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東京コレクションの素材 1
 2010-11年秋冬東コレが3月22日のSHINMAI PROJECT を皮切りに26日まで開催されました。
 細かな報道的内容は別にして、参観することの出来たショーの印象から日本のデザイナーが素材をどのように捕らえたかを簡単に述べてみたいと思います。
 言うまでもなく東コレに参加するデザイナーの素材への取り組みは各人各様で、意外性や奥の深さとともにクリエイティブなデザンでみせる、着る人のイメージが如実に伝わる、目的やオケージョンが明確など様々です。
 素材の確認のためには展示会で手に取り布の扱いなどを見なくてはなりませんが、モデルによるキャットウォークにはすべてをカバーし、より美しく感動を与える場合と、縫製の不備が目立ったり静電気が起きたりというマイナスの部分が出ることもあります。
 特に今は慣れた目にも天然繊維と化合繊の判断がつきにくく、同時にそのこだわりもどんどん薄れてきたような気がします。
 ポリエステルやキュプラのシルクに勝るとも劣らない風合い、ナイロンやポリエステルの磨かれたコットンタッチなど、時には天然素材を超える面白さが表現されることもあります。
 今シーズンは特に加工や光沢、軽さなど技術開発の賜物とも言うべき化合繊の世界が新たな可能性とグレード感を与えてくれたと感じます。
 これからの日本のクリエーションを支えてくれるほんの一例をご紹介します。


「エリ・マツイ」は数学者の合原一幸博士とビジュアルアーティストの木本圭子氏と乃コラボレーションにより数学とファッションを結びつける論理のプレゼンテーションと、空間を演出する映像のもとショーが行われた。
 殆どは白一色。その素材はシルク、または北陸山地での生産を思わせる合繊のマイクロファイバー糸使いの軽くて透けるものが使われた。
 何枚も重ねて、透けているのに身体が見えない不思議を楽しんでいるかのようなファンタジックなドレスが魅力的だった。





「matohu」
 素材へのこだわりと日本文化を大切にしていることで定評のある「まとふ」の新しいシリーズのテーマは「日本の眼」。
 これは柳宗悦の言葉に由来している。10-11秋冬向けコレクションではその一として「かさね」を取り上げた。
 色、素材、デザインにおけるそれぞれの「重ね」を優美に優しく、それでいてどこか未来的でもある表現は他にはない切り口である。
 ぼかし、軽いウールとシルク、滲んだような配色でボーダーを切る、大柄のプリント、レザーのパンツ。
 十二単を思わせる長い襟の重ねや薄くても暖かさを感じさせたり軽さを損なわない重ね、ファーさえも繊細さを表現する素材だ。
 静かにファンを増やしている「まとふ」の素材への執着に感服。







「SOMARTA」
 今回のテーマは「好奇心の部屋」。コレクションは神秘的な美しさを演出した暗い部屋の中に存在する好奇心や喜び、驚きや発見を浮かび上がらせる形で表現された。
 カタカタと少し音がする10センチを越えるハイヒール、ドクロの形をしたバッグ、動物、獣、さなぎを連想させるなど少々気味の悪さがありながら計算されたバランスが美しく、他に真似の出来ない世界を作り出している。
 アクセサリーで独自の雰囲気を誇張しているが素材を吟味しもの作りの確かさが安心感を与えてくれる。
 ショーの背景を大きな額縁にしたて映像を駆使した中でモデルが登場する演出は素晴らしい。
 白と黒を基本に深紅や深いグリーン、ブルーなど重厚さ(バロック)も宇宙も同居するような不思議な気分を味あわせてくれる。
 動物の皮膚のようなファーから羽根まで自在な素材の使い方がイメージの表現に一役買っていた。



 2010/03/29 00:30  この記事のURL  / 

2011年SSに向けての素材考察
「PVは何を発信し、市場は何を求めているのか?」

 2010年2月に開催されたPremiereVisionは11年の春夏に向けてどのような素材の切り口を持つかで、様々な提案がありました。
 90年代の内容やテーマの設定を考えてもこの10年の同展の変わりようにあらためて胸に押し迫るものがあります。
 辛口の意見になりますが、PV展は何度見ても難しかったり、世界のレベルの高さを感じたり、アジアでの日本の存在感の変化を実感したりと複雑なものがあります。
 価格の問題が大きなテーマになっている昨今でありながら、こなれた商品を作っている大ブランドほどPV展に来場していることや、色や素材の方向性や新技術を実際に触れることで情報を自分のものにしているバイヤーやトレンドセッターたちが大勢いることを思うと、この変化は当然のことなのです。
 今回は様々なギャップを考えながら辛口トークをしてみたいと思います。

 素材作りは後加工やブレンドにおける技術の進歩により、天然繊維、化合繊の枠を越えた質感、機能性を生み出した。
 ハイテク素材の域では世界を大きくリードしている日本の素材開発ではあるが、それがそのまま日本のアパレル生産につながるとは一概には言えない。
 産地や素材開発に係わる立場での大きな課題でもある。
 素材展の最高峰であるPV展は毎回最新の情報を世界の業界に向けて発信する役割りを持つ。
 しかしビジターにとって、作ることと売ることのギャップ、さらに現消費者の購買行動を見据えた情報をキャッチすることはかなり高いハードルでもある。
 市場ではユニクロに代表される時代を捉えた感性と研究された機能性、そして価格と新しいビジネス感覚が認知された。
 私自身も大のファンであり、毎日の愛用者である。
 しかし、もの作りを考えるとここに標準をあわせることは難しいし、どこもユニクロである必要もない。
 PVのポイントを4回にわたってご紹介したが、その中で実際の市場や商品企画を予想しての特徴は次の三つに絞って整理したい。
「ノンシャラン」 おおらかで優しさと強さを持ち合わせる新たな自然観。
「フォーマルウエアの改革」 伝統についての再考。守るべきものと変えていくべきもの。中には代替できるものもある。ダイバシティーについて考える。
「シャッフルする」という強い言葉を使ったミックス感やオプティミスティックな考え方。

 この大きなくくりの中に「ノーティカル(海)」も「エスニック」も「クチュール感覚」も「スポーツ」も、それぞれのこだわりを持って新しい目を噴出している。
 次回から市場の素材に目を移していきます。


2009年10月にオープンしたユニクロ・パリ店







 2010/03/22 00:10  この記事のURL  / 

2011年SS PremiereVision 素材のポイント4
 膨大な情報量を誇るPVですが、そのディレクションやテーマを表すいくつかのくくりをお伝えしてきました。
 最後はここ数シーズン続いておなじみになった「スタイリングに向けた素材」について簡単にまとめました。
 出展するファクトリーの内容とあわせた四つのフォーラムは5,6号館のあちこちに散っています。

1)Seduction ファンシーで流れるような優雅さのある世界
・シルク、ウール、刺繍などに洗いをかけたりマットに仕上げたりしてカジュアルな装いにしたもの。
・綿と麻は気品と繊細さは残しながらもフレッシュでナチュラル感を強調。
・ややプレーンな見え方が毎日着るものやエレガントな中にも欠かせないが、装飾は思い切って施す。
・主としてリラックス感はあるものの、クチュールスタイルのボリューム感のあるバルキールックも大切。









2)Distinction エレガントなフォーマルとテーラードの世界
・エレガントで正調さを失わずに着易くモダンなシティウエアに対応。
・ナチュラル、アーティフィシャル性、化合繊のどれもが巧みにブレンドされる。
・流れるようなラインとテクノロジーで着易さを大切にしたものがダイナミックに表現される。
・あまり無頓着にならずにカジュアルが強調される。
・都会的な装いのためにはシャツが重要。
・このテーマは男女兼用であることが特徴。









3)Relax カジュアルウエア、スポーツウエア、ジーンズウエアの世界
・紳士も婦人もファッション全体にカジュアル化の傾向が進みこのテーマは益々追い風となっている。
・軽さを重んじることがドレスからシャツまで広がっている。
・しなやか、軽い、柔らかいの三原則は織物にも編み物にも共通している。
・天然繊維と合繊のブレンドが着心地のよさを決める。
・プリント、先染めも全体に柔らかくフレッシュアップし、少し埃っぽさを取り入れる。
・ブルーがすべてに存在感を与える。









4)Pulsation スポーツウエア、テクニカルとパフォーマンスの世界
・着ているか否か判らないほどの装い。
・軽さ、しなやかさ。
・肌のように身体が自由に動きかつ実用的。
・フレッシュでファンタジック。
・これらはアクティブスポーツウエア、ランジェリー、水着にも共通する。
・エコフレンドリーであること!
・オーガニックコットンはさらに無害な染色方法が取られ、コーティングや洗い加工も施される。
・有機、ナチュラル
・化学繊維は100%エコのもと、ブレンドされる。






 2010/03/14 21:35  この記事のURL  / 

21011年SS PremiereVision ポイント(3)
[シーズンのエスプリ]
 今シーズンは凝縮したような新たな紙やガ切り開かれる。
 様々なファッションシーンをシャッフルし、撚りナチュラルでシンプル、さらに明快に構築されたシーズンになる。
 今の状況(現在)から映る軽薄さが夢が秘められたような洒脱な魅力を持ち、気まぐれではあるが、新鮮なエネルギーを感じさせてくれる。
 100%よりブレンド効果を追及することや、真似の出来ないような特性を持ち異なるジャンルやスタイルを連携させる。
 一見不調和のように見える目に見えない特質、緻密な触感が新しい商品を生み出すことにもなる。
 風変わり、驚異的ではあるがリスクをはって有益なこれからの新しい本質を見つけ出す。
 肩の力を抜いたエレガンス志向が強まり、高密度、流動感、魅惑的な質感が求められ、力強く軽快なモーターエンジンのようなシーズンとなる。

[ジェネラルフォーラムでの三つのポイント]

1)Sparkling Nonchalance 才気ほとばしる無頓着さ

  気楽でエネルギッシュなデイウエア
  チャーミングでシンプル 人工的で清潔感のある柄 50年代風
  スポーツウエアに使われる柔軟性のあるコットン
  ストレッチの効いた見せ掛けの無地素材 さわやかツィード
  海のイメージのストライプとひねった色のマイクロチェック
  ダークなバッドボーイスタイル

キーワードと素材

代表するカラーイメージ:黄色
Spruce チェック ストライプ
Tasty flowers レースプリント ファンシーツィード
Gingham offshoots チェック 光り タフタ 玉虫
Sparkling iridescence 玉虫
Meticulous Performation 生地をすうまいか差寝て穴あき処理を施したもの パンチレース メッシュ ネット
Tenderly washed
Vegetal precise ヨコ張り トップ染め ソフト
Sprucely precise 繊細なメッシュ ニット 光り
Today‘s yesteryear ダブル レース 楊柳に箔プリント でも繊細 変形サッカー
Naughty and nice badboy レース 密かな光り 少しとぼけたような豪華さ
Charming scratches レース ジャカード ドビー リボン フリンジ ハチスのようなデニム
Weightlessly puffy ギンガム メッシュ レース
“Bulgomme”volumes 柔らかな厚み 穴もの バルキー 
Rubber sensation 
Naturally joyful 小フリル グラデーション 鉛筆書きのような刺繍 ケミカルレース 変わり織り
Nobly dried






2)Regenerated Tailoring 生まれ変わるフォーマル

  マジメなスタイルにどこかハズ下気分を取り入れる。タブーに揺さぶりをかけ、肩の力を抜きリフレッシュしたカジュアルなエレガンスを目指す。
  軽いコットン、マーセライズ加工のムール、リネンブレンド、ハイブリッド素材などでスーツを。
  ノーアイロンの風合い、マットな顔料加工でカジュアルにアレンジしたシャツを。
  大胆なパターン、プリント、カラーで華やかなフォーマルを。

キーワードと素材

代表するイメージカラー:ブルー
Moving Fluidity ジャージー、とろんとした、膨らみ
大判スカーフ 大柄
Floaty elasticity 
Sheathing stretch
Hidden elasticity
Creamy edidermals マイクロ起毛 デニム 洗い落とし
Dynamic shadows グレー 白 立体的
Virtuously water−proof
Nobly dried ジャージーのサラリ感 麻 サラリとしたレース
City sailors
Amisable curves 大判スカーフ ストライプ
Intensely matt
Delicately greiny 絞りのような凹凸感
Full colour ガーゼのようなデニム 二重織り しっかりしたシャツ地
Free fluidity








3)Cheeky Opulence 生意気な奢れるもの

  ティーンエイジャーの精神 危うさと生意気 挑発と誘惑が一体化したような曖昧さ。
  ストリートカルチャーとクチュールの間 上流の気品と下町のバイタリティー シルクの気取りとグラフィティーのパワー
  これらの相反する要素を大胆に組み合わせる。
  アーティスト集団の活動 線画や色鉛筆の表現 単語や数字のコラージュ
  レース、刺繍、ジャカードと人工素材、プラスティック、ゴム、シリコンなどを結びつける。
  相反するものの中から驚きの触感を作り出す。

キーワードと素材

代表するイメージカラー:オレンジ
Matt−washed
Sluiced witu water 水をかけたような色、プリント
Water Plastics 超極細デニールのポリエステル使い、光り
Mermaid 光沢のあるジャージー 鱗のような光り
Defensive Exception 大柄なジャカード ドビー からみ 薄さ
Reinforced Opulence 透け 光り
Cellulars フクレジャカード スパンコールレース
Natural Artificial レース プリント 超ファンシー
Generous Roundness メンズ調 ソフト 手持ち感のあるダンガリー 張り感 シルクと麻
Impulsive 大柄プリント チェック
Pale Materiality マットな表面 レースのようなレリーフ
Dematerialising Brights パリパリのナイロン コットン素材
Aspirin 水玉 プリントとレース スタッズ ジャカード
Mysterious Abyss 濡れたような光 レース、スパンコール
Watery Crystal
Like a Jellyfish 房(フリンジ) ネット ヒトデ くらげ 光り
Soaked 滲んだプリント
Wet
Ink
Diluted



 2010/03/06 23:19  この記事のURL  / 

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名前:北川 美智子
Michiko Kitagawa

テキスタイルディレクター

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