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いくらでも重箱の隅をつつけるエシカルが内包する危険性と可能性
メーカーやブランドが「エシカルなものづくりをしている」といっても、いくらでも重箱の隅をつつけるのがいまの「エシカルファッション」の現状だ。

「エシカルファッション『ムーブメント』」とは、サプライチェーンの0〜100まで、Cradle to Cradleで、社会や環境に不必要な負担のないしくみにすることが最終目標。中にはいまでもすでに、ほぼ100%エシカルなサプライチェーンを作っている人もおられるが、おおむね、まだまだ100%エシカルなサプライチェーンを作るのは非常に難しい。「こういうところはできていても、こういうところはできていないじゃないか」といくらでも言うことができる。

このような現状で、いったい何をどう実践していることが「エシカル」なのか? その意味で「エシカルの定義とは何か?」と尋ねられることがある。

EFJでは「エシカルの9つのアプローチ」を紹介している(※本稿では、便宜上これをベースに書いていく)が、これは、200前後のエシカルブランドがそれぞれ「特化・選択した」手法を、分類・分析してまとめたものだ(なるべく漏れなくサプライチェーン/ものづくり上の問題などを整理しようと試みたら、結果的に幅広い印象のものになった)

このような「エシカルの定義」みたいなものは、いろんな展示会や媒体でそれぞれ定義している。しかし、エシカルファッションが世界中で取り沙汰され始めて10年近くがたつが、世界的に共通する統一基準はない。

それはなぜかというと、エシカルとは「いずれはこれら9つ全てを達成されることが目的」で、その道筋を「どのくらい細かく分けて紹介するかだけの違い」だからではないか?

ではなぜ分け方が異なるかというと、「(直訳語である)倫理・道徳」というものが環境・歴史・文化によって流動的なものであり、「課題」が状況によって相対的なものだからではないか? ゆえに、その人/企業の課題意識や価値観によって、特化・選択されるものだからではないか?

「完璧な社会」が何か分からない以上、それぞれのアプローチに対し、いったい何が「100%正解」のメソッドで、どんな状態が「100%達成」なのか、明確に定義できない。オーガニックやフェアトレードなど、基準があるものもある(しかしそれらも、本当に完璧に正解な基準かは分からない。ものごとも数字も、見方によって「正解」が変わる)

一方で、明確な達成基準がないものもある。1つ例に挙げるならば「クラフツマンシップ」。極端にいうと、『この加工ができる職人はどこを探しても、この人(御年85歳!)が最後の人で…』『安い海外生産にシフトしたことで、生産量が10年で95%下落して…』のような危機的状況ならば、守り継承しよう、という動きは「エシカル」だ。

しかしいくら「伝統」のものでも、まったくその時点で消える心配のない、人気で有名なトラディショナル技術を取り入れて『伝統技術を守っています!エシカルです!(`・ω・´)キリッ』と言われても『うーーーーん(´・ω・`)????』となる。そういった技術ならば、さらに一歩進んで『いままでは、この技術ではコレコレが環境的に問題だったが、それを改善した』『オーガニックな素材のみで作っている』とかまで進んでいてほしい。「問題の根深さ」が相対的なものである以上、どこまでやるかの姿勢が問われる。

また、フェアトレードなどでいくら途上国の生産者の労働環境の向上に貢献しても、自国内のスタッフがブラックな労動を強いられていたらエシカルなブランド/企業といえるか……???

このようにあやふやなものを問題にしているのが「エシカル」だ。

エシカルは、どこからでも始められるし、どこまでもやることができる。それゆえ「エシカル」な取り組みをするなら、まず「どんな問題に、なんのために、どのように取り組んでいきたいのか」が、はっきり説明できなければならないと思う。ただしこれは、エシカル黎明期の「現在」だからであり、その後価値観や技術のシフトによって、求められる最低限は変わってくるだろう。そして「どのように」の部分を、オープンに示すことが「トレーサビリティ」ではないだろうか。

サプライチェーン/ものづくりの中で、これら9つ以外にもアプローチできる方法があるかもしれない。いままで知られていなかったものづくり上の課題に気づく人が現れて、注目されて取り組まれることで、改善がなされるかもしれない。今後技術の発展やクリエイティビティにより、解決策となるアプローチが増えることもあるかもしれない。

時代とともに、どんな取り組み方が「エシカル」といえるかどうかは、それぞれのアプローチに取り組む人が増えたり、技術が進歩したりすることによって手法が熟成するにつれ、変わっていくだろう。9つのうち、完全に達成されたアプローチが出たら、わざわざ「こういうやり方をしましょう」と、書かなくても良い。8つ、7つ、6つ……と減っていくとすてきなことだが、新たな気づいてなかった問題が出てくることで、減ったぶんだけ増えるかもしれない。

それぞれが特化したアプローチを熟成させて磨き上げていくことで、エシカル全体が底上げされる。あとはそのノウハウをシェアし合うことができれば、0〜100までエシカルなサプライチェーンがリアルなものになるのではないだろうか。

ファッションは、人の内面・生活を豊かにできる。ファッションビジネスは、着る人を取り囲む環境・社会を豊かにできる。内的と外的の両方の環境を、着る人を含む全てがハッピーになることを目指す試みが、「エシカルファッション『ムーブメント』」ではないだろうか。
 2014/07/27 14:51  この記事のURL  / 

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