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入口確率と出口確率
 小野薬品工業のオプジーボの適正価格を巡る議論が騒がしい。大手製薬会社の所長、チームリーダー、マネージャー、若手に至るまで、今年は問題解決ワークショップにドハマリしていることから、業界情報には敏感にならざるを得ない。

 「国の薬価制度がいまの薬にあわなくなってきている。小野がけしからん。オプジーボがけしからんではなく議論して欲しい。」とのトップの談話は全くその通りだ。新薬開発の成功率は三万分の一とも言われるとの報道であるが、何が分母で何が分子なのかが特定されなければ確率に基づく議論にならない。

 いわゆる標本空間および母集団とサンプルの定義がなされないと議論が始まらない。基礎研究も含めて全てのトランザクションが分母なのか、それともある程度のイシューに集約した上での開発テーマが分母なのかでオーダーが桁違いになってしまう。さらには何をもって成功とするのか。上市されなければ成功とは定義されていないと思われるが、どの程度の競争優位性が何年ほど継続して結果どれほどの利益がもたらされた場合を成功とするのか。

 三年で単黒、五年で回収という一般的事業会社の財務基準もあるが、メディカル業界のモノサシは全く異なると考えられる。まずもって、入口の確率を方程式化しないことには薬価基準の算定もままならない。

 患者本人が一日でも長生きして、場合によっては完治を目論むことを否定するつもりは毛頭ない。むしろ人としてごく自然な欲求であり周囲がそれを望むことも何の問題もない。ただしコストが数千万円となると異なる次元の議論が登場してくる。次世代支援、次世代に負担を残さないというパラダイムに依拠すると、それらのコストを自分の延命に投資するのか、次世代の次世代育成のために投資するのかを天秤にかけることになる。臨床事例が蓄積すれば、もともとの皮膚がんや新しい処方先としての肺がんでの生存率が高い精度の確率で表されるようになるだろう。

 現時点でもそれは可能であり、ゼロ出ない限りチャレンジするのが医師としても患者としても当たり前の有り様だと考えられる。ほぼ確実に残すことができる次世代の環境と、出口確率に基づく自己への投資と、どのようなポートフォリオを組むべきか、今後多くの人々を悩ますことになるだろう。

 迷わず全コストを次世代のために投資することがオール人類にとってはベストチョイスであるが、そのような英断ができる個人がどれほどいるだろうか。また、次世代が浪費してジエンドというシナリオも確率ゼロではないので余計に悩ましい。

 急に売れ始めるにはワケがある。閾値を超えた瞬間、需要は爆発的に拡大する。ほぼ完全自由市場のアパレルも値入(原価率)と上代設定には頭を痛めている。神の見えざる手が相手だからだ。当局の見える手による規制も同様もしくはそれ以上に難し側面を抱えている。

 計画経済は、需要を消費者の自由意思に委ねることなく統制して、それにあわせて計画的に供給していくシステムを標榜したが、歴史がそれはありえないことを証明した。バリューとマージンを後付けで最適配分する仕組みはできないものだろうか。後出しジャンケンはあり得ないのが法治国家と経済社会の基本パラダイムであるが、

 私たちは後出しを禁じている限り博打的要素は排除できないというジレンマから逃れることはできない。資本主義はギャンブルだ。私たちの行動は予想通りに不合理、そして結果はたまたまに過ぎない。

 先日、永年お世話になっている通信キャリアの公募型社内研修でたまたまの出会いがあった。独立後すぐに大変お世話になった企業にいた人材との再会であった。その会社は精算の憂き目にあって、今なお地道にビジネスを続けているとのことだが、その方は商社系通販会社に転職して、その会社が通信キャリアにM&Aされて今があって、そして劇的な再会であった。それもこれも、たまたまに過ぎない。
 2016/11/08 17:06  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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