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ウール・版画・珈琲

 日本毛織のニッケ創作工房(愛知県一宮市)といえば、1860年代からの欧州生地や同社の大正・昭和の生地見本などのコレクションが有名だが、もうひとつのお宝が、戦前の広告用ポスターである。パリで開催されるプルミエール・ヴィジョンにも持ち込み、来場者の大きな関心を集めた。
それもそのはずで、ポスターのデザインは、“昭和モダニズム”を代表する版画家・奥山儀八郎である。世界的にもユニークな文化様式である昭和モダニズムだけに、欧州人の目には、まったく未知の感性として映ったことだろう(ちなみに、日本毛織のカタカナロゴ「ニッケ」は、いまでも奥山のデザインが使われている)。
 奥山儀八郎は昭和13年頃までニッケの広告部でポスター製作を担当している。ちょうど同じ頃、奥山は『明治事物起源』の著者で、浮世絵研究家としても名高い石井研堂と出会う。やがて石井の示唆を受け、伝統版画の復興を志し、戦後には日本版画研究所を設立、浮世絵の復刻事業を行ったことで有名だ。
 ところで、その奥山にはもうひとつ、珈琲研究家としての顔があり、『珈琲遍歴』なる珍本を著した。ただし、これは単なる好事家の本ではない。珈琲の歴史、日本への伝来の経緯などを豊富な文献を猟歩して明らかにしたものだ。とくに江戸期の長崎関連文献に豊富にあたっている。巻末には、これら関連文献の翻刻を掲げるなど、他に類書を見ない貴重な本である。
 やっぱり、繊維産業には、多くの文化的遺産があることを教えてくれる。案外これからは、そういった“文化“が、繊維復活の切り札になるかも、と個人的に思うのである。(M.U)

2007年12月17日(月)  06:30  / この記事のURL