どうなるジーンズ市場
東洋経済3/13号からの引用です。「米GAPのシェアの天井8%にユニクロも近づく」との見出しが躍りました。

 GAPのシェア率の天井を引用して、それを超えると自社競合が始まるというロジックで、グロスのシェアは3.8%に達しており、インナーの国内シェアは既に14.5%に、ジーンズのそれは13.1%であることから、アイテム別に臨界点を超えたものが出始めており、全体としても危険水域に近づきつつあるという論旨でした。

 そこに、スーパーでの販売を除くそれまでのジーンズ市場が7578万本でユニクロが1000万本という数字が出ていましたので、ここでは価格弾力性のフレームワークでひも解いてみることにします。

 ユニクロを始め、990円、890円、690円などが登場する前のジーンズの平均単価が6000円だったものが、今や2000円の平均単価に下落したと仮定します。

 一般には、価格が三分の一になったと表現し、その場合に売上数量が三倍になれば市場規模は維持できます。価格弾力性的には、価格が100%下がったことになります。100%の値引きを行うと売値は只になるような感覚がありますが、100%下がった結果三分の一にな
るのです。

 逆に売上数量が100%増加したときに三倍の数量になり、価格弾力性が1でよかったねということになるのですが、実際のマーケットがどのように推移するのか興味深く見守りたいと思います。

 既存のジーンズの販売数量は、日本の消費活動を行う国民が年間一人一本買っている計算になります。さて、そのようなマーケットが数量規模で三倍になりえるのか…?

 弾力性の大小に影響を及ぼす要素は、四つあります。第一は、その国のその時代固有の需要曲線と供給曲線です。第二は、必需品かどうかの度合いです。第三に普及率があり、最後に利用率が関係してきます。

 シーンズを実用衣料ととらえれば必需品に近づきますが、はたしてそうでしょうか???
これまでジーンズというアイテムに無縁だった人々が購買に走っているとしたら、普及率にはまだ若干の余裕があったことになります。これが唯一の救いで、最後の利用率は、毎日はくかどうかという問題ではなく、どれくらいの頻度で消費するかという問題です。一定の耐久性を備えて長年の着用が味を出すジーンズに高い利用率は期待できないと考えるべきです。

カタストロフィーがちらつくのは、私だけでしょうか?
 2010/03/19 08:42  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)


値下げの明暗
本日の日経に“値下げの明暗”と題した記事が掲載されていました。

 相次ぐ値下げ(現時点で8回)を続けることができているニトリは、毎月1割程度の客数増の勝ち組で、追随した良品計画は需要を先取りしただけに終わり三カ月で鎮静化。

 130円のチョコ二品目を15円値下げした不二家の前年比6%の売上増に対し、後発の森永は15円下げても前年比横ばい。

 牛めし並盛を380円から320円にした松屋は、客数が5〜7%増で売上は微減。片や330円を280円に下げたゼンショーは、客数10%以上増で売上はプラス。

 観劇チケットを平均15%下げた劇団四季の客席稼働率は79%から84%に上昇。

 これらはすべて我々が日常的に取り扱っている数字を用いた議論ですが、厳密な価格弾力性の議論をするには、もう少し突っ込んだ数字が必要になります。

 ニトリの事例は、連続的値下げ効果で総分母にあたる来店客数の爆発的拡大が起こっている可能性が大と考えられます。購買率がどう推移しているかが不明ですが、結果的に来店客数×購買率が10%上昇したわけです。一点単価は下落し続けていますが、それを上回る
購買者数と平均購買点数(セット率)を確保できたのだと想像されます。

 弾力性的議論を展開するには、当初価格と現在価格、購買客数、セット率、一点単価を厳密に見なければなりません。もしかしたら、家具のマーケットは既に飽和していて、ニトリやイケヤの活動は、市場の拡大に寄与しているのではなく既存市場を他社から奪っているだけで、マクロ的には既に市場をシュリンクさせる破壊的競争に陥っているのかもしれません。

 チョコレートの130円から15円の値下げは弾力性計算では▲12.2%になります。130円のときに100万個で1億3000万円だった市場が6%増の1億3780万円になると、数量ベースでは約131万個売ったことになります。この増加率は弾力性計算では、26.8%の数量増と計算さ
れますので、不二家のケースの価格弾力性は2.2(26.8÷12.2)となります。

 同様に森永のケースは、元の価格が同じ130円だったとすると価格弾力性は0.88(10.7÷12.2)です。

 一般に普及率の低い贅沢品は価格弾力性が高く、必需品であればあるほど、普及が進んでいればいるほど低くなります。嗜好品に属すると考えられる同じチョコレートが価格弾力性2を超えるものと1を大きく下回る結果になった明暗を分けた理由には、少なくとも次の二つが考えられます。

 第一は、販売促進施策の巧拙です。これには広義で流通チャネルを含む恒常的販売力も含まれます。第二は、顧客にとってのポジショニングが両社の商品間で異なっている場合です。ポジショニングのマッピング軸はいろいろが考えられますが、不二家のそれの方が森永よりも、より非日常的でより新鮮な価値の位置に少しだけシフトされていたという仮説が成り立ちます。

 北京で蝶が羽ばたくとニューヨークの天気が変わるというカオス理論の含意は、複雑系における予測困難性と初期値の微細な差異が最終的には大きな結果差異を生むことの二点です。マーケットポジションのほんのちょっとした違いが、価格弾力性に大きな違いを生む可能性があることに気付いた私は、頭の中で電流がスパークしました。

 価格および所得弾力性の議論と、最近めっきり聞く機会がなくなったカオス理論を融合することで、マーケット動向をひも解くヒントが得られるのではないかと!!

 牛丼やチケット、さらにはジーンズにも言及しようと思ったのですが、家具とチョコでこれだけの分量になってしまいましたので、続きは次稿にゆずります。

深いです、弾力性。
 2010/03/16 22:29  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)


弾力性の数理
弾力性の数理については、大半の人が正しく理解していない(誤解している)可能性があります。

 一万円の上代の商品が一万枚売れている一億円の市場があるとします。価格が半分の五千円になったときに、売上枚数が倍の二万枚になったら、売上金額は一億円のままですので、これぞ弾力性が1の世界だと言うことができます。

 ここで注意が必要なのは、半分と倍は日常的には均衡しているように感じられますが、元の数字を分母にすると、前者は50%ダウン、後者は100%アップということになり、変化率が二倍異なります。

 一万円の価格が五千円になった場合、弾力性の計算では66.7%下がった(5000÷7500)と計算します。一方で、一万枚が二万枚になったのも66.7%(10000÷15000)なので、その場合の価格弾力性は1になります。

 違う事例で考えてみましょう。五千円の商品が三千円に下がったとき、一般的には20%の価格ダウンと認識しますが、弾力性の世界では、50%(2000÷4000)になります。アップダウンは微分係数で認識することから、“差額の中間点÷差額”で計算しなければならないからです。

 そして売上数量が三千枚から五千枚に増えたら、(差額の中間点=4000枚)÷(差額=2000枚)=50%となり、その場合の価格弾力性は1になるのです。一般的な計算では、価格ダウンが40%で、枚数アップは66%強になりますので、大きな数字的乖離が生まれます。

 検算してみましょう。一万円の商品の価格が20%下がったら8000円です。一万円のときに一万枚売っていた市場が、20%アップの1200枚になるとしたら、8000×12000で9600万円にしかならず、以前の一億円の市場は縮小してしまいます。この場合の価格弾力性は1で
はなく、(1000÷11000)÷(1000÷9000)≒0.82が正解です。

 さて、週明けの朝一から難解な数字にお悩みの諸兄に一言申し上げます。

 価格が半分になって、市場規模を維持しようと思うと、その倍の加速度で需要枚数が増えなければならないのです。価格が一割下がった場合に金額的市場規模の維持に必要な、需要枚数のアップ率は一割を優に超えるのです。

 低価格競争も大いに結構ですし、デフレの波は、ミクロの力では止めようがないようにも見えます。しかしながら、少子化(人員的パイは縮み始めた)社会の我が国で、GDPや実質所得が伸び悩んだり減する中で、価格を下げる行為が何を意味するのか、何を実現しない限り市場規模を維持できないのかを、考え直さなければえらいことになります。

 微分係数は積分値に加速度的なインパクトを与えることを忘れてはなりません。
 2010/03/14 21:07  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)


素人の浅知恵でした
 過日、「主観と客観」の稿で、トヨタの品質問題について勝手な議論を展開いたしましたが、全くの素人の浅知恵でした。技術的な解説は、日経ビジネス3/8号に詳しいのでそちらをご参照ください。

 しかしまあ、最新の電子制御の仕組みは凄いことになっているようで、アクセルペダルはその角度を電子的に感知してコンピュータがスロットル弁の開閉をコントロールするのだと。これは、容易に想像もつきますし、受け入れやすいものですが、ブレーキまでとは恐れ入ります。

 つまり、私たちは油圧を通じてブレーキパッドを直接支配しているのではなく、踏み込み角度を検知したセンサーを通じたコンピュータがその仕事を行っているのです。

 ところが、ドライバーには物理的な“踏み感”が返ってこないと微妙なブレーキ操作ができないことから、別系統のシステムがバーチャルに踏み感を演出しているとのこと。

 さらには、ハイブリッド車には回生ブレーキと摩擦ブレーキがあり、ABSが働くと摩擦ブレーキオンリーになるシステムであることから、タイヤが滑ってABSが作動した場合には回生ブレーキへの油圧をカットするために弁が解放方向に作動し、それがドライバーに一瞬の抜け感を伝えてしまうことが今回の出来事であったと。

 こんなとき、昭和世代の私たちは「恐れ入谷の鬼子母神」と声を発したものです。(天知茂よりはレベルが高いですが、とりあえずこのパラグラフは読み飛ばしてください)

 最先端の車に乗っているみなさん、まさかブレーキの踏み感がバーチャルに後付けで味付けされたものだと知ってました?確かに技術の進化とそれに伴う安全性の進歩は素晴らしいことですが、それらと引き換えに失っているものにも気を配らなければなりません。

 盛岡で学生生活を送っている愚息が、先日二週間ほど帰省していました。雨の降りしきる金曜日に初めて彼の車で駅まで迎えに来てもらったときには、思わずこみ上げてくるものがありました。

 さて、彼の愛車は20年落ちの日産トラック(いわゆるダットラ)です。車庫入れの際には、この車、ハンドルが壊れてるんちゃうかというくらい重たいステアリングですが、これぞ車です。チョークあるし、キャブレターあるし、当然アクセルはワイヤーを介してスロットル弁につながっているし、ブレーキにも一切のバーチャルは介在していません。窓も手を回してグリグリ開けるしかありません。

 私たちは、何かとても大切なものを置き去りにしながら文明を発展させている可能性があります。海馬に訴えかけるマーケティングもそのことに通じるものがありますし、何よりも洋服を通じて、何をリアルに伝えて、これだけはバーチャルでも許容されるという礼儀とでも言うべき一線が失なってはならないことを忘れてしまってはいませんか?

 弾力性という科学と、礼儀という感性でアパレルの将来を考えていきたいと思います。
 2010/03/10 22:58  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)


続・弾力性
 東洋経済、エコノミストの表紙に、「百貨店、スーパー大閉鎖時代」「百貨店沈没」の見出しが躍っています。

 価格弾力性の理論では、それが1を下回る商品を値下げすると市場が縮小することになります。スーパー(GMS)は数十年の長きにわたり“(普及率の高い必需品の)安売り競争”を継続した結果、市場がシュリンクしてしまったのです。

 逆張りをしたのがCVSで、利便性という付加価値を梃子に、生活必需品なんだけど値下げしないで済む業態開発に成功したので市場を拡大させることができました。

 百貨店は自らの高コスト体質を見直しすることなく歩率を漸増させ続け、限界粗利(前売−歩率の意味で使っています)がきつくなる一方のアパレルは、上代を維持したまま原価を下げ続けてきたのが百貨店アパレルを取り巻くここ10数年ほどです。

 突如襲ってきたデフレの大波に対して、慌てて上代を下げたのですが、いったん原価(品質)面で臨界点を下回ってしまっていたアパレル商品は、普及率が高い必需品のカテゴリーには入りませんが、決してさほど普及していない贅沢品の域でもないことから、価格弾力性は1を超えていないと推定され、一気にマーケットが縮小していると理解することができます。

 アパレル業界や流通業界で、この経済フレームワークを駆使して将来を真剣に考えている企業や人材はまだ少ないのではないかと憂慮します。私自身、価格弾力性と所得弾力性の理論を完全に理解したわけではありませんが、ちょっとずれOEMのM氏のはまり具合からし
ても、しっかりとした知見を得て、方向性を見定める価値のある議論であることは間違いありません。

 少しづつ議論を深めて参りますが、現時点で皆さんに頭に入れておいていただきたいことを申し上げます。

 まず、あらゆる商品やサービスごとに、それぞれの国と時代性に依拠した所得弾力性と価格弾力性とがあること。

 次に、それぞれが1を境に弾力性が高いものと低いものに分かれて分布すること。

 さらに、普及率の高低と必需品か否かという軸で切り分ける必要があること。

 最後に、マクロ経済でいうところの供給曲線について考えなければならないこと。

 かなり複雑な思考が必要になりますが、少なくとも大きな方向性は見えています。 商品には、普及し尽くされていない付加価値を施して必需品ではない憧れ、ちょっとした背伸び感を付与するとともに、それを顧客に届けるプロセスで価格弾力性の高いサービスを添加することです。

 普及率も必需品もどちらも相対的な概念です。モノの普及と品質がプアーだった高度成長期の前後に、「いいものをより安く」というコンセプトはズバリ的中しました。今求められているのは、「いいものをより高く」なのです。
 2010/03/09 08:56  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

| 次へ
プロフィール

北村 禎宏(きたむら さだひろ)
ファッションビジネスコンサルタント
アパレル企業での実務経験とMBAの経営理論を融合させ、クライアントの問題解決やアドバイザリー機能を提供。
「アナログ」と「デジタル」、「実践」と「理論」のハイブリッド型コンサルティング活動を実践するとともに、教育・研修事業も鋭意展開中。

北村禎宏 プロフィール
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
カテゴリアーカイブ
最新記事
2010年03月
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
月別アーカイブ
最新コメント
北村禎宏
仙台の旨いもの (2009年11月14日)
仙台美食倶楽部会長
仙台の旨いもの (2009年11月09日)
Sayo
同士がいました (2009年10月17日)
北村禎宏
感動の色紙 (2009年09月16日)
ヤマケン
感動の色紙 (2009年09月14日)
通りすがりの弁理士
何がどうなる? (2009年08月17日)
北村禎宏
藤巻幸夫氏語録 (2009年06月07日)
U
藤巻幸夫氏語録 (2009年06月06日)
Sayo
足は口ほどにモノを言う (2009年05月27日)
北村禎宏
双頭の鷲 (2009年05月24日)
最新トラックバック

http://apalog.com/kitamura/index1_0.rdf
更新順ブログ一覧
リンク集

アパレルウェブ公式モバイルサイト
スタイルクリップ
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード