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随所に見られる美の意識

 【東京本社】「オートクチュール」。フランス語でオーダーメードで縫製される一点物の高級服を指す。東京都内に位置する三菱一号館美術館で5月22日まで、「PARIS オートクチュール 世界に一つだけの服」が開催された。筆者の記憶では休日に訪れたこともあってか、多くの来場者が食い入るように眺める光景が印象に残る。刺繍、コサージュ、ジャカード、金ラメ使いなどそうそうたるメゾンブランドが手掛けた精緻かつ豪華絢爛な展示物(写真)を前にくぎ付けとなった人も多いだろう。
 会場の展示構成では19世紀(1801年〜1900年)のオートクチュールから順に1930年代、40年代、50年代と時代とともにオートクチュールの移り変わりが楽しめる内容だった。
 なかでも19世紀のものはイブニングやカクテルドレス向けが多かったことに気が付く。祝典など着用する機会が限定されることは想像できたが、何とも時代背景を思わせる。展示物も時代の変遷に沿いながら、シルエットや色味、素材など少しずつ変化する様が見て取れた。
 そのなかで一つ気になったのは、正面のデザイン性よりも、背面に巧緻なデザインが施されたものが存在感を出していた点だ。背後から見たときにも「美」を追求した当時のデザイナーたちの配慮だろうか。美意識の高さがうかがえる。日本でも着物や浴衣を着る女性は正面だけでなく、後ろ姿も美しいとよく言われる。歩みの途中でふと振り返った姿を描いた江戸時代の絵師、菱川師宣の代表作「見返り美人」が最たる例か。
 19世紀にパリで開かれた祝典。横切った女性の視線の先には背面の繊細で極彩色のデザインが移り込み、魅力を感じたのではないかと推測してみる。ふとした部分に「美」というものは一層引き立つものではないだろうか。(栢)
2016年05月31日(火)  10:00  / この記事のURL