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移動時間弾力性
盛岡で学生生活を送っている息子がふらっと神戸に帰ってきました。

 春休み二回目の帰省なので、青春18きっぷを使って2300円で済ませたようです。青春18きっぷには、その名の通りではなく年齢制限がありませんので、年に何回かのんびり旅行を楽しんでいる私の同世代の友人もいます。

 さて、弾力性の応用編として、盛岡〜関西間のコストと時間を計算してみることにします。2300円の帰省では、盛岡駅5:30発で神戸の三宮に24:30着と聞きましたので、大阪駅まで18時間半かかったと見なします。新幹線で盛岡から新大阪までは24400円で5時間半です。花巻空港と伊丹間は、盛岡駅から花巻空港までの移動と待ち時間を1時間半と想定して、バス代と航空運賃のおよそ38500円で三時間ほどかかります。

 それぞれ、計算を単純にするため、2300円で1100分、24000円で330分、38000円で180分とします。

 2300円と24000円では165%、2300円と38000円では177%、24000円と38000円では45%の価格アップになります。

 1100分から330分は▲108%、1100分から180分は▲144%、330分から180分は▲59%ですので、移動時間短縮弾力性は、0.65、0.81、1.31となります。

 同じJR同士で比較すると、165%アップの大枚を支払っても時間はその0.65倍しか短縮できませんので、18きっぷの価値は絶大です。

 18きっぷと最速の飛行機との比較では、0.81となり、そこでも18きっぷに軍配が上がります。最後に、新幹線と飛行機では、時間短縮効果が1.31倍ありますので、盛岡〜大阪の距離では飛行機の勝ちという結果です。

 JRや航空会社がどのようなロジックで運賃を決めているのか詳しくは知りませんが、主要都市間の交通費と時間を弾力性計算で網羅的に調べてみると、美しい体系が見えてくるのか、はたまた意外と無秩序だったり偏っていたりするのか、興味深いものがあります。

 鉄っちゃん、航空マニアの諸兄のお力をお借りできればと思います。
 2010/03/28 15:41  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
やっぱりそうか
日経ビジネスの3/15号の特集記事をトレースします。

 膨れ上がったPBを全盛期の三割まで減する東急ストア。←全員損する「自滅型循環社会」
 
 改良したパン粉のコストが3〜4割アップした結果、卸値はライバルより1割は高いが予約が殺到したヤヨイ食品。

 ほんだしを一新して、6割値上げしてシェアを維持した味の素。

 価格引き下げは不信感を生むと豪語する成城石井の大久保社長。
 クリーニング代+保管代=高価格の方程式で成長する喜久屋。
 
 なんちゃって顧客のセールハンターを見抜いたオギノ。

 1号店のヴァンパイやカフェで有名なダイヤモンドダイニングは、10年間142店舗出店、撤退ゼロ。

 極めつけは、最適価格をデータから算出する全日食。

 最後に、サービス業興国論。

 アパレル業界においても、価値と原価と上代のバランスを根本から見直さなければなりません。さらに、サービス業としての一面に光をあてて新しい価値を追求する必要があります。そこには二つのディメンションがあって、ひとつは情報発信であり、もうひとつは接客です。

 10年以上前にインターネットビジネスプロジェクトを担当させていただいたのですが、当時は暗中模索、五里霧中でした。10年を経て、ようやくその解が見えてきました。
 2010/03/24 20:55  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
どうなるジーンズ市場
東洋経済3/13号からの引用です。「米GAPのシェアの天井8%にユニクロも近づく」との見出しが躍りました。

 GAPのシェア率の天井を引用して、それを超えると自社競合が始まるというロジックで、グロスのシェアは3.8%に達しており、インナーの国内シェアは既に14.5%に、ジーンズのそれは13.1%であることから、アイテム別に臨界点を超えたものが出始めており、全体としても危険水域に近づきつつあるという論旨でした。

 そこに、スーパーでの販売を除くそれまでのジーンズ市場が7578万本でユニクロが1000万本という数字が出ていましたので、ここでは価格弾力性のフレームワークでひも解いてみることにします。

 ユニクロを始め、990円、890円、690円などが登場する前のジーンズの平均単価が6000円だったものが、今や2000円の平均単価に下落したと仮定します。

 一般には、価格が三分の一になったと表現し、その場合に売上数量が三倍になれば市場規模は維持できます。価格弾力性的には、価格が100%下がったことになります。100%の値引きを行うと売値は只になるような感覚がありますが、100%下がった結果三分の一にな
るのです。

 逆に売上数量が100%増加したときに三倍の数量になり、価格弾力性が1でよかったねということになるのですが、実際のマーケットがどのように推移するのか興味深く見守りたいと思います。

 既存のジーンズの販売数量は、日本の消費活動を行う国民が年間一人一本買っている計算になります。さて、そのようなマーケットが数量規模で三倍になりえるのか…?

 弾力性の大小に影響を及ぼす要素は、四つあります。第一は、その国のその時代固有の需要曲線と供給曲線です。第二は、必需品かどうかの度合いです。第三に普及率があり、最後に利用率が関係してきます。

 シーンズを実用衣料ととらえれば必需品に近づきますが、はたしてそうでしょうか???
これまでジーンズというアイテムに無縁だった人々が購買に走っているとしたら、普及率にはまだ若干の余裕があったことになります。これが唯一の救いで、最後の利用率は、毎日はくかどうかという問題ではなく、どれくらいの頻度で消費するかという問題です。一定の耐久性を備えて長年の着用が味を出すジーンズに高い利用率は期待できないと考えるべきです。

カタストロフィーがちらつくのは、私だけでしょうか?
 2010/03/19 08:42  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
値下げの明暗
本日の日経に“値下げの明暗”と題した記事が掲載されていました。

 相次ぐ値下げ(現時点で8回)を続けることができているニトリは、毎月1割程度の客数増の勝ち組で、追随した良品計画は需要を先取りしただけに終わり三カ月で鎮静化。

 130円のチョコ二品目を15円値下げした不二家の前年比6%の売上増に対し、後発の森永は15円下げても前年比横ばい。

 牛めし並盛を380円から320円にした松屋は、客数が5〜7%増で売上は微減。片や330円を280円に下げたゼンショーは、客数10%以上増で売上はプラス。

 観劇チケットを平均15%下げた劇団四季の客席稼働率は79%から84%に上昇。

 これらはすべて我々が日常的に取り扱っている数字を用いた議論ですが、厳密な価格弾力性の議論をするには、もう少し突っ込んだ数字が必要になります。

 ニトリの事例は、連続的値下げ効果で総分母にあたる来店客数の爆発的拡大が起こっている可能性が大と考えられます。購買率がどう推移しているかが不明ですが、結果的に来店客数×購買率が10%上昇したわけです。一点単価は下落し続けていますが、それを上回る
購買者数と平均購買点数(セット率)を確保できたのだと想像されます。

 弾力性的議論を展開するには、当初価格と現在価格、購買客数、セット率、一点単価を厳密に見なければなりません。もしかしたら、家具のマーケットは既に飽和していて、ニトリやイケヤの活動は、市場の拡大に寄与しているのではなく既存市場を他社から奪っているだけで、マクロ的には既に市場をシュリンクさせる破壊的競争に陥っているのかもしれません。

 チョコレートの130円から15円の値下げは弾力性計算では▲12.2%になります。130円のときに100万個で1億3000万円だった市場が6%増の1億3780万円になると、数量ベースでは約131万個売ったことになります。この増加率は弾力性計算では、26.8%の数量増と計算さ
れますので、不二家のケースの価格弾力性は2.2(26.8÷12.2)となります。

 同様に森永のケースは、元の価格が同じ130円だったとすると価格弾力性は0.88(10.7÷12.2)です。

 一般に普及率の低い贅沢品は価格弾力性が高く、必需品であればあるほど、普及が進んでいればいるほど低くなります。嗜好品に属すると考えられる同じチョコレートが価格弾力性2を超えるものと1を大きく下回る結果になった明暗を分けた理由には、少なくとも次の二つが考えられます。

 第一は、販売促進施策の巧拙です。これには広義で流通チャネルを含む恒常的販売力も含まれます。第二は、顧客にとってのポジショニングが両社の商品間で異なっている場合です。ポジショニングのマッピング軸はいろいろが考えられますが、不二家のそれの方が森永よりも、より非日常的でより新鮮な価値の位置に少しだけシフトされていたという仮説が成り立ちます。

 北京で蝶が羽ばたくとニューヨークの天気が変わるというカオス理論の含意は、複雑系における予測困難性と初期値の微細な差異が最終的には大きな結果差異を生むことの二点です。マーケットポジションのほんのちょっとした違いが、価格弾力性に大きな違いを生む可能性があることに気付いた私は、頭の中で電流がスパークしました。

 価格および所得弾力性の議論と、最近めっきり聞く機会がなくなったカオス理論を融合することで、マーケット動向をひも解くヒントが得られるのではないかと!!

 牛丼やチケット、さらにはジーンズにも言及しようと思ったのですが、家具とチョコでこれだけの分量になってしまいましたので、続きは次稿にゆずります。

深いです、弾力性。
 2010/03/16 22:29  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
弾力性の数理
弾力性の数理については、大半の人が正しく理解していない(誤解している)可能性があります。

 一万円の上代の商品が一万枚売れている一億円の市場があるとします。価格が半分の五千円になったときに、売上枚数が倍の二万枚になったら、売上金額は一億円のままですので、これぞ弾力性が1の世界だと言うことができます。

 ここで注意が必要なのは、半分と倍は日常的には均衡しているように感じられますが、元の数字を分母にすると、前者は50%ダウン、後者は100%アップということになり、変化率が二倍異なります。

 一万円の価格が五千円になった場合、弾力性の計算では66.7%下がった(5000÷7500)と計算します。一方で、一万枚が二万枚になったのも66.7%(10000÷15000)なので、その場合の価格弾力性は1になります。

 違う事例で考えてみましょう。五千円の商品が三千円に下がったとき、一般的には40%の価格ダウンと認識しますが、弾力性の世界では、50%(2000÷4000)になります。アップダウンは微分係数で認識することから、“差額の中間点÷差額”で計算しなければならないからです。

 そして売上数量が三千枚から五千枚に増えたら、(差額の中間点=4000枚)÷(差額=2000枚)=50%となり、その場合の価格弾力性は1になるのです。一般的な計算では、価格ダウンが40%で、枚数アップは66%強になりますので、大きな数字的乖離が生まれます。

 検算してみましょう。一万円の商品の価格が20%下がったら8000円です。一万円のときに一万枚売っていた市場が、20%アップの1200枚になるとしたら、8000×12000で9600万円にしかならず、以前の一億円の市場は縮小してしまいます。この場合の価格弾力性は1で
はなく、(1000÷11000)÷(1000÷9000)≒0.82が正解です。

 さて、週明けの朝一から難解な数字にお悩みの諸兄に一言申し上げます。

 価格が半分になって、市場規模を維持しようと思うと、その倍の加速度で需要枚数が増えなければならないのです。価格が一割下がった場合に金額的市場規模の維持に必要な、需要枚数のアップ率は一割を優に超えるのです。

 低価格競争も大いに結構ですし、デフレの波は、ミクロの力では止めようがないようにも見えます。しかしながら、少子化(人員的パイは縮み始めた)社会の我が国で、GDPや実質所得が伸び悩んだり減する中で、価格を下げる行為が何を意味するのか、何を実現しない限り市場規模を維持できないのかを、考え直さなければえらいことになります。

 微分係数は積分値に加速度的なインパクトを与えることを忘れてはなりません。
 2010/03/14 21:07  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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