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げに恐ろしきは業務上横領
 地方公務員の収賄の数が激増したとの報道。業界用語(アパレルではないですよ)では“サンズイ”と称します。汚職の文字が語源です。他に“マルボウ”“ワッパ”などたくさんありますが‥

 ところで、たまに社会面で目にする「業務上横領」という言葉ですが、実はとても身近な犯罪なのです。何気なくプライベートの携帯を会社で充電しているあなた、立派な業務上横領罪です。業務上横領の構成要件は、“業務上占有する他人の物を横領”することです。もし、会社のボールペンを使って私用の記述をした場合は、会社の所有物であるところのボールペンのインクを業務上横領したことになってしまいます。

 最近、こんな出来事がある会社で発生しました。大きな会社では当たり前になっている従業員の出張清算や小口経費清算の銀行口座振込みを総務や財務の窓口で現金で行っている中小の企業はまだまだたくさんあります。規模も大きくなり、安全面からも振り込み清算に仕組みを変えることにしたところ、社員から大ブーイングが発生いたしました。会社としては振り込み手数料を負担しないために振り込み元の同支店で口座を持つことを社員にお願いすることになるのですが、社員の言い分は以下のとおりでした。

 当該銀行のATMが自分の生活圏にない場合は、小口の経費を下ろすためにわざわざの負担が増すことになる。それは、よしんば労力の増加なので受容できるとしても、時間外の利用をせざるを得なかった場合には、105円の手数料が発生してしまう。会社は社員に手数料の発生を強要するのかと。その銀行は、普通預金に10万円以上の残高があれば時間外のATM手数料が無料になるというサービスを行っているのですが、若い社員の言い分は、メインの口座以外に10万円も寝かせておく経済的負担はできないというものでした。

 最終的には、会社の最寄のATMへの業務時間中の外出を各上司が柔軟に認めるようにというお達しで解決したのですが、皆さんはこのお話、どう思われますか?会社が社会通念上許される範囲内で経済合理性と安全性を追求した仕組みとして、法律的にも常識的にも何の問題もありません。社員も、毎日お昼休みがあって、その間、外食したりお弁当を買いに行っているわけですから、そのなかでやりくりするのが従業員の正しい姿です。

 今回のような主張を行う社員は、勤務時間中に無駄なおしゃべりもしてはなりませんし、まして法定の休息時間以外にタバコ部屋で一服など、もってのほかです。業務上横領には問われませんが、会社から時間を盗んでいることになりますよ。

 でも、タバコ部屋でのミニミーティングがいろんなネタの創発の場になっているという話は複数の会社で耳にします。いずれかの機会にタバコ部屋の功罪についても議論してみたいと思います。
 2007/12/27 22:28  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
個人情報保護法
 先日、「組織文化」に関するプロジェクトをご一緒させていただいている大学の先生方お二人と打ち合わせを兼ねた忘年の宴を催しました。

 それぞれ、関西と中部の公立大学で経営学を教えておられるのですが、実は共通の恩師が加護野忠男先生で、研究テーマは組織論というお二人です。お一方とは、大学院時代にの講義で席を並べたご縁もあり、今回のようにプロジェクトをご一緒させていただいてりしております。

 12年前の当時は、社会人対象のMBAコースの黎明期(私が神戸大学の第5期生になります)で、私の代は実験的に一年コースが設けられていました。最初の半年で、夜や土日だけでなく平日の昼間の講義でも単位を取得し、後半で一気に修士論文を仕上げるという強行スケジュールでした。おかげで昼間の講義でプロパーの院生と机を並べることができ、今でも親交のある先生方が多数いらっしゃるので、私にとっては素晴らしい財産になっています。

 その席でお二人が口を揃えてぼやかれてたのが、大学における行き過ぎた個人情報保護法の解釈と運用でした。大学ではゼミ生や院生の受け入れの際に面接試験が行われるのですが、同法のおかげで面接が全くその体をなさなくなったというぼやきです。

 お酒の席ゆえに、多少面白おかしくするために誇張はされていたでしょうが、なんでも面接時に本人の趣味嗜好はもちろん、家族関係や家族や友人との印象に残った出来事や思い出などを一切聞いてはならないというお達しが出されているとの由。結果、その人の人となりは全く窺い知ることができず、ペーパーテストの結果のみで選考を行わざるを得ないのが実情だそうです。本人が勝手にペラペラしゃべればラッキーなのですが、重要な意味情報につながる話は、ほとんど何も聞けないで終わるそうです。

 法律の解釈と運用には高いレベルの理解力と応用力が求められます。その一方で、形式的に受け止めて形式的に運用することはいとも簡単で、今回の例は典型的な形式解釈、形式運用の結果です。立法の趣旨としてどのような構成要件が想定されているのかを概念的にもしっかりと理解し、守られるべき法益は何なのかを的確に掌握しなければ、実質的理解と正しい運用はおぼつきません。

 ことに個人情報保護法は、社会面を賑わす様々な事例が発生し続けていることから、各関係者が必要以上にデリケートになった挙句、行き過ぎた形式運用に陥っているケースがままある法律の代表例です。ニュースで見聞きする個人情報漏えい事案には弁解の余地はありませんが、そもそも本法の趣旨は、“本来の目的と用途以外での個人の情報の利用、転用は本人の承諾がない限り許されない”というものです。

 それなのに、面接試験で“個人にかかわることは何も聞くことができない”という縛りとして現場が萎縮しているとすれば、お達しを出す側の理解力と運用力に?を付けざるを得ません。

 やっかいなのは、理解力がないのではなく、責任能力を果たしたくないという意思が働いている場合も多々あるので注意が必要である点です。形式的には問題が起こりえないようなお達しを出すことで自分の仕事が終わって責任が回避できていることにしたい人々、すなわちお役所仕事で終わりたい人々がたくさんいるという点です。彼らは、事務手続きの委任は受けているけれども、結果、効果を問われる業務を請け負った覚えがないというスタンスなのです。

 もっとやっかいなことは、平気でお役所仕事をしている民間企業の社員もたくさん見受けられるということです。彼らの存在のおかけで、法改正や制度的枠組みの変更の都度、おいしい思いをしているITベンダーやコンサルタントもたくさんいらっしゃるようです。経営者の方々、敵は社内にも社外にもいるので要注意ですぞ。頑張れ、文部科学省!!

 
 2007/12/17 14:22  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
アパレル法務
久々に法務の話題になりましたので、しばらく法務マターをアップしてみます。

 時は1984年4月、新入社員として入社して三週間程度で法務部門に異動になったのですが、法務機能の設置と充実を推進していた当時のボスはこんな風に言っていました。(現代では社会的にあまりふさわしくない言い回しも含まれていますが、84年当時のお話ということでご容赦ください)

 “北村君な、アパレルはとても女性的な業界や。後先あまり考えることなく、やりたいことを
パッとやってしまう。そのくせ、うまくいかなくなるとヒステリックになるし、笑顔で誤魔化そうとする、そういう体質の業界や”
 “それと、会社もこれだけ大きくなってくると(私の入社当時で1300億円の売上規模でした)、だんだんとストライクゾーンが狭くなってくる。昨日まではストライクと判定されていた同じコースが、今日はボールと判定されてしまう”

 その二つの意味で、いままさに当社には法務機能の充実が求められている、このままでは会社の屋台骨が揺さぶられかねない と教えられました。

 さらにボスは、アパレルに必要な法務の分野を次のように三つに分けて定義されました。
  1)商標問題(その後「知的所有権」〜「知的財産権」と再定義)
  2)契約問題(国内の販売先や製造委託先との基本契約やライセンスやデザイナー契約など)
  3)消費者問題(当時は消費者クレームへの適切な対応という定義、現代ではCSRという言葉でくくられる分野)

 80年代半ばのアパレル企業において、このような法務ドメインを規定して専門部隊を有していたのは他にあまり例がなかったのではないかと思われます。

 入社当初は中堅ブランドの生産コントローラーに配属されて、“よしっ、アパレルの世界、全然わからんけど、モノ作り頑張るぞ”というモチベーションから、ほんの一ヶ月弱の期間で、“なんや、もっとようわからんけど、何やら大変な仕事のようだ…”ということで私の法務業務はスタートしたのです。

 そのときの苦労話など、追々ご紹介していければと思っているのですが、法務の仕事を始めてすぐに感じたことは、“なんで俺はアパレル企業に入って、こんな仕事をしているんだろう…?”という釈然としない思いでした。華やかかりし(私にはそう見えた)営業や、モノに携わっている生産の同期の連中の動きや話を羨ましく思うことも多々ありました。

 ところが、今になって振り返ってみると、社会人のスタートの数年間をそのボスの下で法務業務に関わることができたことが、その後の私のビジネスの礎になっていることを鑑みると、会社やボスや迷惑をかけっ放しだった周囲の皆さんには感謝の言葉もありません。。
 2007/12/12 22:32  この記事のURL  /  コメント(2)  / トラックバック(0)
委任と請負
 先日、“まっこと加護野先生に失礼な”とご紹介したファーストフードの会社ですが、日経ビジネスでCEOが次のように語っておられました。

 日ごろから、このような事態に備えて社長へのホットラインを敷いて、密告ではなく告発により情報が上がってくることを期待し、「手段があればよし。」としてしまった…と。

 民法上、取締役は株主と委任契約を結んでいることになるので、社会通念上合理的な期待のもとに一定の手段を講じれば委任契約上の責任は果たしていることになります。つまり、かのCEOは最少限の民法上の委任契約の要件を満たしたことで、よしとしてしまっていた訳です。

 ちなみに、委任契約とは一定のプロセスを業務委託するもので結果責任は問われません。一方で請負契約は結果を出すことが求められている契約形態です。たとえば、工務店が委任契約で建築を引き受けて、予定通りの100日間の労務は提供したけど建物はできませんでした、では許されませんよね。

 経営者は、一所懸命頑張ったけど利益は出せませんでしたということで、委任契約上の責任を問われることはありません。ただし、辞任を迫られたり、商法の手続きに従って解任されたり、次回選任されないことが起こり得るのです。

 また、昨今は商法の規定が改正されて、商法上の取締役の責務は強化される一方です。会社レベルでもコンプライアンスが強く求められ、経営者は“俺、委任契約だから…”とは言えない時代になりました。このニュアンスは、サラリーマン経営者にしかないもので、オーナー経営者はそんな発想はかけらもないはずです。

 このように、社会的背景や法律的背景によって、経営者が求められる責任の範囲や重さは複層しています。皆さんが当たり前と思っている常識と、社会的に求められているものにギャップがあると不幸な幕引きになりかねません。

 自分の理念や信念とは別に、法律(社会のある種の鏡のようなモノサシです)上のフレームワークを理解しておくことがいかに大切か、理解を深めていただくことを祈念いたします。



 2007/12/11 23:03  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
アイメッセージの大切さ
“急げども、散れば悲しき吉野の桜、もう一歩前へ”

本日お邪魔したクライアントのトイレでの張り紙の一句です。
 
 女性の皆様にはあまり馴染みが薄いかもしれませんが、男性の立ち姿の前には様々なPOPが貼られています。

 “今日もきれいに使っていただいて、ありがとうございます”

 これは、思わず仕切りなおしをせざるを得ない一文ですよね。一方で、“こぼすな”“散らすな”と言われると、放っといてくれと言わんばかりに短棒を振り回してしまうのは私だけでしょうか?

 広義では人事の領域、狭義では臨床心理学の分野にアイメッセージとユーメッセージがあるのをご存知ですか?アイメッセージとは“私は…と思う、感じる”という情報発信の仕方で、ユーメッセージは“お前は…だ”という情報発信のことを指します。

 思わずしょうもない振る舞いに駆り立てられかねないのはユーメッセージの方で、振り回した後にちょっと反省モードというのは、みなさん心当たりありますよね。

 一般に、アイメッセージは相手方の受容性を喚起しやすいという特徴があり、ユーメッセージは相手を追い込んで閉じさせてしまう傾向があると言われています。

 仲間や部下とのコミュニケーションでは、アイメッセージが有効な場合が多いと言われる所以はそこにあります。

 学生時代に住宅地図の作成のバイトをしていたときのこと、付き合っていた彼女を動員してヘルプをお願いして“このエリアからここまでをお願いできない?”とごく普通に言い回した私でしたが、後日その言い方が心地よかったと現在に至るまで25年を超える年月を共有するに至りました。

 おそらく、私の意思を押し付けたのではなく、彼女の主体性を喚起、尊重することができたことが功を奏したのであろうと、後知恵では分析できるのですが、当時はただの天然の私でした。

 管理職や上司という縛りの中で、本来、天然色としていい色をお持ちの皆さんが、異なる色で異なる権威を撒き散らしてはいませんか?
 
 アイメッセージは、言い方を間違えると単なる自己主張、独りよがりになりかねないのですが、相手のスイッチを入れてエネルギーをチャージするとても大切な魔法の杖ですよ。

 ところで、冒頭の一句は、前半はうまく韻を踏んでいるのですが、最後の収まりがよくありません。みんなで名句を完成させませんか?
 2007/12/07 00:24  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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