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コレクションーその光と影−11
ショー会場の最前列席

9月初旬、ニューヨークから始まった2015年春夏コレクションも、ロンドン、ミラノ、パリを経てつい先日、東京、ソウルのコレクションで一連のファッション・ウィークは幕を閉じた。
今日はコレクション会場における客席のことを少し書いてみたい。

ショー会場での客席のゾーニング(区分け)と招待客の座席は、いずれの国においてもプレスや広報担当者が最も頭を痛める問題でもある。

ポン・デザール (Pont des Art)

コレクションの招待者は、基本的にはプレス関係、ビデオやカメラの撮影関係、そして各国の有名百貨店役員やファッション・ディレクター等の通称、バイヤーと呼ばれる3つに大別されるが、プレス関係者の中にはスタイリストやブロガーと言った人たちも含まれる。そのほかVIPとして、とくにデザイナーと親しい著名人や文化人と言った人たちも招待されている。

パリ・コレ主会場カルーゼルの入口 (Carrousel du Louvre)

以前は、ステージ正面がVIPの指定席となっていたが2000年以降、カメラ席がステージ正面の客席後方へ移動したため、こうした著名人をカメラマンにも写真を撮りやすく考えてか近年は、ステージ両サイドの最前列に配置することが多くなった。

テント会場の内部 (A.B.C〜でゾーニングされている)

要するに世界のファッション・ウィークとよばれるコレクションには、メゾンやブランドからの招待者のみで、一般の人は入れないというのが実情である。

テント会場で入場を待つ招待客

そしてここで話は先ほどのプレス担当者にもどるのだが、通常、ショー会場の客席は、ステージを中心に”コ”の字型に椅子が並び、正面には先ほどのVIPのほかに世界的に影響力をもつ新聞、雑誌、テレビ等のジャーナリストやバイヤーの指定席だったが、昨今では客席はステージを挟んだ両サイドだけのケースが多くなった。
もちろんその最前列に座るのはVIPと有力なプレス関係者そして著名なバイヤーである。

2009s/s-シャネルのグラン・パレ会場 (Chanel Grand Palais )

またブランドやプレス担当者によって客席のゾーニングや配置は様々だが、例えばステージの右側をプレス関係者、左側をバイヤーと分ける場合や、両サイドの席を縦の通路を隔ててブロックごとにプレス、バイヤーと交互に配置することもある。
その他、大陸や国ごとにゾーニングを行うこともある。私は個人的にはこの国ごとの配置が好きだ。なぜならば記者やジャーナリストと緊急の連絡をとりたい場合に探しやすいからだ。

2009s/s-クロエのテント会場 (Chloe)

ただどんな場合においてもファースト・ローとよばれる最前列の席は各国の実力者であることは間違いない。

またショー会場では座席を巡って、当事者とプレス担当者の間でトラブルを目にすることがままある。
「何故あの人より、私の席が後ろなの?」
招待状にはメゾンから事前に送られた時点で、座席は決まっている場合が多いのだが、、そのほか、会場に来て
”連れの人や、知り合いと隣り合わせの席をくれ”とか、プレス担当者の頭を悩ますことは多々ある。

メゾンやブランドでは、当然のこととして影響力の大きい媒体やバイヤーを優先するのは当然のことで、それは各国共通のことである。しかし、さすがに最前列の席は、たとえ有力媒体やバイヤーであったとしても、通常は若いスタッフが座ることはまずはない。ほとんどが編集長もしくはそれ同等の人たちである。

カルーゼルのショー会場

しかし悲惨なのは、おなじプレスやバイヤーであっても知名度や影響力が少ない媒体では、椅子席はおろか客席最後方の立ち見席の場合もある。不運にもそうした事態に遭遇した記者やジャーナリストが怒って会場を後にする光景もしばしば見かける。

そして最前列に陣取るジャーナリストとバイヤーの鋭い視線は、特に人気デザイナーのショーともなると異様なほどの雰囲気を漂わせる。デザイナーにとっては、まさに自らの作品の善し悪しをくだす裁判官にも似たものがある。

ショー会場のカメラ席では、場所取りをめぐってカメラマン同士の激しいバトルが常に繰り広げられているが、客席でも座席をめぐる静かな熱い戦いがおきている。
 2014/10/24 11:57  この記事のURL  / 

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プロフィール


大石一男 (おおいしかずお)
KAZOU OHISHI


写真家・フォトジャーナリスト

長崎市生まれ。大学卒業後、テレビ番組の制作に8年間携わる。1979年に初めてパリコレクションを撮影。以降、ミラノやロンドン、ニューヨーク、東京、ソウルと世界のコレクションを長年に渡り撮り続ける。 東京ファションウィークには、第1回目からオフィシャルカメラとして参加。

2013年、第31回「毎日ファッション大賞」鯨岡阿美子賞受賞。著書に「カメラマンのパリコレクション」(読売新聞社)、おもな写真集に「Paris collection 1981〜2000」(新潮社)がある。

大石一男 オフィシャルサイト
http://www.kazouohishi.com/


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