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コート素材を振り返る
 ベーシックやクラシックといわれる重い意味を持つテーマが続く中で、今年もコート素材に様々な課題が残りました。
 店頭に見るコートと実際に売れるコートに差があるのは常なる現象ですが、その点から見てもウールの高級感のあるベーシックコートが街で着られているのを見る機会は意外に少なかったのですが、ショートコートやカジュアルなコートにヒットが出ました。
 これには二つの理由が考えられます。
 一つは価格。
 つい先ごろまでのラグジュアリーラインから、機能や実用性を優先させた選択が行われていること。
 これには今までのウールコートには考えられなかった価格政策や新しい価値観が伴っているのが特徴です。(ユニクロの+Jやファーの着いたロングカーディガンタイプなど)
 もう一つは非ウールという合繊を中心とした素材に新しい感覚が備わり、カジュアルな着こなしの幅を更に広げたこと。
 これは従来のスポーツタイプ中心の中綿ダウンのコートにデザイン性が加わったことがあげられます。
 どちらもカジュアルという切り口を持ち、デザインに新鮮な表現が見られおしゃれな感覚があることが特徴です。
 加えて今シーズンはファーにも変化が見られました。
 ラグジュアリーで高価、高級感のあるファーですが、その使われ方は襟やカフス中心からベストや大きな部分を占めるパーツとして、又は新しい形での襟、取り外しのきく襟巻きやトリミングとしてふんだんに使われている感があります。
 レザーも注目を集めていることから、コート素材はなかなかウール中心とはいかないようですが、同時にいかにも優雅で高級感のあるウールコートの魅力が再認識されたのも確かなことです。
 今シーズンのヒットの分かれ目は「素材が生かされたデザイン」ということになるのでしょうか?
 新しい時代のベーシックやクラシックへのデザイン対応に期待したいものです。



 2009/12/27 23:37  この記事のURL  / 

80年代のクラシック
 来年のトレンドの中に「ベーシック」や「クラシック」という聞きなれたキーワードがたびたび出てきます。
 素材にも同じことがいえるのは当然ですが、これをビジネスに通用させるのはとても難しいことの一つです。
 低価格に甘えた市場ではありますが「良いものにはそれなりのわけがありそれにふさわしい価格がつけられて然るべき」という認識が出始めたことも確かです。
 もしかしたらものを作る私たちよりお客様の方がそのことを知っているのかもしれない、とさえ思えます。
「安くてよいもの」を見分ける目が出来た消費者が次に移る思考や行動は「価値観を見分ける」事でしょう。
 そのような折にまず基本の尺度になるのがベーシックで上質、クラシックな優雅さや自分にとって必要な機能性です。
 80年代に起きたことが様々なキーワードになって登場していますが、中でも働く女性の上昇志向を表すかのような「キャリアウーマン」スタイルは強く印象に残っています。
 最も大きな特徴は肩を強調したジャケットやパンツスーツでしょうか。
 ボディコンシャスも忘れられません。
 男性に混じって働き、ステップアップしていく彼女たちはマニッシュ、メンズライクという装いで「仕事が出来る女」を演じました。
 その中心が「クラシック」や「オーセンティック」で、梳毛ウール、綿や麻、テンセルやレーヨン、ストンウォッシュをかけたシルクなどが盛んに使われました。

 同じ言葉が20年後の今再び登場していますが、素材は新たな機能が付加され、複合され、80年代を彷彿させるデザインやシルエットになって出ています。






 新宿の百貨店の春一番のウィンドウに(クリスマスの素晴らしい仕掛けとともに)見られたシーンでは、よりソフトに自然体の美しいシルエットを作り出す素材が、「強さ」よりも「優しくエレガント」なスタイリングを作り出しています。
「価格と価値観」のバランスを取りながら新しい時代の知的な女性たちを満足させる素材に注目したいものです。
 2009/12/21 00:24  この記事のURL  / 

MODA IN 2011年春夏
 イタリアのテキスタイル展の情報が例年になく早い時期で提案されました。
世界的な不況やデフレ現象と戦うためにも様々なヒントを与えてくれる有意義なものです。
 トレンド情報誌などからもこのシーズンに向けたカラーやテキスタイルの方向性が示されますが、その殆どに「ポジティブ」「リラックス」「エネルギッシュ」「太陽」「ユーモア」「再生」「自然への新たな対応」などが含まれます。

 イタリアンカラーの特徴は明るく綺麗な色、自然の華やぎ、シック、大胆さ、アーティスティックなど明快なカラーの提案です。
2011年春夏のテーマは次の通りです。




1)FOR THE BETTER(よりよいものを求めて)
  ナチュラルな実用主義 くつろぎ




2)FOR FUN(楽しみを求めて)
  絶妙なユーモアと喜びの気持ち




3)FULL BLOOM(百花繚乱)
  花咲き乱れる春の様子 東洋的な色




4)FULL SUN(太陽がいっぱい)
  活力と情熱 強力なエネルギー エスニック調のシックなカラー

 これらのカラーテーマは素材やファッショントレンドと連動し更に広がりのある展開となっています。
 新しく始まる次の10年に向かう方向性として大いに注目したいものです。
 2009/12/13 00:28  この記事のURL  / 

東レ2010−11年秋冬 素材展 “PROUD OF GOUSEN”
 ハイテク、エコ、ナチュラル、ラグジュアリーなどのキーワードのどれもが関係する合繊がとても気になります。
 超薄手、コンパクト、軽量なポリエステルがシルクのシフォンのような見え方、わずかな風邪にも揺れ動く繊細さ、驚くほどの伸縮性、皮膚や肌のような感触など、このところの合繊は世界のクリエーターたちからも注目される素材になりました。
 しかし益々高まる技術開発とはウラハラに高度な機能性が付加されながらも価格の壁が立ちはだかることも事実のようです。

 そんな中、東レの展示会であまり肩肘の張らない、分かり易い、そして優しいタッチの手持ち感のあるポリエステルに出会いました。





「シルック Sillook」は、「よりシルクに近づくため」に開発されましたが、ある意味では人の手が作り出した「シルクを越える新しい合繊」へと成長しました。
 このたび登場した「シルック・シリーズ」の最新作は繊細で上質なフィブリル感があり、確かな感触と多彩な表情を持つ素材です。
 従来の軽さやふんわり感だけではなく、写真のようなドレスには豊かなドレープ性を出すことも出来ます。
 また、シルエットの表現も自在で、パンタロンやスカートなどのボトムスにも適しています。








「uts−アルトフィーノ Ultfino」は合繊でありながら自然でしっとりとした感触が新鮮です。
 どこかキュプラにも似た風合いですが、それよりも軽さがあり適度なハリ感とともに上質感を表しています。

 両素材とも見慣れたはずのポリエステルではありますが、更なる開発の成果が忘れかけていたファッションへの思いを甦らせてくれました。
 2009/12/06 01:09  この記事のURL  / 

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名前:北川 美智子
Michiko Kitagawa

テキスタイルディレクター

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