達点が必須のようです。

 最後にもうひとつ。ブログやツィッターに携わる我々が意識せねばならないことにも、アメリカ人記者から聞かされた話として言及がありました。“(前略)フリートーキングをレコードして公表するような行為は絶対にやってはならず、そういうことをやる人間こそ、思考の自由に基づく言論の自由とは何かを、全く理解できていない愚者だと”。

 いわゆる炎上は、思考の自由レベルの議論が活字になり、それに同レベルの反応が連鎖することで燃え広がる現象だと説明がつけられます。

 真の教養を身につけなければ…
 2010/10/31 18:59  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
フジツボ続編
これが例のフジツボです。

 前回は社交辞令を真に受けて、全部食べてしまった私の失礼をお許し下さい。御茶目なK常務に感謝です。

 かかるトラブルを避けるために、予め取り分けて下さった板さんの心遣いにも深謝!

 今年はもうシーズンが終わりということで、来年の楽しみとなりました。代わってクエのPOPが大きく掲げられていました。ことごとくネタが素晴らしいお店は以下です。

 http://r.gnavi.co.jp/a070201/

 カメラウーマンを兼ねておられる優子姉さんとのおしゃべりも軽快です。
 2010/10/27 07:21  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
ユニークなシステム屋さん
本当のシステム屋さんに続いて、ユニークなシステム屋さんとの出会いがありました。

 超大手Sierの部長なのですが、とても柔軟で、この御仁もある意味で本当のことをおっしゃられます。

 実は当該社さんとは、10年ほど前にインターネットビジネスを担当した際に、アパレル業界としては珍しく、かなり深いレベルまでディスカッションさせていただいたことがあります。

 珍しいという意味は、当該社さんが官公庁主体のビッグ案件しか手掛けておられなかったからです。それが今や海外のM&Aに活路を見出そうとしておられ、かつまたそのI部長はアパレル業界をフォーカスしておられます。もともと広告代理店のご出身で、著名な作曲家のご子息ですから、それは柔軟で本音で議論ができるIT業界には珍しい人材です。当時課長さんだったU氏も出世されて子会社の社長を担われているとのこと。

 10年の時を経て、面白い出会いとなりました。

 いろいろ歩き回っておくものですね、犬としては。知識創造を旨とするファームとの議論もスタートしました。ちょっとフェーズを変えての活動が始動しつつあります。
 2010/10/26 22:56  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
メイドウィズジャパン
朝日新聞が「タイ産マーチ」の衝撃と報じています。

 すその産業流出、部品の95%海外生産、下請け企業の移転加速…。自動車産業のグローバル化は、国際的には何年も前から当たり前のことです。

 98年にメルセデスベンツの初代V230を衝動買いしたのがドイツ車との付き合いの始まりですが、その品質には結構弱りました。(ベンツなのに!) 最初から雨漏りがしたリアウィンドウ、しばらくしてボタンがズボっと抜け落ちたパワーウインドウ。

 30sを超える後部座席を外したり付けたりと一所懸命のオーナーロイヤルティは、ある日の営業担当者の一言でもろくも崩れ去りました。ベースが商用車であることは認識していたのですが、なんとVクラスはメイドインスペインとのこと…。勝手に質実剛健なドイツ野郎達の手による機械だと思い込んでいた私は一気に萎えました。

 それではと次からはBMWに移行して、3シリーズをベーシック4気筒、シルキー直6、パワフルV8と乗り継いできましたが、実はBMWの3シリーズも今となってはM3を除いて南アフリカ産であることを知ったのは、しばらく経過してからでした。

 さる1月のアパレルウェブの10thアニバーサリーのゲストスピーカー、西山圭太氏(前経済産業省産業構造課長)が日独の中堅企業の特徴について、次のように述べておられました。

 日本は国内における生産のすそ野が広くフルセット型。それに対してドイツ中堅企業はグローバルに顧客のネットワークを有しており、特注品では儲からないので標準化が進展している。(本年1月の当ブログを参考にして下さい)

 つまり、日本は身内の別注仕様で閉じた系列生産を狭くて高い国内で行ってきたということになります。太平洋戦争で日本軍が敗れた遠因のひとつに、兵器に規格という概念がなく組織も縦割りだったことがあると言われています。米軍は、墜落した戦闘機の部品で戦車を修理することができたとか。我が国の末期の戦闘機は、木の骨に紙を貼っていたんですものね…。

 モノ作りニッポンの真価が問われる時代に突入しつつありますが、メイドインジャパンではなくメイドウィズジャパンでさえあればよいと考えると、思考の選択が深まり広がります。

 かつて、安かろう悪かろうの代名詞を冠したメイドインジャパン。それが今や秋葉原や銀座ではメイドインジャパン商品を求める中国人観光客の洪水です。

 今後は、より広義のメイドウィズジャパンがあらゆる業界で模索されていくことになります。さて、アパレル業界におけるメイドウィズジャパンとは?


 2010/10/17 17:25  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
合従連衡が訪れた?
東京スタイルとサンエーインターナショナルの経営統合が発表されました。

 業界の合従連衡については、昨年の7月14日付のブログで言及していますが、その時のきっかけとなった話題のキリンとサントリーの事例とは少し趣が異なります。

 アパレル業界の構造的特性を説明する際に、次のような特性と数字を引用します。第一は、水平でマーケットシェアを見たときの小規模乱立性(非寡占性)で、第二に、垂直でサプライチェーンを見たときの流通の多段階性です。前者の根拠として、4千億超を誇るファーストリテーリングやしまむらも含めた広義のアパレル業界を定義した上で、上位10社の売上は2兆数千億円に過ぎないのでマーケットシェアとしては、10数%。上位50社まで集計範囲を広げても売上は4兆数千億円ですので、シェアは30%程度。これほどまでに、小規模乱立の業界は希少であるということができます。

 また多段階性を裏付ける数字として、小売りベースのマーケットサイズは10数兆円と言われているのに対し、原糸からテキスタイル、整理、加工、縫製、問屋などを経由するマーケットサイズは40数兆円があります。

 一言で表すと、アパレル業界は横にも縦にも小さく分断されているジグソーパズルのような業界構造になっているのです。つまり、ある程度寡占化が進んでいる業界で語られるマーケット特性や、そこから導かれる経済原則や競争原理がそのまま通用する業界ではないのです。

 従って、ビール業界や自動車業界、鉄鋼業界などにおける合従連衡とは、法的にも経済的にも意味とインパクトは異なりますが、今回の発表は業界的にはそこそこの大きさのニュースであることに違いはありません。

 両社とも公私ともに存じ上げている部分があるので、詳しくは申し上げられませんが、アパレル業界マクロ的にはある種の胎動の初動が始まったと言って過言ではありません。そ

 もそも、トップのFRとしまむらが数千億企業に過ぎず、3000億兆はワールドだけで、それもIFSRに依拠した会計に変更すると大台を下回りかねない業界で、数百億企業が合体することの意義をどう捉えて、今後の見通しをどう考えるかが、私たちに与えられた課題であります。

 矮小化して議論すると、たかが中小企業同士のの後継者問題や人材流出などの人的経営課題克服の戦術に過ぎないと言い切ることもできます。その反面、業界的には、小さなピースの集まりに過ぎないアパレル業界が、時代に要請されて細胞と遺伝子結合活動を開始した狼煙だと考えることも可能です。

 凋落する一方の百貨店を主戦場とする共通項はありますが、キャラ的には正反対の企業同士の統合です。早速、IT系や物流系のフィールドの動きが騒がしいですが、背骨となるマーケティングやMDはどのように展開していくのでしょうか?

 ポスト平成モデルの模索を目下の最重要課題としている私ですが、昭和を代表する両社の動向から目が離せません。また、昭和モデルから平成モデルへとイノベーションを成功させた数少ないアパレルであるワールドの動きも気になります。

 昭和モデルの代表格の一社であるレナウンは海を渡りました。三陽商会やオンワード、イトキンなどが一気に統合して、ワールドとFRやしまむらが合併したりするような、そんな活字が現実のものになることを想像するとワクワクするのは私だけではないと思います。

 その間に、数十億規模〜百億兆の新興企業やブランドが竹のような勢いで成長していく。そんな業界に私たちは生かされています。

 そろそろ小山(こやま)の大将から卒業して、大山(おやま)の大将を目指しませんか?
 2010/10/15 00:00  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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