« 前へ | Main | 次へ »
デニム素材(レンチング社2011年S/S展より)
 素材作りの視点から見るとデニム素材はやや落ち着いた状況にあるように見えます。
 しかし市場を見ていると益々多くのブランドにジーンズアイテムが扱われ、一部で価格競争になっているにも係わらず、ステイタスのある高価なもの、今までにないジーンズのイメージを広げたもの、ブルーへのこだわりと同時に鮮やかさやナチュラル感、プリント、刺繍やパッチワークなど大きな広がりを見せています。
 これが一見素材作りから離れたかのように思われますが、差にあらず、素材そのものの風合いや更なる機能性にまで進展しているのに驚かされます。
 デニム素材を中心にプルミエール・ヴィジョンでも別個の展示会を開催していますが、日本の素材展でも原材料をまたいで登場するのがデニムでしょう。
 5月末に東京青山で行われた「レンチング・イノベーション 東京2010」展ではレンチングファイバー社のブランドである「モダール」や「テンセル」を中心に各社の開発素材が一堂に並びました。
 備後地方は昔から藍染の産地として知られていますが、今では岡山広島の当地で国産のほとんどのデニム素材が作られています。
 規模は様々ですが、二次製品までの一貫生産や工業用素材まで専門性の高い産地といえます。
 篠原テキスタイル(株)は杉本職布から引き継がれたおよそ100年の歴史を持つ中堅の会社で、絣(かすり)織物の生産からスタートしたデニムメーカーです。
 今回の展示会では同社の得意とするデニム感覚で軽さを強調したものに人気が集まっていました。
 シャンブレーやダンガリーのように見えるものは、これからのシャツ地に最適と思われます。
 縦糸に綿で成型し、横にテンセルを打ったものが標準ですが、今シーズンは縦にもテンセルを使ったもの作りました。独特の優しさやオチ感があります。
 アウトドアーのためのUVカットは原綿に練りこみ加工を施して作り上げた(「テンセルSUN」)デニムが好評です。
 そのほか寒さ、暑さから身を守る加工を施した「アウトラスト(OUTLAST)」や消臭機能を持つ「タツロン(TATSURLON)」、麻混のバイオ洗い、刺繍、ラメ入りなど固さ、柔らかさ、光り感などを自在に取り入れた新しいデニムの姿がありました。
 こだわりが身近に感じられるプレゼンテーションです。









ホームページ:http//www.shinotex.jp
 2010/06/27 21:08  この記事のURL  / 

「gredecana(グリデカナ)」のオープンについて
 テキスタイルデザイナーの梶原加奈子さんのディレクションによるこだわりのテキスタイルをカタチにした店が今年の秋にオープンします。
 そのデビューを知らせる事前の展示会が5月末に行われました。
 グリデカナのブランドコンセプトは「Moving Textile」。
 私たちの生活の中で身近にあって、自由に変化し、暮らしを包んでくれるものという意味です。
 海外での研鑚や活躍は十分であったとはいえ、2006年に帰国してからの国内での活躍は目覚しいものがあります。
(株)ダイドーリミテッドやソトー(株)というよき理解者である企業に恵まれたからかもしれません。
 テキスタイル業界で厚い信頼を得ている諸先輩に混じって久々に素材作りの達人に合えたような気がします。
 そして次に二次製品に挑戦されることはとても興味深いことです。
 展示会は雨にも係わらず大盛況でした。
 一つ一つに心の通った優しさや美しさ、そして楽しさを感じさせる商品に感動を覚えます。
 今回の一押しは「All for One」バッグ。
 機織りの際に出る規格外になってしまった布をはぎ合わせて、たった一つのバッグに仕立てたもの。
 これには日本各地の産地が協力しています。
 秋の商品としてそれぞれ表情の違うツィードのパッチワークのバッグが出来ていました。
「ユーゼンレザー」は豚革に友禅染めを施したもの。
 日本にただ一人の職人さんが雨に濡れても色落ちしない技術を持って美しい色に染め上げました。
 毎日使うお財布やペンケースに作ってあります。
「ディアスキンパンチ」は鹿の特性である自らの身体を傷つけてしまう結果起きる引っかき傷を利用して、針で線をつけた柄をパンチしたもの。
 薄く、軽く、滑らかな肌触りが特徴です。
 他にも布端を房のようにして作ったボンボン飾りの暖簾のようなパーティション、アクセサリー、さらにワークショップでの制作にも参加できて会場は盛り上がっていました。
 本職の技を見せ付けられたような素晴らしい織りや染めはそのままストールに作られてあり、自然が息づいているような優しさにとても癒されます。
 テキスタイルを愛するデザイナーたちが作るこれらの商品のスタートが楽しみです。


商品の一例




 2010/06/20 22:00  この記事のURL  / 

尾州産地展示会
 5月最終週に青山ベルコモンズにおいて2011SS向け尾州産地展が行われました。
 FDC(一宮地場産業ファッションデザインセンター)主催の「ジョイント尾州展」と毛工連が中心になった尾州産地改革推進会議展示会開催委員会が主催する「BishuStyle展」で、フロアを別にして同時に開催されました。
 出展社はJB展が14社、BS展が31社、うち重複出展社が5社となっています。

 尾州がウールの産地として栄えた‘60〜70年代に比べると、ウール以外の素材も扱う複合化とともに今では大きく様変わりをしています。
 その間の世代交代や機場の縮小、撤退など数に関して言えば工場も生産高も3〜4掛けといわれています。
 しかしその技術を伝えようと若手の台頭や産地間の枠を越えた協力、天然、化合繊を問わない素材の扱いが商品に幅を持たせる結果になりました。
 同時に大手といわれる機屋や染工場、整理加工業が閉鎖や統合、廃業を余儀なくされたことも事実です。
 今週の展示会の中で新しいチャレンジをしている2社をご紹介します。

 尾州スタイルに出展のオパレックス鰍ヘ、麻素材を最も得意としています。
 紳士服への対応を主としていましたが、「WaterLinen」の開発により婦人服時としても格好のジャケットやスーツ向け素材として評判をとっています。
 麻糸を「水撚り」するウォーターリネンはナチュラルなダルの風合いと共にしなやかさが増します。
 従来の麻に比べて水を通して撚ることによって伸縮性が出て皺になりにくい効果があります。
 産地ならではのウールとの交織ですでに紳士のジャケットで実績を持ち、今後の婦人服での展開が期待されます。









 追い風でもあるクラシックテーストではツィードが目を引きますが、織物にスパンコールや毛足のある意匠糸、ネップ糸などがツィードならではの表情を豊かにしてくれます。
 ジョイント尾州に出展の渡六毛織(株)では自社のツィード素材の付属として共糸使いのブレードを足利の(有)ワダノブテックスと共同で作っています。
 同じ糸で編んだトーションレースのブレードはオリジナル性が高く素材から差別化が出来るために、渡六では今後力を入れていく素材提案の一つにしたいとのコメントがありました。


N58/C22/W16/AC1/P1(ラメ糸)
このうち3種類の糸を選んでブレードを作る



S62/Ry27/N11



W26/C24/N45/E3/Cup2


 尾州の素材展は同じ分野の素材を別フロアで同時開催という形が取られ、区別しにくくまとまりもかけるような気がしましたが、次回からは「尾州産地展」としてひとつにまとめられ、会場も恵比寿のガーデンホールに移し開催される予定です。
 2010/06/12 22:38  この記事のURL  / 

PRIDE of GOUSEN
 東レの2011年S/S向け素材展が開催されました。
 この10年で過去の合繊のイメージが大きく変わったことが証明される展示会として力強い発信力を感じます。
 海外のメゾンで話題になっているマイクロファイバーや仕上げ効果、超軽量素材など産地や加工工場との共同開発によるポリエステル素材はグレード感だけではなく機能性にまで末端消費者の心を捉えるようになったかもしれません。
 ランバンが使った「シルックデユエットーミュウ」やユニクロのヒット商品「ヒートテック」がそれを物語っています。
 マイクロファイバーや極薄の素材、軽量や透け感など合繊ならではの素材感や味わいが好調ですが、この数シーズンはパンツやジャケット対応の中肉素材が気になっています。
 そんな趣のある素材が眼に留まりました。

 透けにくい効果をねらった「ボディシェル」は安定した人気のもとシリーズが組まれていますが、「SP」は光沢感を、「キュート」はスパン系で綿と配合しカラーデニムに、「エール」は湿気への機能性を持つナイロンを使い吸放湿機能を充実させそれぞれ美脚パンツに使われてきました。
 今回はその4作目ともいえる「ボディシェルドライ」が発表され、毛細管現象による更なる給水機能と同じく拡散現象による速乾機能を充実させました。
 透けの防止にはセラミックを芯にした糸を鞘のように合わせた複合糸として使うことでさらなる効果が得られます。
 高度な技術や研究の結果このような素晴らしい素材ができるのは大いに納得のいくところなのですが、見るものにとって素材に触れたり製品サンプルを見たインパクトがとても大切です。
 理由はあとからついてくるものかも・・・との印象を受けた素材です。





 お馴染みのuts−Ultifino(ユーティーエスーアルティフィーノ)もそんな素材の一つです。
 細さを追求したマイクロファイバーの新素材と聞きますが、ポリエステル63/綿29/麻8の複合糸で織り上げた素材は合繊に非ず、かといって綿や麻でもない感覚がとても新鮮です。
 写真では分かりにくいかもしれませんがマットな感じなのに程よい艶感、フィラメントのとろみよりも優しさのあるスパンタッチに驚きました。





 汗を吸い取り発散させる、透けない、皺になりにくいなど春夏素材には暗黙の機能性が要求されます。
 でも洋服を着る人にとってはやはり見たり触って得られる満足が決めてです。
 カジュアルのレベルが上がることもスポーツ意識が高まるのもおしゃれ感覚と密接な関係があるからです。
 2010/06/05 21:53  この記事のURL  / 

« 前へ | Main | 次へ »
名前:北川 美智子
Michiko Kitagawa

テキスタイルディレクター

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ