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応仁の乱
 京都の人々にとって、“前の戦争”とは「応仁の乱」のことだ。先の大戦で空襲を免れた京都にとっては数百年前に京都を焼き尽くした内戦の方が生々しい歴史の記憶として深く刻まれているのだろう。それほどの阿鼻叫喚が11年もの長きにわたり続いたのが応仁の乱だ。ただし、欧州には100年戦争や30年戦争が普通にあるので、我が国はコマいといえばコマいけれど。

 その他の人々は“人の世虚し(1467年)”と受験対策で覚えた程度だろうか。売れてるから読んだというよりも、読む必要性から手に取った。

 先週土曜日のの北村塾では、與那覇潤氏の「中国化する日本“日中文明の衝突”一千年史」を扱った。氏の提起する“中国化”vs“江戸時代化”というフレームワークは、時代を超えて国や地域を越えて世界全体の流れを理解することにも有効な画期的枠組みだ。

 増補された文庫本の前の単行本をマクロ経済学者の中谷巌氏が絶賛するのも十分に頷ける。その一方で歴史学の重鎮の方々からは総スカンをくらっているであろうことも十二分に拝察される。皮肉満載の言い回しは倉山満に通じるところがあるが、倉山氏が路上ですれ違いざまにメンチを切るヤンキー系なのに対し、與那覇氏はネット上でチクチクつぶやく系というコントラストがある。

 さて、応仁の乱に至る経緯はというと、與那覇氏が引用した内藤湖南の日本論に遡る。湖南によれば、中国史を一箇所で切るならば、唐(中世)と宋(近世)の間、日本史を一箇所で切るならば、応仁の乱前後ということになる。

 日本は中国に遅れることおよそ500年でようやく近世に突入したという議論だ。湖南の論説から読み取れることは、戦と政治の庶民化が動き始めた分水嶺が応仁の乱だと位置づけられることだ。名のある武士の一騎打ちの時代から、腕に覚えがあるチンピラ集団である足軽による略奪と破壊が11年の長きにわたって続いた。大きな屋敷を抱えていた貴族や社寺仏閣は疎開して難を逃れるしかなかったという。窮極の下克上の始まりだったのだ。戦国時代の足音がすぐそこまで迫っている。

 そして思想の上においても、その他すべての智識・趣味において一般にそれまで貴族階級の占有であったものが、一般に民衆に拡がる傾きが起こったと評している。すなわち、応仁の乱は軍事革命であり精神革命であったということだ。

 そこから100年ほどの戦国時代を経て江戸時代を選択した我が国であるが、與那覇氏は、なぜ近世の日本人がこの期におよんであえて身分制社会を選んだのか?という問いに対して、イエとイネの好循環という仮説で応えている。

 イエや地域というコミュニティが崩壊し、現代のイネであるカネは偏在し底辺の人々は喰えない時代に突入しつつある今、何処まで中国化(人間関係のネットワーク化と社会の流動化)が進み、どこでどう再江戸時代化(人間関係のコミュニティ化と社会の静態化)という
揺り戻しが訪れるのか大いに議論が盛り上がった。

 私からの問題提起は、インフラ的にはネット上でコミュニティを形成することができるようになった今、人間関係のネットワーク化とコミュニティ化は二項対立の概念ではなくバーチャルには共存することが可能になったが、それは今後どのように運動していくかという問いだ。

 到底私たちが半日で答えを出すことができるような問いではないが、私の仮説は、江戸時代化が絶対的本質的方向性であり、それが地理的範囲という殻を超えるときに中国化が起こったと観察されるのではないかというものだ。ここで用いている中国化と江戸時代化という概念は、中国と江戸時代の一般的理解から勝手に想像すると全く正しい議論ができないので、気になる方は與那覇氏の著書にあたって欲しい。

 最後に、応仁の乱がベストセラーになっている理由を私なりに解釈すると、勝者なき勝利の虚しさ、ヒーローなき乱世の寂しさ、身分制・世襲制による特権階級に対する庶民の反撃。すべてが現在に重ねて透かせて見ることができるから多くの人々に読まれているのではなかろうか。

 そこから先は二通りの反応に分かれる。応仁の乱を読んでバーチャルに溜飲を下げてそれで終わるのか、リアルに馬を駆って戦国の世を駆け抜けはじめるるのか。できれば後者として次の時代を切り拓く人材や企業でありたいものだ。ただし、くれぐれも江戸時代に再突入することがないよう注意が必要だ。


 2017/05/29 07:39  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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