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本質を議論されたし
自民党の強行採決によりカジノ法案が衆議院を通過した。

 そもそもIR(総合型リゾート)という上位概念がまやかしのセールストーク用のビッグワードであることが私には気に障る。ビッグデータやクラウドが最先端のIT用語として飛び交っているが、どんなストレージにどんなデータを蓄積して、どのレベルの演算能力とメモリーでぶん回すかはユーザーの勝手であってベンダーから売り込まれる筋合いはない。

 カジノはIRにとって決して必要条件ではない。したがって、議論の本質の第一は、我が国にIRなるものが必要なのかどうかという点とIRにカジノは必須かということだ。雇用創出と経済効果が伝家の宝刀のように持ち出され起爆剤という言葉が流用されているが、起爆した後にどのような時間がどのように流れていくのか、抽象能力と想像力に乏しい政治家たちに何が期待できようか。手続き上の突っ込みしかできない野党にもがっかりする他はない。

 縮小する経済と減少する人口を背景とする我が国の100年の計を語る人材はいないのか。ほとほと懲りないのは大阪で、箱物の残骸は記憶ではなくいまそこここにあるにもかかわらずだ。宵越しの金を持たなかったのは江戸っ子だが、宵越しの失敗を持ち越さないのが大阪か…。

 いまひとつの本質的論点は賃金の使い道と付加価値創出の手段と目的論である。アダム・スミスやカール・マルクス多くの間違いを論じてしたことを私たちは後知恵ではわかっているが、それ以上に彼らが素晴らしい理論の数々を残してくれたことも忘れてはならない。

 マルクスは労働力の再生産という概念において賃金を次の三つに分解した。食べることにより短期的に自分自身の労働力を維持すること、家族を養うことにより中長期的に次の世代の労働力を生んで育てること、そして余暇に休んだり遊ぶことで自分と家族の鋭気を養い結果的に短期と中長期双方の労働力再生産の原資とすることである。

 ギャンブルがゼロサムゲームであることはいまさら説明するまでもない。さらに巨大な設備投資と雇用創出を支えるとなるとプレーヤーに還元される原資の歩留まりは現状の75%を
大きく下回る可能性すらある。労働者が経済的付加価値以外の社会的効用を伴わない単なる浪費により自己の労働力の再生を図ることを全面的に否定することはできない。かくいう私もニコチンおよびアルコールに依存しない日々はありえないという有様だ。幸いおねえちゃん系は全く無用であることから何とかバランスがとれているお恥ずかしいレベルに過ぎない。

 カジノはお金の流れは生み出すが、社会的効用としての付加価値の創出はそれらのお金を得た法人や個人に委ねられることになる。消費市場におけるモノやサービスを通じて利便性や文化などの社会をより豊かにする付加価値の増大を直接的に期待することはできない。

 しかも我が国にはすでに30兆円弱(うち20兆がパチンコ)のギャンブル市場がすでに存在している。依存症は500万人を超えているという。国民25人に一人が依存症という恐ろしい現状だ。自分の家の周囲10軒の中に一人のギャンブル依存症が居るという勘定になる。なんということだ! 日曜討論にて本質にかする議論を展開していたのは唯一日本共産党だけだ。日本維新の会の主張などは、はぁーっ?のレベルに過ぎなかった。

 小泉氏、村山氏、細川氏などの歴代総理を先祖返りを看破してと痛烈に批判するのは青山繁晴氏(壊れた地球儀の直し方)だが、先祖返り以前にずっと先祖のままなのがいまの政権政党なのだろう。そのような輩は現野党が政権を担っていた際にも鳩山某として存在するから、おしなべて政治家はステレオタイプで見ざるをえないことを学習させられるのが我が国の現状だ。

 官僚は公家のごとき自尊心と差別的階層意識を背景にして、政治家は武家のごとき暴力を背景として既得権益の死守にやっきになり、私たち国民を生かさぬよう殺さぬようと、搾り取ることのみに邁進する。

 青山氏は「超国民」としてこれまでの国民のあり方を変えて、自ら考えて決断する国民たれと強烈なメッセージを発信している。それは世界に対して我が国がという視点と、国家に対して国民がという両方を含んでいる。

 ノーブルオブリージュは世界の知識人や一流の人々の間では常識的倫理観である。稼いでいる人間は法人も含めて多額の直接税をきちんと払い込む義務がある。パナマ文書に絡む人々は塀の外をあるいている非社会的組織構成員だ。第三のビールが増税されることになり小さな財布が傷む私たちは、超国民としてのありようが問われている。
 2016/12/04 16:06  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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