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ネオ三種の神器(神大シンポジウム報告2)
メインテーマの愚直とは少し離れますが、花王の後藤顧問のお話しの中で私達アパレル業界も参考にすべきポイントがありましたので三点ご紹介します。

 まずは、行き過ぎた価格破壊すなわちデフレの進行には憂慮するというお話し。豆腐3円が3円になり納豆が3個58円で売られて、挙句の果てにはそのメーカーは倒産し…。

 後藤顧問は適切な利益を確保した上での価格でないと意味がない、常軌を逸してはならないと強調しておられました。以前も申し上げましたが、アパレル製品は耐久消費財と消費財の両方のまたがるアイテムです。中でもデニムは長年の使用による経年変化を楽しみ味わう商材です。それをランチ相当の値段で販売することが何を意味するのか?今一度深く考える必要があると思われます。後藤氏は、花王という会社のことを「モノづくりから離れはならない会社」と表現され、だからこそ我慢と辛抱と時間が必要だとおっしゃっていました。


 第二に、花王は研究開発技術開発を経営の中心に据えた運営をしてきたとのこと。技術には連鎖(チェーン)が存在しており、技術同士にはいろんな繋がりがある。従って、企業は目先の採算性のみで技術の連鎖を無視したり、その芽を摘んではならない。だからファブレスカンパニーは、そういう思想を有するメーカとしては反対したいのだと。生産現場には生産現場の知恵があるはずで、その知恵が外部にあってはならないし、その知恵の輪の連鎖が外れてはいけない。

 OEM〜ODMが全盛を極めているアパレル業界としては、これも一考の余地ありですね。連鎖と輪が切れた素材開発も商品開発もMDも、ほんとうはあり得ません。

 最期に、これは集合研修の際の受講生の諸氏にも聞かせたい言葉ですが、花王の全国の工場長を集めた工場長会議の日に、途中の10分の休憩時間に皆が携帯電話にへばりついている。「いったい君達はここへ何しに来たの?権限移譲はできてないの?滅多に合えない他の工場長と情報交換することはないの?」と問いたい。

 電車でも一緒で、「電車に乗ったら何故きょろきょろしないの?携帯などいつでも部屋でできるのに…」中吊り広告を見れば雑誌など買う必要もない。きょろきょろする好奇心が情報洪水のなかで失われていることのもったいなさを通関する。

 パソコンでデータを分析することも大事ですが、街できょろきょろ、人を見てきょろきょろが失われてしまたら、これもMD失格です。今アパレル業界が問われていることはそれら三点の裏返しです。

1)適正利益を確保した堂々とした上代設定とそれに見合う価値ある商品の開発
2)サプライチェーンにおける技術の連鎖の回復
3)知的好奇心に溢れたMDの発掘

 2009/11/30 12:28  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
「愚直」神大シンポジウム報告(1)
神大の現代経営学研究学会のシンポジウムに今年も参加してきました。昨年と同様に三部作にてご報告させていただきます。

 今回のテーマは、「愚直の経営」でした。経営における愚直の概念は、97年刊の「日本型経営の復権」における加護野忠男先生が最初ですが、前職の企業経営者が“愚直に日々の検証と修正を繰り返すのみ”と強調されていたことも私にとっては印象的です。

 今回のシンポジウムは、花王の顧問でいらっしゃる後藤卓也氏の基調講演をベースに、三品和広先生のコーディネートのもとパネラーにご当人の加護野先生を加えて展開されました。

 冒頭のご挨拶で加登豊先生から“愚直”の定義とそれにまつわる詩の紹介がありました。一般的には「正しいことを粛々と執り行うこと」「しかも正直に行うこと」と理解されます。正直というとビリー・ジョーの“オネスティ”が頭に浮かばれたようで、その歌詞が引用されました。

♪オネスティ…なんと孤独な言葉なんだ、みんな心の中を隠している、めったに聞かない言葉だけど、自分の心の中にはそれが必要だ♪

 第一回の今回は、経営学の文脈では愚直をどう捉えてどう実践すべきなのかの議論についてご紹介いたします。

 「勤勉に、正直に、黙々と、子細なことに厳格に励むべし」が加護野先生が提唱した日本企業の強みである愚直経営でした。これを三品先生は“陰徳の経営”と表現し、もくもくと事業(現在の本業)を営むべしと解題されました。その一方でハーバードで学位を取られた三品先生としては対極の議論として“陽徳の経営”すなわち俊敏に機を捉えるべしという考えを示し、さはさりながら現実はそれを実践して海外に生産工場を建てまくったトヨタがリーマンショックえを契機に赤字転落???という現実の厳しさを事例として引用されました。

 つまり、黙々と本業を営むだけでは変革に乗り遅れるし、よかれと思って打った戦略的施策がマクロの風向きの変化に翻弄されることもままあり、いったいどうすることが愚直経営であり、それは果たして経営戦略的示唆があるのかという問題提起です。

 さまざまな議論が交わされましたが、私なりに二つのポイントで愚直経営について結論付けます。

 後藤氏は花王においてフロッピーディスク事業からの撤退を英断し増収増益を重ねとりわけ利益の急進期を走りぬけた経営者です。その人となりとパラダイムを典型的に示している発言は、年功序列と非成果主義には大反対だが終身雇用は大歓迎というものでした。そこから読み取れる第一のポイントは、壊すべき日本的伝統と守るべきそれとの識別の問題です。選択と集中については批判的に引用したりもしましたが、それは本質的能力のひとつであることに間違いありません。

 また、三品先生が専門とする欧米的経営戦略論は経験を知識とデータに置き換えてそこから示唆を得て全体のあるべき方向性を見通すものであり、反面、加護野先生が強調する愚直経営は、そんなことはお構いなしに今目の前にあることに一所懸命に取り組むことで、その延長上に自分の守備範囲においては納得可能な結果をもたらすことができるという意味でオペレーショナルな議論に通じるものであるとの論争が差し挟まれました。

 そこから読み取れる第二のポイントは、同じ土俵に立って戦略ですか愚直ですかを問うことにはあまり意味はなく、それぞれの立ち位置と見通す範囲に応じて戦略的スキルと愚直というオペレーショナルな姿勢を使い分けることが大切だということです。つまり、それらは二者択一排他的な存在ではなく使い分けながら共存させるべき能力であるということです。

 さらに愚直はオペレーショナル側面だけでなく、私達人間に根本的な問いを投げかけてくれます。サムスンを代表とする多くの韓国勢企業が日本を追い抜いていますが、彼らが日本に追いつけないことがひとつだけあるそうです。日本製品は目に見えない箇所までも綺麗に作っているけれど、韓国製品は目に見えないところは汚いし、そこを綺麗にしようとする発想と努力は絶対に出てこないという点です。

 私達は人が見てるからみっともないことはするなと教えられてきましたし教えがちですが、「悪いことをしてもばれることはない、でもだからこそ悪いことはしてはならない」という教えを伝えていける人間であらねばなりませんね。

 2009/11/29 20:01  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
○○側の文化
火曜水曜と、川崎にあるオフィスでお世話になりました。

 室内の照明の案内表示にハッとさせられました。“川崎側(後方)”と“横浜側(前方)”と表示されていたのです。

 私達神戸の人間にとっては、“山側”“海側”という表現は極めて日常的かつ常識です。神戸に所在する会社の中でのロケーションもそのように表現される場合が多いですし、機会があれば神戸大丸を訪れてください。各フロアの案内表示に“海側”“山側”とオフィシャルに表現されています。

 京都には御所を中心に、アガルサガルの住居表示が現在も町丁目よりも優先的に使用されています。欧米では東西南北でアベニューとストリートが使い分けられています。

 ちなみに私が生まれ育った岡山にはそのような使い分けはなかったように記憶しています。今日は「場合分けのセンス」を思いっきり強調して議論を展開いたしました。

 土着の風土と文化に根付いた場合分けに接することでも、そのセンスを磨くことができますね。

 “丸の内側”と“八重洲側”にはそれほど深いものを感じられないのは気のせいでしょうか?

 2009/11/25 23:43  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
選択と集中の功罪
本稿のサブタイトルは、「いま熱い!8兆円をめぐる攻防」です。

 8兆円という数字が流通業界で三つの意味で熱いです。第一に百貨店の売上高が8兆円を下回ったところで底の見えないダウントレンドに突入しています。第二に、コンビニの売上高も8兆円を窺うところまできましたが突き抜けるかどうかは???の状況です。第三にネットも含む通販の売上高が8兆円を超えました。なかでもZOZOタウンとGILTの注目度と業績が赤丸急上昇状態です。

 “選択と集中”とは、コンサルタントが駆使する三種の神器の一つです。コンサル業は一に“マトリクス”、二に“フレームワーク”、そして三に“選択と集中”を振り回していれば、それだけで飯が喰えると言っても過言ではない業界です。(私にはそれに加えて、場を読んで場を組み立てるという付加価値があると自負していますが…)

 選択と集中とは、実は誰にでもできるリストラクチャリングのことを指しますが、それができなくなる当事者制約があるからこそコンサル業は成り立つのです。いとも簡単に内部でやってのけた典型的な事例がカルロス・ゴーンであり、それが国家を挙げてもでにくい事例がJALです。

 このように、選択と集中はBの世界固有のものと考えられがちですが、実は一般消費者も日々選択と集中を繰り返しています。ちなみに私は東京で二軒のお店を集中して攻めます。旨いこととリーズナブルなことと立地的利便性を兼ね備えていることが要件ですが、それにホスピタリティという要素が加わります。東京での夜の外食の半分はその二軒で済ませることになっています。

 翻って、ZOZOとGILTの効用はいかに?

 リアルショップは、全国に中途半端に散在しています。よって在庫も中途半端に分散して存在します。客注といえば聞こえはいいですが、そのときその場にカラーサイズがなかったときのストレスは皆さんも経験がおありのことと思います。いまでこそ店頭POS端末で他店在庫が即時参照できますが、面倒くさいですよね。

 中途半端に散在しているブランドやショップを一堂に会したことがZOZOタウンの価値であると考えることができます。また、お買い得品を買い回ったり、得した気分になったり後悔したりのエネルギーの分散を平準化したのがGILTの提供価値であると考えられます。

 薄く広くなのか濃く狭くなのか、そういう普遍的ビジネスモデルの選択が本質に隠れています。8兆円をめぐる攻防は奥が深いものがあります。
 2009/11/24 21:17  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
時代を超えるものありました
「八甲田山 死の彷徨」を題材にしたケーススタディが好評を博しました。総合商社のグループ会社の新任管理職向けの一泊二日のマネジメント研修でのひとコマでした。

 研修業務でアライアンスを組んでいる会社のNマネージャーから、「北村さん、八甲田山をやりませんか?」と声をかけられてから、もう半年以上になります。原作、TV、映画ともにとても印象に残っていましたので、是非やりましょうということで今回に至った次第です。

 遭難事故が起こったのは100年以上も前のことで、映画になったのが昭和52年ですから、1世紀の時を経てさらに30年の歳月を積み重ねてマネジメント研修の素材になった訳です。

 当該ケースを用いた初めての演習なので受講生のノリが心配されたのですが、それらは全くの杞憂に終わりました。複数の受講生から“八甲田山”がとてもよかったというありがたいお言葉も頂戴しました。

 皆さん新田次郎の原作を事前にしっかりと読み込んでおり、ディスカッションにおいても小説の場面場面にまつわる各登場人物の一挙手一投足の是々非々について大いに議論が盛り上がっていました。

 いま明治が熱いです。当日も、“坂の上の雲”を引用して秋山兄弟をはじめ正岡子規や乃木希典のお話しをさせていただき、近代史の示唆に富む重要性について皆さんに共鳴いただけたことは大きな刺激でした。

 司馬遼太郎の原作も読み応えがありますが、もうすぐ始まるNHKのドラマも楽しみで仕方ありません。

 久々にドラマでヒットしている「仁」も、白い巨塔などメディカル系で批評するのもそれはそれでありですが、やはり幕末から明治を経て近代国家の礎を築いたその時代感が、私達日本人に何かを感じさせるのではないでしょうか?

 時代を超えて先人の志を引き継ぎたいものです。
 2009/11/23 21:08  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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