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ついに御上が動くか?
 経産省によるアパレルサプライチェーン研究会の報告書も一読の価値があるが、生活製品課の「取組方針」も必読だ。

 日経MJでは、“経産省、慣行に異例の指摘”“服、セール頼みにNO”“価格に対する信頼失う”と見出しがつけられたが、原典にあたると業界の現状がバッサリと切って捨てられている。

 価格に見合う価値のない商品を提供することは、目先の利益はもたらすが中長期的な持続可能性はない。売れ残りを値引き販売することを前提にした商品価値に見合わない高価格で上代を設定することは消費者本位に反している。

 商取引慣行については、「歩引き」「長期手形」「未引取」「受領拒否」「返品」「契約書不作成」「過剰供給と値引販売」と生々しい単語が並ぶ。

 J∞Qualityにいかほどのリアリティがあるのかは河合氏の議論にもあるとおりだが、産地の彼我以前にビジネススタイルがグローバルスタンダードには遠く及ばす、ガラパゴス化していたのでは話しにならない。いっそ仏のソルドのようにバーゲンを法の規制下において欲しいとも思いたくなる。

 ネットの普及とともにブラックボックスだった原価率が明るみに出たと報じられたが、プロパー店舗で上代の80%Offまでさらしてしまっては、自らケツを丸出しにして商売をしたようなもので、決してネット上の第三者による暴露だけではない。

 サプライ側の費用であるところの原価はあからさまになってしまった(とはいえ方々の議論で引用される数字はアバウトだったり、的外れだったりもする)が、フロント側の最大費用の家賃だけは未だ多くがブラックボックスだ。インターナショナルで展開されているスーパーブランドの歩率は…。FRやニトリが都心の館に果たしてどのような家賃条件で入っているのか…。

 SCからチャージされる歩率見合い以外のとんでも経費のオンパレードに辟易しているテナント側も少なくないだろう。一方で高い歩率ではあるが、それ以外の費用はびた一文チャージされない百貨店の潔さ。

 店頭における家賃と人件費がマージンを圧迫し続けることから、商品原価を圧縮させるほかなく、そうすると商品がチープになってプロパーで売れる訳もなく。SPAとはいいながら売場はディベロッパー頼みで、他人の場所を間借りするしかない宿命にもかかわらず、ディベと一体化したサプライチェーン最適化の議論がなされることはなく、アパレルはただただ原価を下げ続けざるを得なかった。

 しかしながら、セール玉やアウトレット専用商材の仕込みはアパレル側の単独犯であろう。
MJではセールという宴(うたげ)の終わりは近いと締められていたが、なんちゃってSCMに過ぎなかった似非SPAがセールというガス抜きを必要としたのであって、ガスの発生源を根絶させなければ根本的問題解決にはならない、

 SPAとは何ぞやを再定義して、経済構造を川上から川下まで一気通貫させた新たな価値連鎖の再構築が求められている。

 自分が当選するために本来の主義主張が劣後になる人々の動きを見ていると、短期的に自社の利益を確保したいそれぞれのプレーヤーが目先の自分の利害を超えて一段高い目線のテーブルにつくことができるかどうか、ハードルは決して低くはない…とため息をつかざるを得ない。
 2017/10/03 17:04  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
問題解決の要諦
 河合拓氏の寄稿論文「実践的な問題解決法(9/26繊研」を受けてみたい。

 各種ビジネススキル研修に登壇するようになって11年目に入るが、当初の目玉コンテンツであった“ロジカルシンキング”は、今となっては当たり前のイロハのような存在になった。そのイロハを寺子屋で学んだことがない世代が上級マネージャーや経営クラスの世代になっていることが、我が国の人材構造のねじれの一つになっているとも言える。

 私の講師生活10年強が経過した現在、もっとも旬なテーマは“問題解決”である。ロジカルシンキングの土台の上に、仮説思考を接着剤として問題解決が乗っかり、その上に戦略やマーケティングがさらに積み上げられるストラクチャーをよく引用するが、ロジカルシンキングを当たり前の前提にした中段の問題解決で多くのビジネスパーソンは躓いてしまう。

 さすがに新人に問題解決研修を課する事例はほとんど聞いたことがないが、早ければ2年次の研修から本格的に取り入れる企業もあれば、事業部を挙げて全ての部長と課長トータル数百名に複数回にわたって網をかける勇気ある行動をとることができる兆円規模の大企業もある。

 本来的には問題の定義(what)、問題の所在特定(where)、真因の究明(why)、そして対策の設定(how)の順に精緻に進めていかなければならないのが問題解決だ。ところが私たちには思い込みや思いつきのプレッシャーが重くのしかかり、“how思考の落とし穴”にはまり、“why”の先取りで鬼の首でも獲ったような錯覚に陥るのが常である。

 上記部長の面々とご一緒した際には、「俺たち、howのつまみ食いが大好きだし、それしかやってきてないよなぁ…」と自嘲気味に語りながらも、決して開き直ることなく真摯に問題解決プロセスに取り組む姿には感銘を覚えた。

 もっとも重要なのは最初の“問題の定義”だ。そこでギャップとしての問題を浮き彫りにするためには的確な現状把握と恣意的なあるべき姿の設定が必要となる。河合氏が言うとおり、数%しかない国内生産だけに限った議論を展開しても影響度合いが小さいと言うより、現状を的確に捉えないまま、how思考の落とし穴に落ち込んでいることになる。

 ファクトリーベースでの国内生産シェアは3%〜5%だと言われているが、それは場所的に日本国内で生産されたということに過ぎない。日本から手厚い技術指導と高いレベルの品質管理が施された海外ファクトリーは純国産に相当すると考えることもできる。

 また、メイドインイタリーやイングランド、フランスなどはインポートとして独自のブランドポジションと価値を提供してくれている。さらに、企画開発の情報生成がどこで誰の手によって行われているか、それがどのような拠点でプロダクトに供されて、いかなるグローバルロジスティクスを経て、どの流通チャネルを通じてどんな消費者の手に届けられているのか。この世界地図を認識することこそが現状把握ではないだろうか。当然、少なくとも素材と縫製に分けて考える必要もあろう。

 その上で、あるべき姿をどの座標点に設定するかは、それぞれのプレーヤー次第である。業界全体としての苦境を大衆受けする一般論で展開することと、このように真の問題解決者としてアプローチすることは別のこととして捉えなければならない。

 よしんば問題の定義はできたとしても、その次には絞りに通じる感度のよい切り口(MECE)を見いだすことができるかどうか、問題解決の道のりはただひたすら険しいばかりだ。
 2017/09/28 09:37  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
今こそ合従連衡
トヨタとマツダが資本提携だ。

 2009年の7月に「キリン、サントリー経営統合へ」という見出しが躍った紙面が思い起こされる。結果としては成就することはなかったが、その後サントリーは米国のビームを手に入れ、ウィスキー路線を突っ走ることになる。そのあたりの経緯は、永井隆氏の“サントリー対キリン”(日経ビジネス人文庫)を参照されたい。最近の人気本“キリンビール高知支店の奇跡”も悪くはないのでお薦めしておく。

 全くの余談になるが、サントリーの山崎が店頭のフェイスから消えた。手に入るのはCVSで売っているスモールボトルか車内販売で手に入るミニボトルだけだ。どうやら中国の業者が買い占めているらしい。とんでもないプレミアムが乗せられて売られているのだろう。さらに空き瓶を利用したパチモンも数多く出回っていることと想像される。

 ところで、欧州では2030年までには内燃機関を搭載したクルマの販売が禁止される。2050年頃には欧州には電気自動車しか走っていないことになる。欧州における電気自動車のデファクトはVWが握ったので、今回の提携からは、世界と対するには国内で競争している場合ではないという力学を読み取ることができる。米国は暫くはガソリンをがぶ飲みする文化から脱することはないだろうが、AIの頭を誰がとるのかもさることながら、電気自動車の覇権を握ることも産業にとっては死活問題だ。

 翻ってファッション業界に目を向けると…。

 海外も併せると1兆円を超えるファーストリテーリングという別格は存在するが、2000億やそこら以下の規模でドメスティックな競争を繰り返している場合ではないことは明らかだ。建築屋や音楽家のDNAに旬のブランドやビジネスモデルをさらわれているようでは情けない。

 FRとワールドが統合したら面白いことになるだろうなと思考実験を行ったことは、一度や二度ではない。どちらが頭をとるのか、人事はどうするのかという政治的要因は揉めること必携だが、ビジネスとしてはとても面白い未来の到来が期待される。FRもキャビンやビューカンパニーのM&Aでは忸怩たる思いが残っている筈だ。リンクセオリーが上手く収まっているのは代表のH氏のキャラに負うところが大きい。

 世界に打って出るどころか、世界レベルの戦いにおいて生き残るべく合掌連合を模索する必要がある。さらに退屈から逃れる大いなる気晴らしとしてのファッションの地位を低下させてしまった歴史のツケを支払うことは容易ではない。アッとさせられ、ウーンと唸らされるような技を披露してくれる経営者はいないものか。これまでのパラダイムをゼロセットしたウルトラF難度の技を期待する。
 2017/08/05 16:26  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
T・AI
 2013年9月にオックスフォード大のカール・フレイとマイケル・オズボーンが「雇用の未来:私たちの仕事はどこまでコンピューターに奪われるか」と題して発表された論文によれば次のようになる。

今後10年〜20年以内にコンピューターに奪われそうな仕事
 電話による販売員 99%
 データ入力 99%
 銀行の融資担当者 98%
 金融機関の窓口係 98%
 簿記・会計監査 98%
 小売業のレジ係 97%
 シェフ 96%
 ウェイター・ウェイトレス 94%
 タクシー運転手 89%
 理容師・美容師 80%

奪われそうにない仕事
 医師 0.4%
 小学校などの教師 0.4%
 ファッションデザイナー 2.1%
 エレクトロニクス技術者 2.5%
 情報通信システム管理者 3.0%
 弁護士 3.5%
 ライター・作家 3.8%
 ソフトウェア開発者 4.2%
 数学者 4.7%
 旅行ガイド 5.7%

 ここでのパーセンテージは、気象情報における降水確率と同様の読み方になる。98%とあれば、同じ状況下の10年〜20年が100回あったとすればそのうち98回はそうなるという意味だ。それはそうだろうなと納得するものもあれば、シェフや理美容士などは意外であろう。

 T・AIとはAIの頭にタイムシリーズを冠して「時間の人工知能」という意味だ。第一人者の小松秀樹氏の定義によれば、「逐次に投入される時系列データ(販売数量、出荷量)から、瞬時に膨大な計算実行・指標判定がなされ、最適な生産量・発注量・在庫量が出力される全自動システム」となる。

 氏はヒューマンエラーを以下の7つに整理して指摘する。
  1.ホワイトノイズ(不規則変動)を知らず、軌道修正もしない
  2.常識に安住したがる
  3.「動き」を知りたいのに“静止画的発想”をする
  4.安易な相関や答えありきの理由付け
  5.ショック時の過剰反応に気付かない
  6.異常を正常にしてしまう
  7.間違いに気付かない

 私が業界に携わった頃にはなかった概念と職種の代表にDB(ディストリビューター)があるが、DBなる業務は人間の生業ではなくなるのは必須のようだ。MDにおける発注業務も人間がやるべきではない。唯一の牙城であるクリエイティブ業務のDNAが失われているとしたら、もはや生き残る術はない。万一ゲノムに欠損があれば、早急に修復する必要がある。

 2017/07/14 10:11  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
クリアランスとバーゲン
ルミネが夏のセール開始時期を7月28日まで引っ張ることにした。

 もともと三越伊勢丹と並んで期末のセール時期を遅らせてきた男前館であるが、本来なら8月スタートにしたかったという。

 まったくその通りだ。海の日が7月20日に制定されたのは95年、7月の第三月曜日のハッピーマンデーになって以来、夏のセールは少なくとも海の日連休の次の週末からと言い続けてきたが、ようやくそのときが訪れたことになる。もっと進化形というか期末の在庫処分という意味で本来形に移行するならば、お盆休みにスタートするのがより適合的だと考えられる。

 秋冬のセールは少なくとも松の内明け、できれば成人の日の連休から、もしくはその次の週末からが望ましいが、来年のセールカレンダーがどう変化するか楽しみだ。

 とはいえ、アウトレットが恒常的商業施設として定着し、EC上でのポイントを介したセールが乱発される昨今、プロパーのリアル店舗での上代でのショッピングという概念が消費者の心の中に占める割合がどれくらいシュリンクしているのかし続けるのか計り知れない。

 ところで、セールと一括りで言ってみるものの、クリアランスとバーゲンとセールの関係性と定義がどれくらい正確に認識できているだろうか。

 セールは大売り出しのことで、大量に売るんだから上代(定価)販売ではないよねという意味。セールの下位概念がクリアランスとバーゲンで、前者は今期商品のマークダウンを目玉にした期末残在庫値下げ処分売り出しのこと。後者は日本語では特売と称し、キャリーの不良在庫や流通過程でデッド在庫として隠れていた商品などの訳あり商品も含めて超お買い得な場となる。

 そうすると、プロパー店舗が期末に行うのはクリアランスセールで、バーゲンセールをやるならばハコの外に出ていって催事会場でも催して実施しなければならないことになる。多くのアパレルがセール玉を仕込んでいるので、プロパー店舗でバーゲンと銘打っても言葉の定義上は正しいことにナルというのは笑えない逆説的笑い話ではある。アウトレットは存在そのものがバーゲンだ。

 ただの言葉遊びにしか聞こえない人も多いだろうが、言葉の定義が曖昧になり、売り方/買い方の秩序や申し合わせが崩れてしまい、上代(定価)で商品を買うことの意味と価値をわからなくさせてしまったツケはあまりにも大きい。

 公取の指定を受けた商品以外で再販価格が維持できているいる数少ない商品の一つがアパレルであるが、秩序回復に向けた業界挙げての中長期的目線合わせが求められている。

 時間軸を30年〜50年くらいのスパンに置くと、北海道を除くエリアが亜熱帯地方になっている可能性も議論されていることから、そもそも期末のクリアランスという風物詩は気候の上で我が国から消滅してしまうのかもしれない。
 2017/06/20 08:31  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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