« 2009年12月 | Main | 2010年02月 »
特注品だけでは儲からない
西山氏の議論の続編です。

 イタリアの産地では、地方レベルの生産集積が州単位での集積へと変貌を遂げているそうです。ドイツの中堅企業(部材メーカーが6割強)を調べたところ、中間業者を通さない直売に移行するとともに、それぞれの顧客の仕様に応えた特注品だけでは儲からないので標準化を図ることで収益性を確保しようとする動きが盛んなのだそうです。

 特注品を標準化するにあたっては、最終顧客に対する直売によるナレッジの蓄積がイノベーションの源泉であり、そこで前回の議論の“発明を発見する”の出番が訪れるのです。

 アパレル業界では、多品種小ロット化の嵐が吹き荒れました。多品種小ロットにも、売れ筋が出たらそれをそのまま追いかける追加生産型のモデルと、売切り御免で追加企画の連射で対応するモデルとに分かれました。

 ユニクロがやったことは、少品種大ロットモデルです。彼らが言う“インダストリー“というキーワードには、儲かる要素として不可欠の“標準化”という概念を含みつつ、どこでどのような差別化を図るか、究極のトレードオフが両刃の剣として内在していると考えられます。多品種大ロットという掛け声を発しておられるOEM商社もあります。

 どうやら我々はロットという概念の分解能を高める必要がありそうです。素材や部材の共通化が図られていれば品番は細分化されていてもロットは大きいということができるかもしれませんし、長期にわたり売り続けていけば結果的に大ロットになる場合もあります。

 砂時計型産業モデルの上辺は「グローバル顧客」で、下辺は「グローバル技術/素材」と表現されています。それらの上下をどのような概念と価値連鎖で結びつけていくのか、バリューチェーンの根本的見直しを示唆する西山氏の議論でした。
 2010/01/28 20:18  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
発明を発見する
前回引用させていただいた西山氏の議論にはいたく感銘するところがありましたので、もう少し続けます。

 砂時計型産業モデルのサブシステムがいくつかあるのですが、そのひとつは「発明を発見する」というものです。前職で人事制度改革のプロジェクトに携わる機会があり、アパレルでは早かった執行役員制度とブロードバンド制の導入を推進しました。

 その際に、お世話になった米国系の人事に強いコンサルタント会社との議論のなかで社長がドはまりしたのが、「人材は育成するものではなく発掘するものである」という考え方でした。それ以外にも、様々な契機はあったと考えられますが、企業のプラットフォーム化構想に大きな影響を与えた議論であったことは容易に想像されます。
 
 プロパーの社員を長年かけて大事に育成するのではなく、内外(むしろ外)に在する旬もしくは特異な人材を見つけて登用する方が、よっぽど手っ取り早いのは、一面ではその通りです。ただし、それらの花や果実があまりにも早く散りゆき落下していく姿に直面すると、そのパラダイムは技術に対しては当てはまるけれども、技術やノウハウの産み手である人材にかぶせてしまうのは間違いだと思わざるを得ません。

 特許法上の発明の定義には“新規性”と“自然法則”というキーワードが含まれますが、“知識組み換え”という概念は、自然法則たる物理的、化学的ナレッジの新たな組み合わせと定義すると、まさに発明であり、その発明をどう発見してどう応用するのかが砂時計型モデルの必要条件のひとつということになります。

 人間の行動原理や心理的メカニズムも広義には自然法則に相当しますが、発明や発見の主体者である人間は狭義には組み換えの対象にするべきではないというのが私の考えです。以前ご紹介したマックスウェーバーの、人間が人間を管理する限りキリがないので神様を持ち込んだスキームに近いものがありますが、オーナーと所有物はどこかで切り分けないと、際限のないメビウスの輪に落ち込んでしまいます。

 現実の世界にある人間と、その操作対象である技術や知識と、形而上の神様という概念の三層構造のなかで、新たなビジネスモデルの変革が起ころうとしています。
 2010/01/27 20:44  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
砂時計型産業モデル
アパレルウェブさんの10thアニバーサリーのレセプションに出席させていただきました。

 記念講演第一部では、「アパレル業界これからの10年」と題して、何年かぶりに尾原容子さんのお話を聞くことができ、相変わらずの情報感度には感激させられました。

 第二部では、経済産業省の前産業構造課長で今は株式会社産業革新機構で執行役員を務めておられる西山圭太氏の「現代の産業構造変化の本質」という講演でした。

 その趣旨は、“知識組み換え”が進行しており、それが企業にオープン化を促し、その結果として産業構造が“砂時計型”になるというものです。その結果、「ものづくり」と「サービス」の接近と融合が起こるという論旨でした。

 アパレル業界で起こったこれまでの十数年のSPA化の動きも、知識の組み換えであり、砂時計型のビジネスモデルであり、ものづくりと店頭は一気通貫で結ばれたと言えばその通りかもしれません。

 しかしながら、クイックに期中追加と期中企画を行うことはスピードの経済を追いかけただけであり、西山氏の言う知識の組み換えが起こったとは言い難いとしたら、本当の意味でのイノベーションは未だ起こっていなかったのかもしれません。

 また、人的販売を生業とする店頭と接近融合しただけで、はたして顧客に対するサービスと接近融合したということができるでしょうか?ということは、SPA化は単なる序章に過ぎず、これから本格的な業界イノベーションが巻き起こると私は確信しました。

 今後のアパレル業界のビジネスモデルのあるべき姿を示唆する、プリミディブな講演に感動の週末でした。この砂時計モデルは今後しっかりと練りこんで自分のものにしていきたいと思います。
 2010/01/25 08:17  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
旅立ちにエール
アパレル業界に対するシステム支援を生業としていたS氏がオーストラリアに旅立ちました。

 彼は、情報系のシステムインフラ提供やそれに基づく分析支援のプロフェッショナルです。数年来お世話していた大手アパレルとの業務があまり芳しくない形でフィニッシュしたことが契機だと聞かされました。

 シドニーに滞在して、語学学校に通って、秋には戻ってくるとのことです。就学中のお子様もいらっしゃるにもかかわらず、勇気ある決断です。それ以上に様々な出来事があったのかもしれませんが、深くは聞きませんでした。

 シドニーには、私も学生時代にワーキングホリデーで数カ月滞在したことがあります。その際に見聞きしたことがことごとく私の人生のきっかけや節目を形成してきたことは何度か触れさせていただきました。

 彼にとっては、40歳を目前にしての渡航になりますが、素晴らしい経験ときっかけを掴んで戻ってくることを期待して待ってます。
 2010/01/22 14:10  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
こんな時代に
 こんな時代に、客数が見えていないアパレルがあります。売上を点数と一点単価に分解して議論することはできますが、客数と客単価に分解することと、客単価を一点単価とセット率に分解することはできないで経営管理をせざるをえませんでした。

 B売をグロスでしか掌握していないアパレルもあります。システムを刷新しない限り、元品番に紐つけて単品や商品群ごとの粗利が把握できないビジネスをやり続けるしかありません。

 それらの企業の将来については予断を許すことはできませんが、少なくともこれまで、それなりのビジネスを続けてこられたという事実は厳然と存在します。一方で、情報リテラシーに関しては随一のアパレルも、営業力一本でやってきたアパレルも軒並み数百億レベルで売上を落とさざるを得ない現実も存在します。

 ファッションを理性と感性(含:気合と根性)で切ったときに、そのいずれかだけではままならなず、それらのバランスすなわち有機的な結合が不可欠であることは明確になりつつあります。

 さらに、ファッションとは異なるインダストリーというキーワードで独り勝ちをしているユニクロを見ると、物性とオペレーション性のバランスが上手く取れていると映ります。ここで言うオペレーションには、ロジスティクスを含むSCM(サプライチェーンマネジメント)の分野と広告宣伝を含むDCM(ディマンドチェーンマネジメント)の両方を含みます。

 無策の低価格化傾向については、私もしばしば批判的に取り上げてきました。ここにきて、ユニクロがデフレの元凶のような論調もあり、柳井さんが猛烈に反発しておられます。

 私はユニクロを無策とは思っていません。前述のとおり、SCMとDCMの調和した見事なビジネスモデルをインダストリーとして実現しているからです。彼らの次なる課題は、そこにファッションという軸をどう取り入れて、どのように両立させていくか、もしくは背反する場合には何を捨て去るのかを見極めることです。

 また、ファッションを標榜してきた各アパレルの課題は、自社内の調和がとれていない両チェーンオペレーションの齟齬を解消して、次なる次元のビジネスモデルを模索することです。
マークアップという概念は、当該企業の目論見としての付加価値に相当します。マークダウンは、それが市場に認めてもらうことができなくて毀損した付加価値に相当し、マークダウンと残在庫を控除したものが結果として実現した付加価値です。

 産出した付加価値の総和であるGDPがバブっていて、それがシュリンクしたことがマクロ的には今回のデフレの構造です。したがって、低価格を一方的に批判することは誤りで、付加価値を伴わない低価格競争には注意が必要であり、結果的に付加価値を大きく毀損する高価格はもっと注意が必要だということです。

 自らの創意工夫と努力(親や先人から引き継いだ資産や権益はこれには含まれません)とは無縁のところで利益を貪る付加価値イーターと、せっかくのステージを与えられていながらそれを垂れ流し続ける付加価値ドロッパーは市場からの退場を余儀なくされます。

 前者が大物政治家、後者が本日更生法を申請したフラッグキャリアにダブります。
 2010/01/19 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
| 次へ
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

北村禎宏 プロフィール
リンク集
カテゴリアーカイブ
最新記事
2010年01月
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
月別アーカイブ
最新コメント
Sayo
ファッションのコモディティ化 (2015年12月11日)
冨田さより
すごい学生がいたもんだ (2015年08月09日)
しの
日本人の忘れもの (2013年02月11日)
nobu
やっぱやられた (2012年10月24日)
北村禎宏
ダイバーシティにて (2012年05月24日)
最新トラックバック

http://apalog.com/kitamura/index1_0.rdf
更新順ブログ一覧
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード