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需要予測のパラドクス
当たる需要予測を追求したり期待することは世の常ですが、需要予測の本当の意味を考えてみたいと思います。

 前提として共通の出発点にしたいことは需要予測は絶対に当たらないということです。統計学的に確率を需要予測として提示することは可能ですが、それはあくまでも数学的な可能性に過ぎません。

 需要予測の一番目の意味は、理論的発生確率に過ぎない可能性を、現実に惹起するであろうと考えられる“蓋然性”に昇華させるためにあるということです。可能性はPossibilityで、蓋然性はProbabilityですが、夏目漱石はその違いを「私はこの教壇で逆立ちをする可能性はあるが蓋然性はない。」と説明しました。つまり、数学的確率と意思を伴った現実的未来とは異なるということです。

 根拠のない無秩序な意思は、単なる無茶に過ぎません。多少無理はしているかもしれないけれど、現実的可能性を帯びた意思を持つための合理的根拠、起点となるのが需要予測なのです。
 
 二番目の意味は、利益コントロールのアンカーになるということです。売上の需要予測に基づき売上計画は策定されます。それに粗利計画がひもついて、粗利は期首在庫と期中仕入と期末在庫に分解されます。さらに、それらに変動費と固定費が経費として計画されて結果として利益計画が導かれます。

 期中に入ると需要予測は上にも下にもブレます。その都度、在庫を始めとして関連する諸要素を上下にコントロールすることで着地である利益を合わせにいくのです。そのためのアンカーとなる需要予測とそれに基づく計画と、期中での細やかな修正作業が大切であるというわけです。

 「需要予測は外れるものだが、外れるからこそ需要予測をする重要性があるのだ。」というパラドクスの意味がおわかりいただけましたでしょうか。
 2008/12/21 17:35  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
神大シンポジウム報告(3)
第三回目は、ダイキン工業株式会社 代表取締役会長 井上礼之氏からお話しのあった、「変革型リーダーに求められる五つの条件」をご紹介します。

 トヨタでさえ下期赤字に転落する大逆風のなか、海外売上比率が60%を超える製造業の同社は、売上1兆6千億 利益1400億の計画の今期、ユーロの設定をマイナス修正し続けてきたが、最終的には為替の影響のみの1000億の減収で着地する見込みとのことです。
 
 曰く、ある一定期間をおいて訪れる緩やかな変化には手の打ちようがあるが、突発事項がほんの一二ヶ月の間で起こると対応は不可能に近い。海外に58の工場があるが、各工場ごとの減産、増産ポートフォリオを組み替えれば中長期的には対応が可能であるが、短期では既に個別の契約が決まっているので変更は困難。そのような中長期的なビジネスモデルを変えるのが変革型リーダー役割ということでした。

 その上で、変革型リーダーについて議論するポイントは次の三点であると。
  1.今の時代をどう読むか
  2.そういう時代の変革型リーダーの役割、資質は何か
  3.そのときに人事部門、大学が果たすべき役割は何か

 その中でも、もっとも印象に残った2.のリーダーの役割、資質について記述いたします。

 1)変革型リーダーは正解のないことに答えを出す能力が必要である
   ある種の決断力が必要で、業績が好調なときの決断は誰も難しくない。結論が出ない
  状態での決断、組織の進むべき方向性などを決める力のことである。そんな中で、信じら
  れるのは現場感覚に基づく直感、それは“三現”(現場、現物、現実)の肌感覚と言うこと
  ができる。
 
 2)失敗をとがめない、すなわち“チャレンジ精神”が内向きになってはいけない
   たとえば、今の時代は中長期的に強化するものは環境。言ってみれば次にくるのは環
  境バブルということができる。日本は環境技術と空調冷凍では世界トップ(ヒートポンプ方
  式、インバーター)。ということは、環境ビジネスは将来的に絶好のチャンス。ところが今は
  大逆風のマクロ環境。ここでシュリンクしてじっとしているのではなく、構造改革の絶好の
  チャンスと捉えるべき。疾風下では自社のもっとも弱いところが見えてくるものである。
  
 3)信じて思い切って任せる
   それには人を見る目が重要になる。経営は人の営みだ。フランスでは名リーダーと三ツ
  星のシェフは同じと言われている。二つ星のシェフは最高の食材を集めるが、三ツ星のシ
  ェフは今ある食材で最高の食事を作るのだ。

 4)組織のDNAは伝承すべきだ 変えるべきことと変えてはならないことがある
   伝承力すなわちコーポレートカルチャー。組織は良質の遺伝子のみしっかりと残す必要
  があり、それは不動点と言うこともできる。これを底辺とするから変革ができるのだ。当社
  の退職率は3%。(製造業の平均は12〜13%)強制はしないが言い続けること、面接では 
  なく面談。どうやって社員が居続けたいと思うかという経営環境を作ることが経営の仕  
  事。それには虫の目(複眼)鳥の目(俯瞰)魚の目(潮目の変化)を使い分ける必要があ 
  る。連続した改革に次ぐ改革が経営であるが、変えてはならないことを忘れてはならな 
  い。

 5)周囲を自立的に動かす
   それは、率先垂範と言い換えることもできる。リーダー自らが最初の一歩を踏みだし、ま
  わりの迷いを消してやることが大切である。リーダーシップとは挑戦し続けられるかどう 
  か。スキルの問題ではなくウィルの問題である。

 経営学の世界で様々に語られるリーダーシップですが、グローバルに活躍しておられる優良企業のトップの発言には理論を超越して聞かせるものがあります。
 2008/12/14 20:12  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
神大シンポジウム報告(2)
第二回目は、金井壽宏先生の問題提起からの抜粋をお送りします。

 「ビジネスシステム変革」と「変革型リーダーシップ」は不可分であり、あたかもクルマの両輪であるという考えから出発します。

 前者には、“仕組みをつくる”“ビジネスシステムづくり”“構造づくり”“仕事への関心”“仕事をすること”などのキーワードが含まれます。

 それに対して後者には、“人々がそれを創る”“ひとづくり”“配慮”“人々への関心”“愛すること”などの言葉が対応します。

 これらの二軸について、臨床心理学者の平木典子先生が、あるメーカーの部長クラスとストレスマネジメントについて議論する中で次のような話があったそうです。

 “タスク”と“メンテナンス”という言葉を使って、ビジネスの世界なので課題を達成すること、そのために仕組みをつくることが大事に決まっているが、相手は人間なのだから、(マシンでさえ必要な)メンテナンス、大切に思う気持ち、ケアが必要だと言われたのです。

 ソーイング・マシンという英語を聞き間違えて“ミシン”が日本語として定着したことはご存知のとおりですが、洋裁(すっかり死語になりましたが)の達人は、きっとそのミシンを大切に思い、しっかりと油を点すだけでなく、ときには分解掃除までして丁寧にメンテナンスするはずです。その思いと的確な整備がミシンの性能、ひいてはミシンを使ったタスクの成果を規定することに繋がるという意味です。

 三隅二不二先生のP(パフォーマンス)とM(メンテナンス)理論も、それに近いフレームワークです。

 折りしも世間では派遣切りが始まりました。相手は人間であることを忘れたくありませんね。
 2008/12/11 08:28  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
神大シンポジウム報告(1)
週末、神戸大学現代経営学研究所第19回シンポジウムに参加しました。

 今年のテーマは、「ビジネスシステム変革と変革型リーダーシップ」(“基軸は人”を貫く経営)でした。

 まずは、冒頭の加登豊先生のご挨拶の内容から。

 現状のビジネス環境は楽観的なシナリオが描きにくいマクロ環境にあることは明白で、各企業はバブル崩壊の際と同じ方策をとると考えられるが、海外への生産シフトはかなり進んでしまったし、成果主義による人件費の削減もやり尽くした。

 残された方策は、採用の抑制をするか、人件費の直接的削減しか残されていない。しかしながら、各企業は採用を抑制することは控えて欲しい。何故なら、バブル後、採用をし続けてきた企業が今でも勝っているという事実がある。経営の基軸は人であるということを頑なに守り続けている企業が好業績を残しているという現実がある。

 不況が長引けば長引くほど安定して人を採用し、教育研修を怠らなかった企業が生き残る。プラザ合意後は、こっそりとプレゼンスを高めた日本企業であるが、今こそ米国の経済回復に貢献することができれば、全アメリカ国民から、日本人が、日本の企業が私達の生活を助けてくれたと感謝される最大のチャンスである。

 今回のシンポジウムのテーマは、「ビジネスシステムの変革」と「変革型リーダー」の関係性を紐解くものでした。メッセージの内容は、人を基軸にする経営を貫いているからビジネスシステムの変革をドライブする人材を輩出することができて、結果的にビジネスシステムの変革を成し遂げることができる、というものでした。

 人という存在と、人が人として有するモチベーションが源泉となってこそ、イノベーションは成立する。まさに、そのとおりだと思います。原因構造と結果現象はときにループしてしまいますが、イノベーションをロジックや仕組みからドライブすることはあり得ないというのが私の考えです。

 残念ながら、そのあたりの齟齬が私が前職を辞した理由のひとつでした。

 次回は、金井壽宏先生の問題提起の内容を報告させていただきます。
 2008/12/09 21:17  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
裁判員制度
裁判員制度の通知が該当候補者の元にひととおり届いたようです。

 最高裁がコールセンターに用意したシートは50席。私が前職で通販ビジネスを立ち上げたときのコールセンターのシート数はMAX15席でしたので、さすが国には予算がありますね。

 とはいえ、ピーク時は一日2千件ほどの問い合わせということなので、いい読みをしているということになりますが。

 さて、問い合わせの大半は辞退に関する相談だそうで。それもいたしかたないところではありますが、ブログなどに個人名が特定できる形で公開してしまっている人々も少なからずいるようで、暫くは混乱しそうな気配です。

 とはいえ、第一義的には国民の義務ですので、法律上の義務というステータスが軽んじられることなく候補者の方々が前向きに対応されることに期待します。

 たとえば、監督官庁に対する“許可”“認可”“特許”“届出”の違いをご存知でしょうか?

 “許可”とは法律上、一般には禁止されている行為の禁止を解くための手続のことです。“認可”とはそれによって法律上の効果を完成させることを指します。“特許”とは本来的には有しない権利や地位などが付与されることです。(一般に発明を登録したものを“特許”といいいますが、それは狭義の特許で、広義の特許の意味は前記のとおりです) 最後の届出は、当局の判断が不要でそれが所轄官庁に到達するだけでOKというものです。

 このように、皆さんがあまり詳しく知らないだけで、法的ステータスは明確に規定されているのです。“教育”と“勤労”と“納税”は憲法上定められている日本国民の基本的三大義務です。裁判員への参画も法治国家としてのレベルを上げるための国民の大切な義務です。

 とはいえ、私達のようなコンサルタントもそうですが、個人事業主の方にとっては悩ましい限りですね。辞退することができる権利と義務の間で揺れる人々の英断が求められています。


 2008/12/02 14:51  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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