中東ビジネス、交渉決裂 -モスク礼拝かなわず、帰国へ-
昼食後にボビーと別れ、力のあるというショッピングモールと競合になり得る店舗をいくつか回った。熱気あふれるアジアのモールと比べると、どれも静かな印象だった。

これで出張の行程をすべて終えたので、世界最大級ともいわれるシェイク・ザイード・グランドモスクに行ってみることにした。しばらくタクシーで走った後、イスラム教は、酒で身体を清めるという概念の真逆にあることに気付き、行き先をエミレーツパレスホテルに変更した。


【シェイク・ザイード・グランドモスク】

コーヒーを飲みながら、今回の成果をおさらいする。

会社のエンジンである社長は、やけどを負わない程度であれば投資に前向き、専務は慎重姿勢。割れたところで、コンサルタントの立場に意見が求められる。貴重な1票になるという以上に難しいところ。

それは組織を交えて対面で話してみて、両社の間に明らかに認識のずれをみることができたからだ。しかし、ここでいう“ずれ”には外国企業と多くの交渉を重ねてきた経験からくる推測の要素が多分に含まれる。

この時点で、推測をもとに1票を投じることはできない。そもそも、“ずれ”自体が今後の交渉によって修復できる類いのものであるかもしれない。

1. 相手企業の規模感が分かり、事業への期待が高いことは確認できた
2. ただし、三顧の礼で迎えられるという印象ではなさそうだ
3. 有望なブルーオーシャンの市場であり、広がりも見込めそう
4. 肝心な顧客の陰を見ることができなかった

上記 1. - 4. の要領でリスクと展望を伝えた結果、帰国後に MOU (契約覚書)の作成に着手することになった。
 2016/06/27 09:53  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

中東ビジネス、交渉決裂 -韓国料理と焼酎-
ボビーの車で昼食へと向かう。自分の生い立ちについて、いろいろと話してくれた。

カリフォルニアで育ったこと。大学ではデザインを専攻していたこと。アメリカが大嫌いなこと。韓国で大学に通う息子がいること。息子を他の国に留学させたいこと。韓国の女性はお金にしか興味がないこと。両親がグアムでブティックホテルを経営しており、自身もスキューバダイビングのコーディネート会社を経営したら結構うまくいったこと。半年のつもりでUAE に来たのに、もう5年も暮らしていることなど。


【アブダビの夕陽】

話しを聞いている間に車は街を抜け、荒涼とした景色を脇に、一本道のだだっ広い高速道路をしばらく走り続けた。40分くらい経った頃、ボビーはスピードを落とし、住宅街の中をキョロキョロしながら何度もウインカーを点滅させた。

世界中、どこの都市でも新興住宅地というのはこういうものなのかと感心させられるような、少し広い土地に判で押したような同じ建物が区画に沿って整然と建ち並んでいる。ボビーの行き先がなかなか見つからないのも無理はない。

ようやく到着した昼食の場は、どうみても民家にしか見えなかった。何か違うところがあるとすれば、入り口に何やらハングルが書かれていること。ドアを開けると装飾もテイストも、店員さんが話す言葉もすべて韓国そのものだった。

流暢に韓国語を話すボビーは、冷蔵庫から焼酎の瓶を3本持ってきてテーブルに置いた。アブダビでは、ホテル以外でお酒は飲めない。酒は購入にすら、認可が必要という。この空間では、何もかもが異様だということになる。

それにしても英語を話すボビーはアメリカ人そのものだが、韓国語を発すると違和感なく韓国人だ。人間の感覚なんていい加減なもの。あらためて、国籍や人種など、人となりを表すのには何の役にも立たない。
 2016/06/20 13:58  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

中東ビジネス、交渉決裂 -王族を前にプレゼン-
大会議室でのプレゼンテーションは、ある意味、儀式のようなものだった。日本で成功した美容事業のビジネスモデルがいかに素晴らしいか、とうとうと熱っぽく語り続けることに終始した。


【Sex and the City の舞台になったエミレーツパレスホテル】

その間、ムハンマド家の代表は黙ってこちらを見据えながら、時折「うん。うん」とうなずく。プレゼンが終わり、質問を受ける段になり、財務担当責任者が P&L に対する鋭い問いかけをはじめると、代表は次の来客があることを告げて退出した。

すべてボビーと事前に打ち合わせた通りだったのだが、このときに生じた小さな違和感が後に的中することになる。

アブダビに到着するまで、ボビーは根気強く何度も熱波を送り続けてきた。その熱にほだされる形で、日本側の社長は重い腰を上げた。

大会議場での商談でも、むしろこちらは受け身で、いかにこのビジネスに一緒に取り組みたいかを先方から熱く語りかけられるものと想像していた。ところが、熱を振りまくのはこちら側の役目となる。

それが、王族の面目を保つための儀礼だったのかどうかは今となっては確認のしようもない。ただ、交渉担当役としてのボビーの立場は以前より明確になった。

ボビーは新規事業の開発担当責任者で、「自分が走らないと組織は動かない」とこのあとによくこぼすようになる。

「日本に面白いビジネスモデルがあり、そのリーディングカンパニーが我々のグループに興味を示している」と社内を説得していたとしても、不思議ではなかったかもしれない。
 2016/06/06 11:54  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

中東ビジネス、交渉決裂 - 閑散としたアブダビの印象 -
アブダビにはうってかわって人がいない。上海と北京、ホーチミンとハノイ、ムンバイとデリーなど、政治の中心と商業都市で顔や性格が異なる国は少なくないが、ドバイとアブダビのギャップもなかなかだ。

交渉担当者のボビーはパジェロで迎えに来てくれた。100キロ以上離れたオアシスに住んでいるということで、砂漠を走り抜けるのに四駆は必須アイテムなのだそうだ。

本社の会議室に向かう道すがら、出店候補地となる自社モールを案内してくれた。30坪にも満たないネイルサロンが月に10万 US ドルの売り上げをコンスタントにマークすること、カルフールの単価が極めて高いことなどを、とにかくまくしたてるように話してくるので、通訳するのが大変だった。



UAE の中でもアブダビはキャッシュリッチで、そこに住むエミラティーの可処分所得が高いことは事前の情報収集で理解していた。ボビーの説明と事前調査の内容は確かに一致する。

それにしても、目で見るモールの様子があまりにも閑散としすぎていた。
素直にその感想を伝えると、今度は、猛暑のアブダビでは夕方以降に人の出足が良くなることを購買力のデータと共に力説しだした。

確かに今は昼過ぎで最も暑い時間帯。その場は感心半分に大いに納得するが、このアブダビの第一印象が、交渉の大詰めで日本側の判断に影響することになる。
 2016/05/31 18:29  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

中東ビジネス、交渉決裂 -ドバイからアブダビへ-
P&Lの内容が良かったこともあり、交渉は極めてスムーズだった。グループ内で運営するモールへの出店を足がかりに、持ち株会社が投資するドバイのモールへの展開、美容整形のメッカであるレバノンへの進出など、商談を重ねるごとに話しも期待も膨らんだ。

そもそも、先方が求めるビジネスモデルだった。

民族衣装によってファッションの表現が制限される中東の女性は、特に目元の美容に大変こだわるという。肌の露出が禁じられているため目立たないが、毛深い人も多く、脱毛にも非常に高いニーズがあるのだと繰り返した。

日本側は、グループを率いる創業社長と専務が UAE への出張に応じた。東南アジアを皮切りに、海外戦略に積極的に取り組むことは数年前から会社の方針として決まっていたのだが、当初はその青写真に中東の地図はなかった。

ドバイからアブダビへの道のりは、150キロメートル超。移動にはタクシーを使うことにした。

ドバイの率直な印象は、スケールの大きなシンガポールという感じだった。片側6車線、両側12車線の高速道路、その奥へ広がる巨大な高層ビル群、ショッピングモールの1階にあるスケルトンの水族館、世界一高いブルジュ・ハリファを光で彩るプロジェクション・マッピング。


【モールの中に水族館 = ドバイモール】

増刷後の10年パスポートがスタンプの場所に困るほど、これまで移動型のビジネスライフを送ってきたと自負していたが、久しぶりのカルチャーショックだった。

乗り込んだタクシーはトヨタ・カムリの新車。車内は快適だったが、バングラデシュ人のドライバーがとにかく飛ばす。窓の外に目をやると、制限速度は 140キロとある。合法なのは分かったが、日本側にとっては急ぐ行程ではなかったため、不安げな面持ちが道中の大半を占めることになった。
 2016/05/23 14:07  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)
| 次へ
プロフィール
石橋 正樹 (いしばし まさき)
米ESPNが配信する北米記事の編集翻訳プロダクションに勤務した後、ビジネス情報を専門に配信する通信社に在籍。
同社マレーシア支局編集長を経て、2004年クアラルンプールにてビューティー事業会社を設立し、現在に至る。
2008年よりアパレルウェブ海外ビジネス開発担当パートナーとして、リサーチ、ビジネスマッチング業務を開始。ジャーナリスト時代に築いたアジア各国ローカルメディアとの人脈と、アジアにおける起業経験を生かし、数々のプロジェクトを成功させている。
2009年度 中小企業庁 支援事業「グローバルパスポート2010」アパレルのシンガポール現地コーディネートを担当。
クアラルンプール在住。
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
最新記事
カテゴリアーカイブ
最新コメント
通りすがりのベトナム旅行者
ベトナムは若い、マックがない (2013年06月06日)
石橋正樹
再会、再開、AW リサーチ (2011年06月06日)
Rina
再会、再開、AW リサーチ (2011年06月03日)
石橋正樹
黄金のまわし (2011年05月25日)
石橋正樹
黄金のまわし (2011年05月25日)
元同級生
黄金のまわし (2010年08月06日)
山本
黄金のまわし (2010年06月23日)
最新トラックバック
月別アーカイブ

http://apalog.com/ishibashi/index1_0.rdf
更新順ブログ一覧
リンク集