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コレクションーその光と影ー2
パネルの穴

ショー会場では1980年の中半位まで、客席後方にある演出ブースと、パネルで仕切られた楽屋とが連絡し合う、インカム(交互通信のトランシーバーとヘッドセットが付属された通信器=インターカム)というものはなかった。

客席側にいる演出家はモデルがステージに現れると手振りでモデルに動きを指示する。しかしここで問題なのは、ステージ上のモデルがいつ楽屋に戻るかの指示である。基本的には楽屋から次のモデルが登場すると、若干間をおいてステージ上のモデルは戻って行く。

1982/83 a/w-Givenchy Paris collection (モデルの左上に覗き穴が見える)

それじゃ次のモデルは、いつステージに出すのかというと、パネルに無造作に開けられた小穴から、デザイナーがステージ上のモデルの動きを見ながら順次、ショーの進行係に指示を出している。時折、四角に切り取られた穴の向こうにデザイナーらしき人の眼が客席側からも露骨に見え失笑をかうこともままある。

1983/84 a/w-C.Montana Paris collection (モデルの左横に開いた二つの覗き穴)

私はこの覗き穴が、世界のファッションの最高峰の場において、あまりにも無神経に開
けられているのが疑問でならなかった。せめてもう少し小さく,人目に触れないところに出来ないものかと、、、幸い技術の進歩とともにそれからまもなくしてこうしたことはなくなったが、
今思えば古き良き時代の懐かしい想い出でもある。

パリコレの楽屋風景

パリコレは時間を争うあまり、通常のショーやイベントのように、そのほとんどのショーがリハーサルをやらない。いや厳密にはリハーサルをやる時間がないのである。

それは売れっ子モデルのスケジュールと、ヘアーメイク等の作業時間が主な原因である。ここで誤解されると困るのであえて擁護すると、ヘアーメイクのスタッフの作業が遅いということではない。
売れっ子のモデルは、デザイナーなら誰しもが使いたい。特に自分のショーに出演するモデルが、一つ前のショー出てるときが問題である。

パリコレの楽屋風景-2 (かなりつくりこまれたヘアー)

ショーが終るやいなや楽屋を飛び出したモデルは、ショーの時のままのヘアーメイクで街中を走り、メトロに乗り込んで次ぎの会場へと急ぐ。
それぞれのデザイナーにはシーズン毎のテーマーがあり、衣装はもちろん、ヘアーメイクも毎回異なる。前のショーのヘアーメイクがシンプルなものであればさほど問題はないのだが、ご丁寧に作り込んだものになると、前のショーのヘアーとメイクをおとし、そこから新たにつくり直すため、倍以上の時間を要するということである。

昔も今もコレクションの開始時間が遅れる所以である。


 
 2014/08/05 17:17  この記事のURL  / 
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プロフィール


大石一男 (おおいしかずお)
KAZOU OHISHI


写真家・フォトジャーナリスト

長崎市生まれ。大学卒業後、テレビ番組の制作に8年間携わる。1979年に初めてパリコレクションを撮影。以降、ミラノやロンドン、ニューヨーク、東京、ソウルと世界のコレクションを長年に渡り撮り続ける。 東京ファションウィークには、第1回目からオフィシャルカメラとして参加。

2013年、第31回「毎日ファッション大賞」鯨岡阿美子賞受賞。著書に「カメラマンのパリコレクション」(読売新聞社)、おもな写真集に「Paris collection 1981〜2000」(新潮社)がある。

大石一男 オフィシャルサイト
http://www.kazouohishi.com/


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