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ニワトリタマゴ
 「ニワトリとタマゴ」は、ビジネスの場面でもよく聞かれる定番の喩えだ。因果関係の後先を厳密に特定することはできないけれど、いずれもがいずれもの原因と結果になるような相互依存関係に陥っていることを意味する。

 はたして私たちは“共変”“相関”“因果”の違いを理解した上でどこまで正しく使い分けることができているだろうか。特にやっかいなのが相関関係で、どちらかがとぢらかの原因のごとく見えている、もしくは恣意的にそう決めつけたいような場合において、実は第三の真因が存在していて、因果関係があるかに見えていたふたつの事象がどちらも真因に基づく結果に過ぎなかったという見誤りは少なくない。米国ではジャンクフードとそれを多食する青少年の素行の因果、我が国では親の学歴と子供の学歴の関係などがよく引用される。

 百貨店の大量閉鎖時代に高級ブランドが路頭に迷うと報じられるが、どちらが因でどちらが果なのか特定することは難しい。そもそも十年以上も前に、当時大丸のトップだった奥田氏が「我が国に百貨店は100店舗も必要ない」と発言していたことを、どれだけの人々が真に受けて行動に移すことができて、どれだけの人々が真に受けることなく無為な時間を過ごしてきただろうか。百貨店はその後漸減を余儀なくされているが、SCはオーバーストアの閾値を遙かに超えていたにもかかわらず出店の勢いを止めることはなく、ここに来て大量閉鎖の運命に見舞われている

 そのような「自分は大丈夫、まだ大丈夫」という認識は認知バイアスの中でも正常性バイアス(正常化の偏見/恒常性バイアス)と呼ばれている。私たちは、基本的に変化や異常値を嫌う本能が備わっており、かつ自分が現役のときに、まさか…という感覚を普通に持っている。うちの子に限ってという決まり文句も何度耳にしたことか。

 「すでに起こった未来」はドラッカーの13本の論文のオムニバスだが、そのメッセージが示唆するところは深い。そこでは、すでに起こってしまい、もはや元に戻ることのない変化、しかも重大な影響力を持つことになる変化だと定義されている。事実としての変化もしくはその兆しは確実に惹起しているが、意図するとしないにかかわらず認識が伴っていない場合、その変化に対応することができない。認識があっても行動に移すことができなければ、これも対応できない。行動に移しても結果は神のみぞ知るということで、まこと変化に対応することはハードルの高い所作なのである。

 法学的に表現すると未必の故意に基づく共同正犯のようなものだ。このまま右肩上がりはあり得ないよね、このままだとヤバいよねと薄々感じながら、その年々の売上を盲目的に追いかけ続けたツケはあまりにも大きい。集団自殺のようなものと表現した意味はそこにある。

 処方箋はズバリ、二つの壁を越えて合従連衡すること。超えるべきひとつめの壁は会社や業界の壁で、ふたつめは売上と利益の規模を追いかける壁だ。どちらもそう簡単には超えられないのがビジネス界の実状ではあるが、そうやって言い訳している限りはすでに起こった未来に対応することはできない。
 2016/10/10 16:55  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

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