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著者献呈本

 知人が著書を出版したとして、署名入りで献呈本をもらうことがある。あるいは、会ったときに「最近、また本を出しましたね」と話題にすると、「そうそう、1冊献呈しますよ」といって手渡されたりするのもうれしいものである。
 物書きにとって、活字になった自分の文章を人に読んでもらうというのは、何物にも代えがたい幸せだ。そう思って、いまでも論文掲載誌の抜き刷りなどを世話になった知人に送り「御批判、御助言いただければ幸甚です」とあいさつ状を添えている。文筆家の最低限のマナーだと思うからだ。

 なぜこんなことを書くかというと最近、古本屋で関桂三著『日本綿業論』(東京大学出版会)を見つけて、早速購入したところ、それが著者の署名入り献呈本だったからだ。
 関桂三は、元東洋紡会長で、関経連の初代会長も歴任した人物。東京大学経済学部で講師も務め、そのときの講義録を基に著したのが『日本綿業論』である。ただし、この本自体は繊維産業研究の基本文献の一つであり、ことさら希少本というわけではない。私の目を惹いたのは、表紙裏に毛筆で記された著者署名と献呈相手の名前だ。そこには「謹呈 伊藤忠兵衛様」とあった。どういうわけか、関桂三から献呈された二代目伊藤忠兵衛架蔵本が、回り回って、私の手元に巡ってきたわけだ。
 こういった意外な逸品が手に入るのも、古本収集の密かな楽しみである。同時に、やはり当時の繊維人は礼儀正しかった。本を出せば、必ず世話になった人々に献呈しているのである。ちなみに『日本綿業論』は1954年の出版。当時、伊藤忠兵衛翁は公職追放が解除され、実業界に復帰して間もないころであり、呉羽紡績の社長などを務めた。そして、関桂三が会長・相談役を務めた東洋紡と呉羽紡績が合併するのは、66年のことである。(M.U)
2008年08月05日(火)  06:25  / この記事のURL

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