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僕は韓国に恋をした

 韓国についてのルポルタージュの名著に関川夏央『ソウルの練習問題』(集英社文庫)がある。まだまだ日本人にとって韓国が“近くて遠い国”だった1980年代、一人の青年がたった一人で韓国を旅し、先進国化以前の韓国とソウルの街を活写している。韓国や韓国人の本音の部分をじつに見事に引き出していて、それでいて日本人の表層的な韓国理解の実態を指摘してくれるありがたい本なのだ。

 でも、この本が心を打つもうひとつの理由が、日本と韓国の関係を男女関係のメタファーとして描いたことだった。主人公の青年は、ソウルのホテルでバーテンダーの女性と知り合う。その後、日本人が片言の韓国語を話しながらデートするのだけれど、男の韓国語力の向上が、そのまま彼女との距離の接近となっているところが、ありきたりのコロニアルなラブロマンスと異なって秀逸だった。
 最後に男は「君がスキだ」と叫ぶのだけれども、それはゴールインではない。男と女が完全に分かり合えることなどありえないからだ。それは、そのまま日本と韓国の関係でもある。
 先週、僕もソウルの街を歩いた。いまやソウルは完全な未来都市で、場合によっては日本の大都市よりも進んでいる。地下鉄は、とっくの昔に紙の切符が廃止され、ICチップ入りのカードが普及する。顔を上げると、いたるところに“音が目に見える”ハングルが踊る。そして、相変わらず韓国の女性はきれいだ。
 焼肉屋で韓国焼酎を頼むと、ラベルには“我らがプリンセス”イ・ヒョリの笑顔。そうだ、この銘柄のCMには、イ・ヒョリが出ていたっけ。彼女こそ韓国の女性が自立して生きる姿の象徴だよ。そういえば、昼に仕事で訪れた展示会では、あるブースに少女時代・ユナちゃんの等身大パネルがあったことを思い出す。でも、ユナちゃんが両手に持つのは生理用ナプキン。ナンバーワンアイドルをナプキンのCMに使ってしまう韓国人は立派だ。これを支持する韓国女性の自信に、おもわずたじろいだ。
 夜、マッコリをたらふく飲んで、いい気分でタクシーの窓から眺めるソウルの街は美しかった。漢江を渡ったとき、焼酎とマッコリの後押しもあったのかもしれないけれども、“僕は韓国に恋をした”と確信した。僕にとっての「ソウルの練習問題」が始まった。(M.U)

2010年09月13日(月)  10:00  / この記事のURL