たまには書評を
たなか踏基『奇妙な羽衣伝説』
(幻冬舎ルネサンス)
1981年(昭和56年)3月早朝、余呉湖に一体の水死体が浮かび上がる。当初は単なる自殺として処理されたこの事件が、実は日本、香港、中国を舞台に、絹織物産業をめぐ
る国際的謀略の一端だった。たなか踏基著『奇妙な羽衣伝説』(幻冬舎ルネッサンス)は、日本の絹織物産業の盛衰を背景にした国際ミステリーである。
滋賀県木之本町で絹織物業「羽田善」を営む羽田野与一とその妹で邦楽絃作りを行う志穂。桐生の邦楽絃作り名人、高岡俊太郎。加賀毎日新聞の記者、小林幸雄。前衛画家の阿久津絵美。アイルランド人琵琶奏者、マック蘭星。謎の中国人、鄭合珠。これらの人物の人生が、まさに経糸と緯糸となって物語を構成する。やがて香港系ファンド「恵凛」と上海新華僑の動きが徐々に明らかになる。
そして、筆者の視点は「なぜ日本の絹産業は衰退したのか」という問いに注がれている。そこには「技術流出」という、古くて新しい問題が浮上するのである。陰謀史観に過ぎるきらいはあるが、それはミステリーという体裁上、仕方がない。それを差し引いても、十分に読ませる作品に仕上がっている。
絹織物は日本の繊維産業の中でも、最も疲弊が進む分野だ。作品を読んでいるとき、ある絹織物産地の組合理事長が記者に語った「絹織物で起こったことは、いずれ化合繊織物でも起こる」という言葉をふと思い出した。
問い合わせは、幻冬舎ルネサンス(電話03・5411・6710)まで。 (M.U)
(幻冬舎ルネサンス)
1981年(昭和56年)3月早朝、余呉湖に一体の水死体が浮かび上がる。当初は単なる自殺として処理されたこの事件が、実は日本、香港、中国を舞台に、絹織物産業をめぐ
る国際的謀略の一端だった。たなか踏基著『奇妙な羽衣伝説』(幻冬舎ルネッサンス)は、日本の絹織物産業の盛衰を背景にした国際ミステリーである。滋賀県木之本町で絹織物業「羽田善」を営む羽田野与一とその妹で邦楽絃作りを行う志穂。桐生の邦楽絃作り名人、高岡俊太郎。加賀毎日新聞の記者、小林幸雄。前衛画家の阿久津絵美。アイルランド人琵琶奏者、マック蘭星。謎の中国人、鄭合珠。これらの人物の人生が、まさに経糸と緯糸となって物語を構成する。やがて香港系ファンド「恵凛」と上海新華僑の動きが徐々に明らかになる。
そして、筆者の視点は「なぜ日本の絹産業は衰退したのか」という問いに注がれている。そこには「技術流出」という、古くて新しい問題が浮上するのである。陰謀史観に過ぎるきらいはあるが、それはミステリーという体裁上、仕方がない。それを差し引いても、十分に読ませる作品に仕上がっている。
絹織物は日本の繊維産業の中でも、最も疲弊が進む分野だ。作品を読んでいるとき、ある絹織物産地の組合理事長が記者に語った「絹織物で起こったことは、いずれ化合繊織物でも起こる」という言葉をふと思い出した。
問い合わせは、幻冬舎ルネサンス(電話03・5411・6710)まで。 (M.U)
2007年12月19日(水)
06:30
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