« システムの限界 | Main | 血の経営学 »
七人の侍
 慶應ビジネススクールのケース教材に、家庭用VYR“VHS”の開発プロジェクトを扱った「日本ビクター株式会社」がある。これまで何度か研修で取り扱ってきたが、今回、はたと新しい視点に気がついて、受講生に伝えたことがある。

 同ケースはプロジェクトを率いる高野鎮雄のリーダーシップを背骨としつつ、彼を取り巻く6人のコアメンバーのフォロワーシップの発揮具合にまで言及しているセルフリーダーシップ論を展開するには、まさにうってつけの教材である。

 総体的にハーバードのケーススタディより議論しやすいのがKBSのケースだが、中でも平易に取り付くことができて、そのくせ幅広の深い議論が展開できる優れもののケースである。
40歳代に満たない世代は当時のVHSとベータマックスのディファクト争いをing形で知る由もないが、その後、DVDvsブルーレイ、プラズマvs液晶、そして現在でもiOSvsアンドロイドとそれらの戦いは半永久的に近似する歴史が繰り返されているので、受講生の腹落ち感は十分に大きい。

 NHKのプロジェクトXでも取り上げられてたことから、それを見たことがあるという受講生にも時々出くわす。
 http://www.dailymotion.com/video/x3lwk1y

 余談であるが、プロジェクトXが比較的チームに焦点があてられた一方、プロフェッショナル仕事の流儀は徹底的に個人にフォーカスしているように感じられる。その方がやらせの落とし穴にはまるリスクが小さいのだろうか(笑)

 さて、はたと気がついた新しい視点とは黒澤明の「七人の侍」との共通点である。米国にはそれをパクった西部劇「荒野の七人」があり、私たちは中学一年生の時に荒野の七人を地上波のロードショー番組で見て感動し、その後レンタルビデオが普及してオリジナルの黒沢作品を見て、さらにグッときた世代である。

 待てよ!志村喬とユル・ブリナーが高野鎮雄だとしたら、あとの六人の侍たちを合わせてまさに七人の侍ではないか。しかも他の六人のキャラクターが個性的に果たしている役割も映画で展開される世界とそっくりだ。何よりも重要な共通点は、世のため人のためという大義名分が全ての出発点になっていることだ。高野には家庭のリビングでいつでも映画が見られるという幸福を世にもたらしたいという強い思いがあり、その信念が終始プロジェクトとメンバーを引っ張っていった。

 それぞれの映画は、相応の報酬を支払うこともできない貧乏村を、ただただ賊の襲来から守り通すという大義がリーダーのモチベーションの源泉となっている。メンバーには、ほんとうは後ろに大金が隠れているのだろうと信じて疑わないまま戦いに倒れていく市場規範人材も交じっているが、それはエンタメ上の演出に過ぎない。ブレることなく貫かれているメッセージは、社会規範に基づいて人は動くしチームを束ねることができるということだ。

 社会規範で秩序が形成されているところに市場規範が入り込むと、社会規範はもろくも崩れ去ってしまう。昇進昇格や賞与を伴わざるをえない企業活動は、それ故にマネジメントが難しいのである。処方箋があるとしたら切り分けることだ。戦国武将のノウハウに、金銭的報償(領地と石高)は戦績に応じて提供し、位(地位)は人望に基づくべしというものがある。つまり、短期的成果は短期的金銭で精算して、将来にわたって影響を及ぼす昇級や昇格は人望に基づいて実施せよということになる。

 ここでもヒトとコトとを切り分けることが求められているのだ。かかる日本ビクターもJVCケンウッドに吸収合併されて消滅して久しい。栄枯盛衰、輪廻転生
 2016/11/17 20:16  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

トラックバック

この記事へのトラックバックURL  ※トラックバックは承認制となっております。
http://apalog.com/kitamura/tb_ping/671


コメントする
※コメントは承認制となっております。
名前:
Email:
URL:
クッキーに保存
小文字 太字 斜体 下線 取り消し線 左寄せ 中央揃え 右寄せ テキストカラー リンク


コメント


プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

北村禎宏 プロフィール
リンク集
カテゴリアーカイブ
最新記事
2016年11月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
月別アーカイブ
最新コメント
Sayo
ファッションのコモディティ化 (2015年12月11日)
冨田さより
すごい学生がいたもんだ (2015年08月09日)
しの
日本人の忘れもの (2013年02月11日)
nobu
やっぱやられた (2012年10月24日)
北村禎宏
ダイバーシティにて (2012年05月24日)
最新トラックバック

http://apalog.com/kitamura/index1_0.rdf
更新順ブログ一覧
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード