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JapanCreation 2011春夏向け素材展
 日本の素材つくりを反映する代表的な展示会、「JFW・JC」が開催されました。
 ファストファッションやユニクロの活躍の陰で、日本の素材つくりはどうなっていくのか今大きな岐路に立っています。
 出展社の数が減ったことが気になってもいたし、その変化がどのようなものか、期待と不安が入り混じっての参観でした。
 開催事項の詳細は省きますが、入場の第一印象は3日目の午後一番なのに人が少ないということ。
 換言すれば会場が広々としていることです。
 その分わかりやすく、入場制限のあったビジネスゾーンの垣根も無くなり入りやすくなりました。
 反面プロモーションとの区別や位置づけが不明確になった気がしました。
 人で混雑していたのは副資材(特に刺繍やレース)のブース、毛皮、付属のコーナーでした。
 ムカラ刺繍の(株)ラカム(熱接着の刺繍技術)や栄レースには技術や使い方の説明を求める人が沢山。
 素材はやはり特徴のある天池合繊の「天女の羽衣」シリーズ。
 手の込んだ高級素材が高い評価の敦賀繊維(株)、プリントの宇仁繊維(株)や(有)久山染工、技の(株)松井ニット技研などに集客が見られていました。
 デニムのカイハラ(株)や合繊を代表するイメージを持った東レ(株)などは別の機会に力のこもった展示会やプレゼンテーションの場を持っているように思います。
 必見であるはずのインデックスコーナーは見やすくはあるのですが、パネルの構成に同じ会社のものが何点も出ていて、偏りや、かえって出展社の少ないことをうかがわせます。
 従来と同じやり方では難しいと感じました。
 トレンドの提案は「庭園狂想曲」「真夏の夜の夢」「ビート in 食」「メーク up〜遊」の4テーマが綺麗なファイルに簡単にまとめられています。
 総合テーマと思しき<スマートパワーな生きざま>というキーワードの扱いが訴求不足かも知れません。
 日本の技術が世界に高く評価されている事実を考えると、この展示会にかける熱意が予算に比例してトーンダウンしてしまったような気がしてならないのですが。
 今回は辛口トークになってしまいましたね。 




天池合繊(株)





INDEX



GUT'S DYNAMITE CABARETS
デニムつなぎ:カイハラ(株)
ワッフルTシャツ:天龍社 オーガニックコットン
ライダースジャケット:東レ(株) フォレッセ/綿
プリントTシャツ:(株)ポリ・テープ・ジャパン
ワッペンボトム:(株)ラカム ムカラ刺繍



(株)ラカム
 2010/04/30 00:32  この記事のURL  / 

東レ合繊クラスター総合展
 4月15−16日、青山のモーダポリティカで合繊クラスターの初の総合展が行われました。
 いくつもの成果をあげ、世界の素材市場でも高い評価を受けているこの活動から生まれた新素材を一堂に見るのはとても興味深いものでした。
 いわゆる合繊メーカーの展示会とも違い、産地展とも趣きの異なる素材の数々は、実際の洋服を想定しやすく、同時に技術開発によって生み出された機能性が素材の表情や風合いと溶け合いより新しさを感じさせてくれます。
 今回の展示の中には合繊には科学の世界で組み立てられた緻密な研究によるものでありながら、天然繊維や再生繊維(セルロース系繊維)と合体させることによって自然で優しい風合いに仕上がっているものが多くみられました。
 本格的に軌道に乗るにはもう少し時間がかかるかもということですが、たくさんある新素材のうちで「INNOLIS(イノリス)」に注目しました。
 レーヨンの独特なオチ感、ポリエステルのハリ感、さらにセルロース系ということからくる自然な触感は「あったはずなのに未知なる新鮮なタッチ」で改めて驚きを感じました。
「イノリス」は会場の説明によると“光合成により地球上でもっとも大量に生産されるセルロースを原料とし、紡糸時に有機溶媒を使用しない環境影響の小さな方法で製造された繊維と、東レ合繊クラスター会員の高度な加工技術が複合した素材”となっています。
 つまり熱で溶ける(熱可塑性)セルロース系繊維とポリエステルを使うことで環境に配慮していることと、高い吸湿性、放湿性を持ち、発色性も高く、常圧で染めることが出来、光沢や清涼感をもっているなどの特徴があります。
 細番手を使い透ける効果のあるものから太番手で光沢があり安定した手持ち感が楽しめるものまでシルクやキュプラ、レーヨンと通じるものがあります。
 指定外繊維という表示に、つい正体を突き止めたい衝動にかられてしまいました。



 その外にも、オチ感と横のストレッチが特徴のポリエステルT400(「バーチャレックス」)や「トスポ」という塩縮風プリントで立体感を出した素材、消臭効果やふくらみ感を表したナノファイバーなど、コートやドレスからスポーツウエアまで技術開発の賜物である新素材から眼が離せません。
 2010/04/17 22:21  この記事のURL  / 

コレクションの素材
 東京コレクションも無事終わりました。
 主催として束ねる団体が二つに分かれそれぞれに思い入れのある一週間でした。
 キャットウォークで見るスタイリングは音と動き、加えて素晴らしい映像を伴ったものもありなかなかですが、素材の風合いやタッチは想像を超えるものではありません。
 しかし「見せる」事に集中するショー形式は、色や素材の微妙な動きにより見ている人に全体のインパクトを瞬時に感じさせてくれる力を持っています。
 そんなショーの醍醐味に一目置きながらも素材をさらに知りたいと思うと展示会で実際に手に触れてみる必要があるでしょう。

 今シーズンは展示会形式で新しい商品を披露した「NORIKO FUKUSHIMA」(デザイナーは福島紀子さん)は、パターンオーダーで独自のものつくりを貫いています。
 長い間プレタポルテの世界に身を置き、大手アパレルでのブランド開発を手がけた後、パターンオーダーで顧客の身体にフィットし、「より美しく着易く」をモットーに洋服作りに専念しています。
 このブランドの特徴は他に類を見ない職人技と上質の素材使いです。
 素材の特徴を失わずに、或いは活かして縫製する一つ一つの工程にデザイナーと職人の熱いやり取りが感じられます。
 そうやって作られる洋服の完成度は、自分のパターンを使うことだけではなく、素材と縫製の技が一つになったときに始めて実現するものといえます。
 展示会で気になったものをご紹介します。
 いずれもイタリア製のウール素材で作られたもの、身体が入ってさらに美しいシルエットになりました。





 赤のドレスは細番手のウール使いのダブルクレープ。ふくらみ感が軽さにつながる。切り替えがリバーシブル仕立ての処理になっていてハードさを感じさせない。





 重ねる感覚が華やかさを演出するが、スーパーウールのしなやかさは優美そのもののグレーのチュニックドレス。つなぎ合わせに見られるテクニックは「重ねはぎ」。久しく見なかった「額縁しあげ」もヘムを削ぎ落として重ねて接ぐという困難な技術にもかかわらず、素材の軽さや薄さは損なわれていない。


「NORIKO FUKUSHIMA」の素材へのこだわりは並大抵ではありませんが、天然素材も化合繊も進んで使う、インポート素材にこだわるわけではないが良い素材には作る人の思いを感じることができるから、というのが偽らざる素材感のようです。
 変わらぬものを大切にしながら新しいものに挑戦する、その要になるものは妥協しない素材選びとパターンへの追求、そして職人の技を信じることかもしれないとしみじみ思いました。


 今は殆ど中国の手になる縁の処理や重ね縫いを国内で行うということは当然コストにも響いてきます。
 その対価に十分見合う価値がある一着と見受けました。
 2010/04/11 22:43  この記事のURL  / 

テキスタイルネットワーク展
 3月はコレクションも展示会も素材についてつくづく考えさせられた一ヶ月でした。
 重くも軽くもPVで発表された2011年向け素材情報、今秋冬向けのプレタポルテコレクションや製品展、来年向けのJITACや各社の素材展が4月に向けて続きます。
 その展示会からの報告です。

 先週末に訪問したT・N Japan(テキスタイルネットワーク・ジャパン)東京展は、東京、八王子、長野、山梨、静岡、愛知、福井、滋賀、京都、岸和田、泉大津、兵庫、今治の各地から30社のテキスタイルメーカーや機場が参加する比較的小型の展示会。
 日本の素材展では合繊メーカーやその地方でまとめて行う産地展、問屋の展示会が通例で、日本各地の産地を横断的に集めた素材展は、JapanCreationを除けばあまり無いように思う。
 今はプライスも含め売れるもの作りの方法が大きく変わった。この点から同展は参加それぞれの得意とするものを主張しながら来シーズンに向かってのもの作りを披露したことになる。
 シーズンのトレンドコンセプトを出さないのも特徴。
「まちまち」は各々の個性、これが大きな魅力になっている。
 見に来る人も「ひやかし」は殆ど無く真剣に素材を手にし、何かを求める、そして商談へと運ぶことが自然に行われているという感じを受けた。
 テーマは「職のプライド」〜涼しさを創る〜
 ほんの一端ではあるが気になった素材をご紹介したい。

・浜松 二橋染工場 (泣き糸といわれる滲んだプリントの表現)

・福井 三澤機業場 (ポリエステル/コットンの皺の入ったフクレ風織物 フィルムヤーンの光沢が特徴)

・滋賀 おおまえ (綿50%/ラミー50%や麻の水撚りを中心に、バイオ加工、楊柳風、縮み、変形ほぐしのような感性の高い表現がされている)

・福井 坪由 (トリアセ/ナイロンのフィラメント糸を使った薄く上品な光り感の新素材)

・福井 中島機業場 (ナイロン/レーヨンのふくれ三重織り N49/ C9/L42の二重織り タテの高密度の成型によりより光沢感が出ている)




・泉大津 細川毛織 (高級ウールの老舗が新たに開発した複合ウールの春夏素材。タテナイロンのモノフィラメント糸20D ヨコウール2/48使い、タテ生糸/ヨコウールのふくらみ感のあるリバーシブル、タテ/ヨコともにシルクのリバーシブル、ニットのような甘い織り、タテ/ヨコ太目の生糸で繊細な表面感などなど。ウールにシルクやカシミアをまぜて薄く軽く優しさを表現した春素材。ひんやり感はないものの薄く軽い素材は夏の涼感さえ感じさせる。1970年のリバイバルとして、ウール100%の平を崩したようなランダムな皺の入った夏素材も発表された。安定したウール素材ではカシミア/ウールの綺麗な色のストールが商品化されている。)




・ 長野 高澤織物 (100番単糸スピンゴールド 「重ね」をテーマに超長綿を使って微妙な色の重なり具合を表現。大正紡績のオーガニックコットンを利用したマシュマロホワイトのストール。カシミア60%/コットン25%/シルク15%で出来ている。平安時代の微妙な色使いによる透け感にこだわったとのこと。風合いのよさは抜群)




 日本のものつくりへのこだわりが感じられて久しぶりに見応えのある展示会でした。
 美しいビジュアルや言葉によるトレンドよりも、触って得る実感や予想していた来シーズンへの思いと一致するものを発見できることが最も重要なトレンドのような気がします。
 このほかにもこだわりの素材作りで提案力のある優れた会社がたくさん出展しています。

問い合わせ先:
大阪市西区京町堀 1−8−22−701 T・N Japan事務局 Tel;06-6445-1147
 2010/04/04 23:35  この記事のURL  / 

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名前:北川 美智子
Michiko Kitagawa

テキスタイルディレクター

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